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『タミー・フェイの瞳』お金か、愛か? 実在のテレビ伝道師から見えてくる、宗教の本来の価値とは。

この映画は、つまり―
  • テレビ伝道師、タミー・フェイの実話!
  • 宗教は何のためにある?
  • 実力派女優ジェシカ・チャステイン圧巻の演技!

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◆配信中の注目作 
『タミー・フェイの瞳』

ディズニープラスで視聴可能 ⇒ こちら

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

日本だとあまり馴染みがないが、アメリカにはテレビ伝道師という存在がいる。テレビを用いてキリスト教の布教に精を出す者たちだ。テレビ+エバンジェリスト(伝道師)でテレバンジェリストとも呼ばれている。時に彼らは、巨額の献金によって絶大な権力を有するまでになる。本作は実在のテレビ伝道師、タミー・フェイ&ジム・ベイカー夫婦の伝記映画だ。

幼い頃からキリストに熱烈な関心を持っていたタミーは、大学で知り合った同志のジムと結婚する。熱心なタミーとジムは人形を使いながら子どもたちに神の教えを説き、それが評判となってどんどん出世していく。ジムはタミーを置いてけぼりにして、大人気番組だけに留まらずリゾート施設の建築も目論み、布教活動は一大宗教ビジネスに変貌。はじめは純粋な信仰心からスタートしたはずが、多くのテレビ伝道師と変わらず、金の匂いをまとった極めて俗っぽい存在に成り果ててしまう。

神からの愛は無償だとしても、多くの人間はそれを有料で扱う。ワインがキリストの血を表すようにパンはキリストの体を表すが、ベイカー(Bakker)という「パン屋(baker)」よりひとつKが多いが同じ響きの名を持っているジムはキリストを売り歩いて成功を収めた。しかし後々、自らの行いのせいでまたしてもその名のごとく“刑”を受けることになるのが皮肉だ。タミーは思っただろう。「お金と私への愛、どっちが大事なの?」と。おそらくキリストも同じことを思ったに違いない。

本来、宗教は物質的な成功を約束するためものではないはずだが、“「信者」と書いて「儲」けると読む”なんてジョークもあるほどだ。劇中に登場する実在のテレビ伝道師ジェリー・ファルウェルも、政界にまで幅を利かせた大権力者となった。彼は「聖書に書かれている」として、同性愛を強く批判した。ジムはその圧に抗えなかったが、タミーは一貫してあらゆる人々を愛し続けた。歳を重ねるにつれだんだん派手になるメイクはまるでドラァグクイーンだ。実際、タミーは伝説的なゲイ・アイコンになっている。

タミーを演じたのは、これでゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされたジェシカ・チャステイン。タミーは布教活動に歌も用いたので、本作ではジェシカの歌声による圧巻のパフォーマンスも拝める。アメイジングなスパイダーマンとして有名なアンドリュー・ガーフィールド演じるジムも悪人というわけではなく、人間の弱さが垣間見える役どころで絶妙なキャスティングだ。波乱万丈な人生の中で、タミーの瞳は何を映したのか。そして、あなたの瞳には誰が最も神の意思を反映した者として映るだろうか。

 

【ストーリー】
1970年代から80年代にかけ、テレビ伝道師として活躍していたジム・ベイカーは、妻タミー・フェイと共演したTV番組を製作。愛にあふれたメッセージで視聴者は熱狂、瞬く間に絶大な人気を博し、大成功を収めた。そんな中、貧しい生活から一転、華やかな生活に変わったタミーは、泣いても消えないまつげ、独特の歌い方、そしてあらゆる人を受け入れる寛大さで伝説的な存在となっていた。しかし、金銭的な不正、ライバルの陰謀、スキャンダルなどにより、ふたりが築いた帝国はやがて崩壊していく…。波乱万丈の人生に待ち受けている結末とは。

【キャスト】
ジェシカ・チャステイン、アンドリュー・ガーフィールド、ビンセント・ドノフリオ

【スタッフ】
マイケル・ショウォルター

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