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『アンホーリー 忌まわしき聖地』信じる者は“すくわれる”。聖母マリア様(?)が襲って来るアグレッシブな宗教ホラー!

この映画は、つまり―
  • (一応)ホラーの巨匠サム・ライミがプロデュース!
  • 聖と邪は紙一重
  • 新人女優クリケット・ブラウンの名前を覚えて帰ろう

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◆配信中の注目作

『アンホーリー 忌まわしき聖地』

Netflixで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」という言葉がある。『2001年宇宙の旅』の原作者で、『幼年期の終り』など数々の名作を著したSF作家アーサー・C・クラークが提唱した「クラークの三法則」の中のひとつだ。このアイディアは、他の物事に置き換えても成立するのではないだろうか。つまり、「奇跡的な神の御業は、悪魔の所業と見分けがつかない」などという風に…。本作『アンホーリー 忌まわしき聖地』も、まさにそのような内容の映画だ。

主人公のジェリーは過去に記事を捏造したことで職を追われたジャーナリストで、現在は落ちぶれて本当かどうか甚だ疑問なオカルトネタなどをはした金で執筆している。彼は取材でたまたま訪れたマサチューセッツ州(魔女狩りで有名なセイラムがある)の町で、アリスという少女がとり憑かれたように聖母マリアに祈りの言葉をかけているのを見かけるが、何と本来彼女はろうあだったはずだった。耳が聞こえ話せるようになったアリスは、マリアの姿が見え声も聞こえるようで、お告げに従って町の住民の不治の病を治し始める。この“奇跡”によって町が有名になり聖地化しようという動きが起こる中、自らの復活のチャンスを見出したジェリーはアリスと信頼関係を築き、事の顛末を記事にしようと考えるが…。

奇跡の記録は、実際に世界各地に残っている。例えばフランスのルルドの伝説では、1858年にある少女が聖母マリアらしき女性の言う通りに地面を掘ると水が湧き出し、たちまちどんな難病も治す泉ができあがったという。奇跡は本当に存在するのだろうか? もちろん存在すれば良いと思うが、詐欺師だって善人の顔をしているものだし、善きことの裏には何かがあるのではと疑念を持ってしまうのも人の性だ。そういった疑いを超越した心持ちにならなければ、神を信仰することはできない。しかし、ある程度疑いの心がなければ、神とそうでないモノの誘いを区別することもできない…。困ったジレンマだ。

この興味深い問いに挑んだのは、実写版『美女と野獣』などのディズニー作品や現在公開中の『ヴァチカンのエクソシスト』の脚本を手掛けたエヴァン・スピリオトポウロス。製作はホラー映画のクラシック『死霊のはらわた』シリーズで知られるサム・ライミ…と言うとかなりハードルを上げてしまうかもしれない。だが、恐怖演出は景気の良いジャンプスケア(ビックリ系)多めで、アンホーリー(不浄)な存在は物理的にジェリーらを襲いに来るので、正直そこまで構えずに見るのが良いライトなホラーになっている。最近流行りのアートホラーや社会派ホラーとは異なるので、お手軽にホラーを楽しみたい方向けだろう。負け犬のジェリーが立ち直るドラマや、アリス役の新人女優クリケット・ブラウンのピュアな美しさなど、ホラー以外の見所もしっかりある。

サム・ライミ好きが気になるのはむしろ、8月にDVDスルーとなる『死霊のはらわた』シリーズの新作『死霊のはらわた ライジング』(劇場公開しないなんて!)の方だろうが、それまでに本作を見てテンションを高めておくと良いのではないだろうか。

【ストーリー】
ろうあの少女が聖母マリアの出現を体験し、突然耳が聞こえ話し出し、病人を治し始めた。少女が起こす奇跡を見ようと大勢の人々が詰めかける中、落ちぶれたジャーナリストは、再起をかけて町で少女を取材する。次々と起き始める奇怪な出来事。奇跡は本当に聖母マリアのなす業なのだろうか。それとも、不吉な何かが潜んでいるのだろうか…。

【キャスト】
ジェフリー・ディーン・モーガン、ケイティ・アセルトン、ウィリアム・サドラー、クリケット・ブラウン、ディエゴ・モルガド、ケイリー・エルウィズ 他

【スタッフ】
監督・脚本:エヴァン・スピリオトポウロス
製作:エヴァン・スピリオトポウロス、サム・ライミ、ロブ・タパート

 

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