「戦争と陰謀」マスコミも教科書も嘘ばっかり?真の歴史を知るなら陰謀に挑め!/⑤『スパイ・ゾルゲ』(2003)後編
歴史で「陰謀」などというと荒唐無稽で、あやしげで「信じるか信じないかはアナタ次第!」ってのでしょう?という風に思われる方が多数だと思います。
じゃ陰謀論の正反対、みんなが信用して共有している史実っていったい何なの?といえば、まあ歴史教科書とかマスコミが語っている歴史なわけですが、それが正しいかと言えば実はそんなこともない。普通に考えてだいぶ危うい。
ウクライナ戦争はウクライナから見ればロシアの侵略戦争だし、ロシアから見ればネオナチ掃討作戦。台湾危機は米国から見れば民主主義を守れ!だけど、中国から見たら内政干渉だったり、もう立ち位置で180度見え方が違う。これは今現在の話だけじゃなく、前の世紀からそれ以前からもそう。
歴史は勝者の都合のいい物語だし、正義は後から付け足せる世界に我々は住んでいる。
そんな中、8月といえば終戦記念日!毎年恒例の「戦争映画特集」となりますが、今年はウクライナ戦争や台湾危機、アフガンやパレスチナから、ウィグル問題までどうにも実体不明の戦争や紛争、危機が勃発しているので、「戦争と陰謀」をテーマに皆さんが知っている歴史認識の危うさと、想像力の限界に挑む「陰謀の世界」に扉を開く映画をご紹介させていただければと思います。
あれから80年、日本人の心に重く残された“戦後”
『スパイ・ゾルゲ』(2003)後編
「戦争と陰謀」マスコミも教科書も嘘ばっかり?真の歴史を知るなら陰謀に挑め!
④『スパイ・ゾルゲ』(2003)前編
ヴェノナ文書とルーズベルト
当時の日本人を考えると、さすがに何人かは尾崎らの活動の怪しさ気づいていたのでしょう。それゆえにゾルゲと尾崎ほか何人かは特高(日本の秘密警察)に逮捕され処刑された。1940年のことです。
ところがここからがおかしいところで、ゾルゲ事件が明るみに出た後、なぜ日本は戦争の方針を変えなかったのでしょうか?太平洋戦争の開戦は翌41年です。
「もしかして共産主義者にしてやられたかもしれない」と何故考えなかったのか?
時間はあったのに何故、戦略を一から立て直さなかったのか?
私はここに日本人の謀略に対する危機感のなさ、それに基づいた官僚のお役所仕事の最悪のパターンを見ることができると思ってます。
会議は決済されたから、
予算はついたから、
時間がないから。。
当時参謀本部を牛耳っていた陸軍統制派の空気を感じ取ることができます。
彼らは軍人ではなく、官僚だったのです。
統帥権や軍部大臣現役武官制を用いて日本の政治を乗っ取った軍部ですが、小狡く考えて陸軍省の発言権は拡げられても、国の戦略を考えることが不得手だったようです。
実はアメリカにも事情がありました。
95年に発見された「ヴェノナ文書」という旧ソ連時代のスパイの交信記録が出てきたのですが、この中で第二次世界大戦当時のフランクリン・ルーズベルト大統領の側近に複数の共産主義者とソ連のスパイがいたことが明らかになっています。
つまり、日本だけじゃなくて、相手方のアメリカの指導部もソ連に操られていた可能性が高いのです。
元々ルーズベルト大統領は、母親の家がアヘンビジネスで中国に巨富を築いていたので中国寄りの意見をもっており、日中戦争でも蒋介石を支援していた(それがまた、日本人が米国を敵視する理由にもなったのですが)。
この辺りの事情から、アメリカが対日制裁、戦争へとブレずに向かう中で、多くの隠れ共産主義者がスタッフとして大統領の周りに集まってきたのは想像に難くありません。ルーズベルトは過去三代の大統領が認めていなかった共産主義国家・ソ連を国家として認めた初めての大統領ですし、ニューディール政策など社会主義的な施策でアメリカを復興させたのでなおさらです。
ルーズベルトはそれまで、「共産主義は敵だ」としていたアメリカの立ち位置を変え、「まずファシズムを叩くのだ」ということで、ナチスドイツへの対抗姿勢を強めます。ですが、アメリカには民主主義社会、議会で可決しなければ絶大な権力を持つ大統領でさえ戦争を始められません。
そこで目を付けたのがドイツの同盟国・日本です。
経済制裁で日本をどんどん締め上げて奴らを暴発させてやろう。そうすれば米国民は怒りで対日戦争を支持するに違いない、自動的に同盟国であるドイツへも宣戦布告でき、イギリスを助けることができる。
