【BOND60 公開記念特集】「スカイフォールへの道」(その3)/『007/スカイフォール』ジェームズ・ボンドとボンドガール「M」の気になる関係、最期のセリフの意味は?
『スカイフォール』は007シリーズの中でも屈指の名作といわれていますね。評価ランキングなどでは常に『ロシアより愛をこめて』『カジノロワイヤル』などと並んで1位の常連となっています。
でもこの『スカイフォール』、突然観たらだめです。
いや、ダメじゃない、突然見てももちろんエンタメとして十分面白んだけど、いくつか過去の007映画を経由して、“その想いを抱いて観る”とさらに味わい深い映画で、スクリーンの向こうに過去のジェームズ・ボンドが次々に脳裏をよぎる、つまりシリーズ集大成の007が見れるわけで、その意味では、これこそ紛うことなき最高傑作だと思います。
なので、今回は『スカイフォールへの道』と題して、スカイフォールをより愉しむための007シリーズ心得みたいな感じで行ってみたいと思います。
もちろんポイントは第一弾からの流れで「女とクルマと007」です。
今回は11月17日からの第二弾上映作品を基本抑えつつ語れればと思います。さあ、そんな感じで「スカイフォールへの道」いってみましょう!
『007/スカイフォール』
ジェームズ・ボンドとボンドガール「M」の気になる関係、最期のセリフの意味は?
『スカイフォール』はまた女性事情も特殊です。
ショーン・コネリー=ボンド時代、ボンドに色目を使うMの秘書の年増女がどうも気になっていた方も多いと思いますが、そのミス・マニーペニーが復活してます。ボンドがダニエル・クレイグになってもマニーペニーとのイチャイチヤ、じゃれっぷりは変わらず、サム・メンデス監督のクラシック007へのおこだわりが見える部分ですが、この新時代のマニーペニー(ナオミ・ハリス)、一度007を誤射しておいて、生きてる分かったらイチャつき、カミソリ片手ににやりとできるという中々の鋼鉄のメンタルの持ち主で、そこは現代風かなと思います。
そういう意味ではベレニス・マーロウ演じるセヴリンがもっとも古典的ボンドガール風ですが、速攻いなくなります。(しかし、ボンドはフランス女が好きですね、この辺りは次回作へと引き継がれます。)
だから、『スカイフォール』のボンドガールは「M」その人なんですね。
ストーリー全体として本作は、元MI6の凄腕変態ストーカー、ラウル・シルヴァ(ハビエル・バルデム)から恨みを買い、標的となったMをボンドが守る構図となっています。シュディ・ディンチ演じるMは冒頭から、敵ともみあいになって銃撃をするか躊躇するマニーぺニーにむかって「いいから撃って!」と指示したり、蘇って帰ってきたボンドに「家には泊めないわよ、風呂に入れ」と言ったり、なかなかのハードキャラぶりを見せますが、後半に行くにつれて、“女“の面や“母”の面が出てきます。
きっと、ラウル・シルヴァもジェームズ・ボンドと同じような立場だったのでしょう。いやシルヴァがMのことを「マム!」というところみると、さらに愛情を注いでいたのかもしれない。国の闇を差配する役として冷徹な仮面をかぶりこそすれ、そんな自分がかつて育てた部下がテロリストとして悪行を行っていることは、母性もある彼女の心に強烈なプレッシャーを与えたはずです。
「俺たちは最後に残った2匹のネズミだ。」
ラウル・シルヴァがボンドに言うセリフも印象的ですね。立場こそ違えど、頭のおかしい奴しか生き残らない闇の世界を象徴しています。そして、3人の関係が非常に運命的なものに思えてきます。(Mがボンドに冷たくあたるのも“敢えて”で、シルヴァなど過去の反省から来ているかもしれません)映画公開時のインタビューでダニエル・クレイグも「3人は非常に重要な関係を持っている」と述べています。
スカイフォール。ボンドの故郷でのラストに向けてその想いはさらに強くなります。ボンドの両親の墓の横にある教会で斃(たお)れ、自分の部下の腕の中で最期の時を迎えるM。
「もう逃げるのは無理ね」
「僕がついています」
「私は、ただひとつ正しかった……」
Mとボンドの最後のやりとり―。謎ですね、
Mは何が正しかったといいかったのか?
一般的には「復帰した007をテストで不合格だったのに合格にさせたこと」となるでしょうが、Mの人生最期のセリフでサム・メンデスですからね。もう少し大きい意味を想像してしまいます。
「ダブルオーの番号、つまり殺しのライセンスをあなた(ボンド)に与えたこと」さらに、「ラウル・シルヴァとあなた(ボンド)を比較した時、スパイとして優秀なシルヴァではなく、人間性でボンドを選んだこと」
なのではないかと、勝手に解釈してますが、皆さんはいかが思いますか?
余談ですが、Mの本名は「オリヴィア・マンスフィールド」。ジェームズ・ボンドに贈ったブルドッグの置物の箱に書いてます。墓石に刻まれたボンドの母親の名前「モニカ・ボンド」をみて、「もしや!」と思いましたが、そこは考え過ぎというものでしょうか。
<BOND60 007 4Kレストア 10作品 上映作品一覧>
第2弾:11月17日(金)〜
■『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ No Time to Die』2021年/ダニエル・クレイグ
■『007/スカイフォール Skyfall』2012年/ダニエル・クレイグ
■『007/リビング・デイライツ The Living Daylights』1987年/ティモシー・ダルトン
■『007/サンダーボール作戦 Thunderball』1965年/ショーン・コネリー
■『007/ドクター・ノオ Dr. No』1962年/ショーン・コネリー
◎劇場情報はコチラ
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=cQkXFvH7
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