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「戦争と陰謀」マスコミも教科書も嘘ばっかり?真の歴史を知るなら陰謀に挑め!/④『スパイ・ゾルゲ』(2003)前編

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

 

歴史で「陰謀」などというと荒唐無稽で、あやしげで「信じるか信じないかはアナタ次第!」ってのでしょう?という風に思われる方が多数だと思います。

じゃ陰謀論の正反対、みんなが信用して共有している史実っていったい何なの?といえば、まあ歴史教科書とかマスコミが語っている歴史なわけですが、それが正しいかと言えば実はそんなこともない。普通に考えてだいぶ危うい。

ウクライナ戦争はウクライナから見ればロシアの侵略戦争だし、ロシアから見ればネオナチ掃討作戦。台湾危機は米国から見れば民主主義を守れ!だけど、中国から見たら内政干渉だったり、もう立ち位置で180度見え方が違う。これは今現在の話だけじゃなく、前の世紀からそれ以前からもそう。

歴史は勝者の都合のいい物語だし、正義は後から付け足せる世界に我々は住んでいる。

そんな中、8月といえば終戦記念日!毎年恒例の「戦争映画特集」となりますが、今年はウクライナ戦争や台湾危機、アフガンやパレスチナから、ウィグル問題までどうにも実体不明の戦争や紛争、危機が勃発しているので、「戦争と陰謀」をテーマに皆さんが知っている歴史認識の危うさと、想像力の限界に挑む「陰謀の世界」に扉を開く映画をご紹介させていただければと思います。

 

 

あの戦争は誰かに操られていた?
『スパイ・ゾルゲ』(2003)

さて、いよいよ「スパイ・ゾルゲ」を説明していきたいわけですが、この映画一番困ったのは配信で出回ってないのです。内容が内容だけに、何か圧力がかかってるのではないか?と勘ぐってしまうくらいですが、それは陰謀論というものでしょうか?

 

この映画には、

「日本が戦争をしたのは軍部が暴走したため」とか

「日本の指導者は米国に無理な戦いを挑んだ愚か者だった」

という教科書もマスコミも言う、日本の常識を覆すヒントが隠されていますので、そこにあった陰謀をどうしても語らなければならないという意味で紹介します。

そうなんです、当時の日本は“ある勢力“によって操られていた可能性が非常に高いのです。

 

年に一回、終戦記念日特集ということでお許しください。心決めてTSUTAYAに走るかDISCUSで借りるかお願いします。3時間の大作です。

解説も少しばかり文字量があるかもしれません、すいません、年に一回のことです。

 

世界情勢のおさらい

第二次世界大戦の勃発というのは、ヒトラーのナチスドイツがあの広いポーランドをたったの2週間で攻略してしまったことに始まります。いわゆる電撃戦というやつで爆撃機と戦車を組み合わせた新戦法は電光石火、だれも止めることができませんでした。続いてフランスへ進軍、イギリス軍を欧州大陸からたたき出し、パリを制圧、ブリテン島までその手を伸ばします。

焦った英首相チャーチルはルーズベルト米大統領に緊急連絡、当時もっとも国力のあった米国の参戦を請います。ですが米国は当時他国のことに首を突っ込まない、他の戦争にうちの若者を出さないという方針(モンロー主義)が貫かれており、容易に参戦できません。

 一方、ドイツの東にいるソ連も気が気ではありません。いつヒトラーが不可侵条約を破り、襲ってくるのか?。広大なロシアの地はかつてナポレオンやドイツ軍を消耗し敗退させた地ではありますが、ナチスドイツの戦車部隊は絶望的に強くて速い。

さらにスターリンにとって最悪の想像は西からナチスドイツ、東からその同盟国である日本に挟み撃ちにされる図です。これではさすがにホームでの戦いでも勝てる気がしません。