これはもちろん、大統領側近の共産主義者からしたらスターリンのソ連を助けることができるという意味になります。
日米交渉で最後通牒となったハルノートは、ほとんど実施不可能な条件が書き連ねてありました。この執筆に携わったハル国務長官の側近、ハリー・デクスター・ホワイトとアルジャー・ヒスは、日本と戦争を起こすための文章をつくりました。後年ソ連のスパイであることば明らかになりました。
1941年12月8日の真珠湾攻撃はだから、ルーズベルトにとって既定路線だったのです。いやそれ以上かもしれない。まさかアメリカの領土(ホノルル)をあれだけ叩くなんて。。コレは311のテロを想像して貰えばわかりますが、米国民は一気に戦争支持に傾きアメリカは世界のファシズムを敵に戦争を始めました。
この展開で、ちょっとかわいそうなのは日本と組んだドイツですよね。対ソ開戦の情報は洩らされ、ソ連を挟み撃ちにしてくれるかと思えば、あさっての方向で戦争を始めて、なんと世界最大のアメリカを敵として引き込んでしまい、おかげでドイツは東のソ連ばかりか、西からくるアメリカとの挟み撃ちに会い、戦争することになってしまった。
ヴェノナ文書から20年
こうやって見てみると、ソ連のスパイ活動というのが如何に世界を席巻していたか分かると思います。彼らは世界規模で謀略をすすめ、内部から国の方向を変え、大局を有利に進めた。第二次世界大戦、我々はスターリンの手のひらで操られていた可能性が高いのです。
これは現場スパイの頑張りもさることながら時代のムードもあったと思います。世界恐慌で資本主義の限界が見えたと思った世界のインテリ達は、ルーズベルトやヒトラーなど経済を立て直した指導者の社会主義的なやり方をみて、だったら共産主義が一番進歩的なんじゃないか?と思ったとしても不思議はありません。
理論的にはそうみえます。
尾崎秀実もそのように思った一人だったでしょう。彼は自分の母国をめちゃくちゃにする事で、共産主義革命が起き、その事で人々が幸せになると信じたのです。
ですが、この共産主義によって、後年スターリンは2,300万人、中国の毛沢東などは7800万人以上の自国民を殺してます。実体は人類史上最悪の虐殺支配システムだったわけで、その事を尾崎ら共産主義者が知ったらどう思ったでしょう?
実際、日本は敗戦に際して、その岐路に立ったと思います。国土も民もボロボロになった。もし日本に天皇陛下がいなければ簡単に共産主義国家になってしまったかもしれない。
また戦争の最終局面でルーズベルト大統領が死亡せず、アンチ共産主義のトルーマン大統領が立たなかったから、日本の半分くらいはロシアになっていたと思います。
もし、そうなっていたと思うとゾッとします。
我々日本人は80年前、薄氷ともいえる危うい状況で偶然と必然を手繰り寄せ、日本という国を何とか守ったのです。
いろいろ陰謀視点から第二次世界大戦を語ってみました。学校で習ったことと明らかに違う、ちょっとびっくりな部分もあったのではないでしょうか?
言っておきますが、ヴェノナ文書は世界のニュースにもなった通り歴史的事実ですし、ゾルゲや尾崎たちスパイの動きはその指令の元となった、コミンテルン(国際共産党)の書類も残っています。
陰謀の体裁をとってご説明しましたが、実はこれは半ば公然たる事実であり世界の常識なのです。
旧ソ連崩壊で様々な新事実が明らかになっているのを世界のメディアは報じているのに、日本のマスコミはそれを報じす、日本の教科書はほとんど変わってないのが現状です。
ヴェノナ文書の公開から20年、
大きな謎であり、陰謀の存在を感じざるを得ないのは、日本という国の言論かもしれません。
【キャスト】
イアン・グレン、本木雅弘、葉月里緒菜
【スタッフ】
監督・原作:篠田正浩
脚本:篠田正浩、ロバート・マンディ
撮影:鈴木達夫『梟の城』
音楽:池辺晋一郎
衣裳デザイン:森英恵
録音:瀬川徹夫
エンディング曲:ジョン・レノン
製作会社:スパイ・ゾルゲ製作委員会
配給:東宝
© 2003スパイ・ゾルゲ製作委員会
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