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【ネタバレ有】『ゴジラ -1.0』/超直球勝負の国産ゴジラがついに姿を現す!ゴジラ映画未体験者はまずこの映画から観るべし!

◆今週公開の注目作

『ゴジラ -1.0』

 

文:大西D(ヒカセン兼業ライター)

1年前の今日発表された『ゴジラ -1.0』(その時は新作をやると言うことだけだったが)。あれから1年が経ち、遂に公開を迎えた。神木隆之介、浜辺美波という朝ドラでも夫婦役だった、今最も旬な演者を主人公とヒロインに据えて、戦後すぐの日本に襲い掛かるゴジラと、それに抗う人々。それがこの映画だ。ちなみに脇を固めるのは青木崇高、山田裕貴、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、安藤サクラと言った豪華で、確かな実力を持つ役者たちだ。そして監督は山﨑貴である。

この戦後すぐと言う時代設定が一つ大きな特徴で、これは初代ゴジラが時代背景とした1954年よりも昔だ。つまり第二次世界大戦終戦直後で、東京は空襲によって焼野原になり、広島と長崎には原爆が落とされた直後だ。GHQ支配下の、まさに全てを失った日本が舞台だ。そんな日本に追い打ちをかけるかのように、ゴジラが東京に上陸し、街を破壊し尽くすのだ。

最新の兵器も無ければ、多くの兵を失ったばかりの日本は、そもそもどのようにしてゴジラと言う絶望に抗うのか。戦争と同じくらいの恐怖と破壊と絶望・・・それを山﨑監督のお家芸であるVFXで描く。予告編から、かなり暗い作品と言う印象を持つかもしれないが、予想以上にエンターテインメント要素を盛り込んでいるので、そこは安心して観れるかもしれない。もちろん初代ゴジラをオマージュしたシーンもあり、そこは楽しみなポイントだ。

大体この作品がどのようなものかを語らせてもらったところで、ここからは作品を観ての率直な印象を少し述べさせて頂きたい。いくらかのネタバレを含むので、その点をご了承いただける方のみ、この先に進んで頂きたい。

まず肝心のゴジラだが、海上での軍艦との戦いと、その後の東京に上陸し銀座を破壊し尽くすシーンは良かったと思う。ミニチュア特撮とは違うVFXならではの迫力ある映像を観ることが出来たし、これまでにない激しく暴れまわる国産ゴジラは新鮮ではある。その動きはどちらかと言うとハリウッド版に近い雰囲気を感じるためか、初代ゴジラや『シン・ゴジラ』で感じた恐怖とも違う、エンターテインメント性を感じることが出来る。気になる必殺技の熱線だが、これまでの作品とはまた違った演出で、そこも大きな見どころだ。きのこ雲を彷彿とさせる爆発や爆風、そしてその後に降る黒い雨は、エンタメ性の中にゴジラの原点である「原爆」への明確なメタファーと「恐怖」が込められている。もちろんそれについての是非はあるだろうが、山﨑貴が監督と脚本、そしてVFXを務めた意味がここにあると言える。

終戦直後の日本が舞台で、主人公である神木隆之介が演じる敷島は特攻隊の生き残り。浜辺美波演じるヒロインも天涯孤独で、血の繋がりが無い戦災孤児の連れ子がいるなど、舞台や人物設定などはかなり重たい作品に感じるかもしれないが、映画を観ているとそれはあまり気にならない。なぜなら前述のとおり、ゴジラと言う超ド級のエンタメが入ってくるからだ。

個人的に少し残念だったのが、やはり既視感のある物語や設定だろうか。例えば『シン・ゴジラ』は政府主導で日本の持つ技術を総結集させてゴジラに立ち向かったが、本作では逆に民間人だけでゴジラに立ち向かった。本作でゴジラに立ち向かうメンバーに政府や、当時いたはずのGHQを入れなかったのは、「日本政府やアメリカ軍はいざと言う時に頼れないから、自分たちで戦うしかない」という山﨑監督からのメッセージだろう。ただ、官民の違いは有れど、その物語の展開に既視感を感じてしまうのは残念ではある。まぁ仕方がないとも思うが。

1954年の『ゴジラ』は、単なる怪獣映画ではなく反戦・反原爆映画でもあった。東日本大震災後に製作された『シン・ゴジラ』はゴジラを天災として描き、それに立ち向かう人々を描いた。そう考えると、第二次世界大戦後を舞台にしているとはいえ、本作は極めて純度の高い「怪獣エンタメ映画」と言える。小難しいテーマや哲学などは据え置き程度で、これまでの国産ゴジラには無かった、VFXを駆使しての“アグレッシブ”な動きを見せることで、ゴジラと言う日本では抜群の知名度を誇る、しかし一方で敷居の高い作品をゴジラを観たことがない人でも楽しめるように作っている。

もちろんそれが良いか悪いかは見る人に委ねられる。自分は割と捻くれたタイプのゴジラファンなので、正直言ってしまうと『シン・ゴジラ』とやってること一緒じゃね?と思ったが、あれから7年が経ち、今またゴジラに接したことがない人が増えている中、朝ドラで夫婦役を演じた2人が主人公とヒロインと話題性と、これまでにはない圧倒的にエンタメしているゴジラを、山﨑監督と東宝は送り出してきた。つまり怪獣映画、またはゴジラ作品を観たことがない人ほど楽しむことが出来る「ファースト・コンタクト」的な作品なのだ。

もちろん『シン・ゴジラ』や初代ゴジラとの比較は避けられないし、気に入らないと思う人もいるだろう(自分もどちらかと言うとそちら寄り・・・)。それでも「ゴジラ」という作品が今後も国内で継承されていくには、作品を観てもらわないことには始まらない。この作品を入り口に色んなゴジラ映画を観てもらえればいいのだ。ゴジラ映画未体験者は、これ以上ないぐらいのガイドブック的映画と言えるだろう。

【ストーリー】
生きて、抗え。 焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。 残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。 ゴジラ70周年記念作品となる本作『ゴジラ −1.0』で監督・脚本・VFXを務めるのは、山崎貴。 絶望の象徴が、いま令和に甦る。ラージフォーマット(IMAX、MX4D、4DX、Dolby Cinema)を含め、東宝配給作品最大級となる全国500館以上での公開が決定。

【キャスト】
神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介

【スタッフ】
監督・脚本・VFX:山崎貴
音楽:佐藤直紀
製作・配給:東宝(株)
制作プロダクション:TOHOスタジオ、ROBOT
©2023 TOHO CO.,LTD.

公式サイト:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/

 

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