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【第36回東京国際映画祭】日本の若手監督・工藤梨穂と俳優・岸井ゆきのがヴィム・ヴェンダース作品の魅力を語る!工藤「世界観やば!」岸井「地続きのSFみたいな感じ」【第1回丸の内映画祭】

三菱地所と東京国際映画祭のコラボレーション企画として、今年から「丸の内映画祭」が開催。最終日となる10月30日、「ヴェンダースの世界に強く共鳴した若手映画人が語り合う」対談イベントが行われた。記念すべき第一回丸の内映画祭では、今年度の東京国際映画祭審査委員長で、オープニング作品『PERFECT DAYS』の監督ヴィム・ヴェンダースを特集。本映画祭では『東京画』『夢の涯てまでも』『リスボン物語』『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』の計4本が上映された。

映画祭の締めくくりとなる本イベントには、『夢の涯てまでも』と併映された『裸足で鳴らしてみせろ』を手がけ、ヴェンダースのロマンに深く共感したという日本の若手監督・工藤梨穂と、工藤監督のラブコールにより俳優・岸井ゆきのが登壇した。

工藤監督は「岸井さんとは高崎映画祭で去年ご一緒して、アフターパーティーで少しお話しさせていただいたんですが、話し足りなくて、今回お声がけさせていただきました」と話す。そんな岸井は、「映画を見るときに気になるところ」について問われると「物語に没入してしまうので、スクリーン一枚を信じちゃうことが多いんですよね。終わった後に『どうやって撮ってたんだろう?』って思うこともありますけど、基本はその世界に入っていますね。でも音はすごく気になるかも。『裸足で鳴らしてみせろ』のカセットテープのところがすごく好きで。環境音とかもすごく好きなんですよね。その世界を作る元になっているなと思います」と話し、工藤監督は「作る時も音響さんと話し合ってやっていくので、そこに見る側として意識していただいているのが嬉しいです」と制作側としての喜びを見せた。

また、岸井は「ヴィム・ヴェンダースの映画も音がおかしい時ありますよね。スクリーンの中で、背後から聞こえてきたり、たまに口と合ってなかったり(笑)その角度からこの音聞こえるんだっていうのがあるなって思い出しました。『PERFECT DAYS』もそういうシーンがありました。これがヴィム・ヴェンダースの世界なんだって思いました」とコメント。工藤監督はヴィム・ヴェンダースの『夢の涯てまでも』について「『世界観やば』って思って。一つ一つの世界を作っているんだなって、いいなって思いました」と感銘を受けた瞬間を思い出していた。岸井も「SFのような美術があるんだけど、その世界にすんなり入れちゃう。地続きのSFみたいな感じがあって面白いですよね」とヴェンダース作品の魅力を語った。

そして、映画全般の話になり、工藤監督は「私はロードムービーが好きで、自分が作るのもそうなるんですけど。移動する中で何をやるかってことに興味があって。旅の中で何かをしたいっていう感じがあるんですよね」「『ケイコ 目を澄ませて』のようなスポーツ映画も熱くなれるので好きで」と、岸井ゆきのが主演を務めた作品に話題が移り、「体を動かすようなスポーツ映画を見ていたりするんですか?」と尋ねた。岸井は「『ケイコ 目を澄ませて』のためというよりは『見ていた』という感じです。映画だったら何でも見て見るんですけど。監督で映画を見る映画を決めることが多いですね」と見る映画の選び方について語った。さらに、「『好きだな』って思った映画を同じ人が作ってるってわかったときに『こういう世界を作る人がいるんだ』って見ることが多いです」「クリストファー・ノーランの『インソムニア』を見たんですけど、『最初からこうだったんだ!』って。英語字幕もなかったのでカット割で見ていたんですけど、有名になって膨大な予算があって今のようになっているというより、最初からこうだったんだって思って」と作品を見て驚いたことも明かした。

工藤監督も「カット割りで見る人が中々いない」と驚きを見せると、岸井は「最初はお芝居を見て。見ている時はその世界に入ってるんですけど、帰り道に思い出すのって(その映画の)ショットなんですよね。心の中にある物語とショットをアクセスしていくみたいな帰り道みたいな感じがありますね」と話し、工藤監督も「すごいですね…」と感嘆。現場で演じる側になると変わるのか問われると、岸井は「見るときとやるときは全然違って。映画になってどうなるかはスタッフさんに任せていて、私はその中で役割を探しています」と話し、その出演作を見た時は「台本とカットが変わっていたりするので。知らない作品を見に行くみたいに初号を見る時はワクワクして行って、自分が出てたんだってびっくりしますね」と俳優側の視点も明かした。

続いて話題は2人の“映画の原点”に。岸井は「高校生のときは部活も入っていなくて、学校にも馴染めず…そこで映画に出会いました。それで最初に『わ!』って思ったのが『ダークナイト』だったんです。『アベンジャーズ』も見て、心の中でヒーローにして。本当にいるって思うくらい助けになっていて、そこからこれを作っている人がいるんだって映画の世界に入っていきました」と話し、工藤監督も「私も高校生の頃から見始めました。それまで全然見ていなくて」と映画の世界に踏み入れた瞬間を明かした。

工藤監督はキャストとのコミュニケーションについて悩みがあるようで、岸井は「いつも違うんですけど、三宅監督との映画は3ヵ月あったのでそこで映画の話をたくさんすることによって、多くを語らないみたいな。一から十まで説明しなくても(わかる関係性)で、ちょっとずつやっていく感じでした。でも、この間撮影した新しい作品では段取りもテストもなく、いきなり回すので、話が必要だったんですよね。複数人いても、全員に言うんじゃなくて一人一人に声をかけていくタイプの監督だったんです。それは新しい体験でした」と答えると、工藤監督は「監督のスタイルに順応していくんですね。すごいですね…」と納得。そして「今の悩みは、言葉がうまく伝えられないことがあって、戸惑わせてしまうんです。それをどうにかしたいなと思っていて」と若手ならではの現実的な悩みを明かした。それに対し、岸井は俳優として「初日がただ歩くシーンだったりすると、コミュニケーションが取れるのでありがたいですね」と話した。

若手の映画制作者は手探りな部分も多いため、こういった悩みを持つ人たちも多いようだ。映画に魅了されながら、映画を生み出す2人の貴重な交流を目の当たりにして、今後の映画業界にも期待が高まった。

 


伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/

関連記事:【ENDROLL】「ライターとして生きる。」ライター 伊藤万弥乃 さん(前編)

 

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