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「戦争と陰謀」マスコミも教科書も嘘ばっかり?真の歴史を知るなら陰謀に挑め!/①『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

 

歴史で「陰謀」などというと荒唐無稽で、あやしげで「信じるか信じないかはアナタ次第!」ってのでしょう?という風に思われる方が多数だと思います。

じゃ陰謀論の正反対、みんなが信用して共有している史実っていったい何なの?といえば、まあ歴史教科書とかマスコミが語っている歴史なわけですが、それが正しいかと言えば実はそんなこともない。普通に考えてだいぶ危うい。

ウクライナ戦争はウクライナから見ればロシアの侵略戦争だし、ロシアから見ればネオナチ掃討作戦。台湾危機は米国から見れば民主主義を守れ!だけど、中国から見たら内政干渉だったり、もう立ち位置で180度見え方が違う。これは今現在の話だけじゃなく、前の世紀からそれ以前からもそう。

歴史は勝者の都合のいい物語だし、正義は後から付け足せる世界に我々は住んでいる。

そんな中、8月といえば終戦記念日!毎年恒例の「戦争映画特集」となりますが、今年はウクライナ戦争や台湾危機、アフガンやパレスチナから、ウィグル問題までどうにも実体不明の戦争や紛争、危機が勃発しているので、「戦争と陰謀」をテーマに皆さんが知っている歴史認識の危うさと、想像力の限界に挑む「陰謀の世界」に扉を開く映画をご紹介させていただければと思います。

 

 

陰謀に想いめぐらすのに打ってつけの謀略アクションエンタメ
『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)

ご存じ大人気シリーズのエピソードゼロ、「キングスマン:ファースト・エージェント」。これまでのシリーズとは一線を画す、歴史の身をまとった埃っぽい映像が特徴ですが、中味はがっつりスパイが大活躍のアクションエンタテインメント。でもこいつは陰謀好きにはたまらない映画となっています。

時は20世紀初頭、セルビア訪問中のオーストリアのフェルディナンド大公暗殺をきっかけにロシア、ドイツ間で戦争が勃発。フランス、イギリス、オスマン・トルコ、などに飛び火、結果ヨーロッパからアフリカ、アジアまで、世界50か国が参戦し、1000万人が戦死するという空前の大戦となってしまった「第一次世界大戦」。実はその裏である組織(闇の狂団)が世界の滅亡、特にイギリスの崩壊を目指して暗躍していた、というのがこの映画の背景ですね。

『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)

 

主人公、レイフ・ファインズ演じるオーランド・オックスフォード公はその謀略をキャッチし、息子や仲間と共に「誰に頼まれたわけでもないのに」「自費で」闇の狂団に敢然と立ち向かうというストーリーで、現代に続く独立諜報機関「キングスマン」の立ち上げを描く物語なわけですが、この映画の虚実の織り交ぜ方が秀逸で、マシュー・ヴォーン監督の陰謀好きにうならざるを得ない。

まず、第一次世界大戦という舞台設定。

たった一つの暗殺事件から1000万人が死んでしまうという、あっという間の死の連鎖、帝国主義・覇権時代の集団安全保障というのはかくも歯止めがきかないものであったか?という気持ちと

「誰かが意図的にこの一触即発の戦争を操っていたとしたら」

という想いが多少入り混じる辺りをうまくとらえています。

さらにドイツ皇帝ウィルヘルム二世と敵味方となるロシア皇帝ニコライ二世、イギリス国王ジョージ5世のそっくり3人組(これは本当に似ている)の近親憎悪的な感情や、ロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイマタ・ハリ、セルビアの暗殺犯ガヴリロ・プリンツィプ、ドイツのニセ預言者エリック・ヤン・ハヌッセンなど、現在でもミステリアスなムードに包まれている実在の人物たちが裏で手を握っていたとしたら?という妄想も十分に掻き立てられるもの。

『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)

イギリス国王ジョージ5世(左)、ロシア皇帝ニコライ二世(右)

 

実はこの映画は後半に現実にも通じる“陰謀界の大リーダー”を登場させてますね。

ロシアの革命家レーニンです。

世界初の共産主義革命を起こし、ソビエト連邦を立ち上げるとともに、世界中に共産党をつくり(もちろん、中国共産党も日本共産党もそれで出来たのです。)その後の世界に混乱と恐怖に陥れた張本人。

レーニンは第一次世界大戦当時、革命活動でロシア帝国から追われており、スイスに逃げていたんですね。戦争が長期化、ロシア国内情勢が不安定になり、革命運動が本格化するにつれ、待ってましたとばかりレーニンは列車に乗せられ故国の地ロシアに舞い戻り、革命勢力の主導権を得ます。

『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)

 

この動きをヨーロッパで支援したのが、もうひとつの“陰謀界のスター軍団“、ユダヤ人です。

とはいえ、これはロシアに住むユダヤ人を助けるためのものでありました。帝政ロシアはそれまで、ユダヤ人たちにポグロムと呼ばれる苛烈な迫害を行っていたのです。「シオン長老の議定書」という、ユダヤの世界征服計画とでもいいましょうか、今に至るユダヤ陰謀論の出発点となったような本(もちろん内容は偽)ですが、この本の発行がきっかけで迫害は激化、さらにロシア政府はそれに乗じて社会の様々な問題をユダヤ人のせいにして、それがために数十万人から百万人近いユダヤ人が虐殺されたのです。

そのような時代背景の中、同胞をなんとか助けるために、帝国政府打倒を掲げる革命勢力をユダヤは支援しました。また、革命組織(ボリシェビキ)の中にはユダヤ系も多く、レーニンも少し血が入ってるようですし、トロツキーはユダヤ人ですし、ロシア革命は半ばユダヤ革命に近いと思われていた部分もあるのです。ただもちろん最大パワーを持つユダヤ財閥ロスチャイルドは英国と共にスエズ運河の権益をとり、政府に働きかけて、ユダヤ人の「約束の地」(イスラエル)をパレスチナに作ると宣言を出させたり、“世界征服“に抜かりはありませんでしたが。。

というわけで、共産主義者、ユダヤ人の暗躍を予感させる「キングスマン:ファースト・エージェント」は世界の陰謀史に考えをめぐらすスタートとしては最高の作品だと思います。

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【キャスト】
レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソン、ジャイモン・フンスー、ジェマ・アータートン、、トム・ホランダー 、チャールズ・ダンス、マシュー・グード、ダニエル・ブリュール

【スタッフ】
監督:マシュー・ヴォーン
製作:マシュー・ヴォーン、デヴィッド・リード、アダム・ボーリング
製作総指揮:マーク・ミラー、デイヴ・ギボンズ、スティーヴン・マークス、クローディア・ヴォーン、レイフ・ファインズ
原作:マーク・ミラー、デイヴ・ギボンズ
原案:マシュー・ヴォーン
脚本:マシュー・ヴォーン、カール・ガイダシェク
音楽:マシュー・マージェソン、ドミニク・ルイス

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