スターリンは「ドイツは襲ってくるのか?日本は東からくるのか?」気が気ではありませんでした。

スパイ・ゾルゲと朝日新聞の尾崎秀美

そこで登場するのが、ソ連のスパイ・ゾルゲです。彼はドイツのナチス党に属するジャーナリストという肩書で、指導者スターリンが最も気になる「ドイツと日本の対ソ侵攻」を調べるために日本にきました。

そしてゾルゲと共にその任務にあたっていたのが、朝日新聞の尾崎秀美でした。

この尾崎は中国事情通として世間的にも有名で、今でいえば、落合陽一とか成田悠輔とか津田大介みたいな、若者たちに影響を与えるスタージャーナリストで、おまけに近衛首相の相談役を務めていた人物です。まさか総理大臣の側近がスパイだなんて誰も思いませんよね。

ゾルゲは尾崎やその伝手から、まんまとドイツがソ連に侵攻するであろういくつかの情報をスターリンにもたらします。

ドイツにいるより、日本にいたほうがナチスの情報が手に入るというのがポイントで、日本はスパイ防止法がないからスパイ天国だみたいに昨今言われることがありますが、実は昔からそんなかんじだったのかもしれません。

そればかりか尾崎の活動というのは「昭和研究会」やら「太平洋問題調査会」やら、近衛首相の朝食会とか、合法的な会合や活動を装って、その中に共産主義者やスパイを引き入れて、言論人や政治家に影響を及ぼしていくというもので、尾崎の正体を知らずに活動に協力していた者がほとんどだったわけで、非常に巧緻なやり方で日本の政治を操っていたと思います。

考えてみれば、近衛首相って当時の日本のトップじゃないですか、その彼に耳打ちできる立場の人間にソ連のスパイがいる次点で、もう戦争に勝てる感じがしませんよね。

共産主義者たちが日本に仕掛けた罠

尾崎と仲間たち(宮城与徳、川合貞吉らの社会主義運動家の他、牛場友彦、西園寺公一、蝋山政道、後藤隆之助、風見章、田中慎次郎らの学者、ジャーナリスト、政治家※スパイ自覚してない者もいた)が上記の会合を表に裏に開催、近衛の名前を使い、新聞報道も誘導して何をしたかと言いますと、これびっくりしますよ。

まず、日中戦争を長期化・泥沼化させました。

近衛内閣の方針として戦火を中国全土に拡大させたのです。これは当時の蒋介石の国民党政府と日本を戦わせ続けることで日中両軍の疲弊を招き、日本軍が、ソ連に向かわないようにする一方、中国国民党政府にやられていた中国共産党に生きる道を与えたのです。

次に、南進政策を進めました。

北進というのはソ連侵攻、南進というのは東南アジア、つまり英米との戦いを意味します。陸軍は当初北進論だったのですが、尾崎たちに押されて、あろうことか英米を戦争相手として選んでしまいます。

尾崎たちは東南アジアの植民地解放や資源確保など耳障りの良い言葉を叫び、日本を南進へ誘導し、ソ連を日独の挟み撃ちから回避させることに成功します。

 

もちろん尾崎は朝日新聞に強烈なコネクションがありますので世論誘導は得意です。朝日新聞の論調は経済制裁などで日本国民を苦しめるアメリカにこれ以上黙ってる必要はない!と戦争を煽ったのです。他の新聞もそれに続きました。

そんなわけで日本はその国力からしたら全く不合理な、中国全土、東太平洋全域を戦線としての戦争準備に入りました。

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【キャスト】
イアン・グレン、本木雅弘、葉月里緒菜

【スタッフ】
監督・原作:篠田正浩
脚本:篠田正浩、ロバート・マンディ
撮影:鈴木達夫『梟の城』
音楽:池辺晋一郎
衣裳デザイン:森英恵
録音:瀬川徹夫
エンディング曲:ジョン・レノン
製作会社:スパイ・ゾルゲ製作委員会
配給:東宝

© 2003スパイ・ゾルゲ製作委員会

 

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