坂本龍一追悼特集「坂本龍一と映画の世界」
坂本龍一は単なる映画音楽のコンポーザーではないですね。
「音の力」で、作品に強烈な色彩を与えて、時には自らも登場して、一つ世界を創り上げようとする。YMOの三人の中で坂本龍一が一番映画音楽にのめりこんだのは、やはり「音楽」単体を飛び越えて「世界をつくって魅せる」ことに大きな意義を見出したからではないでしょうか?
坂本龍一にそんな大きなパワーを与えたのは、やはり大島渚監督とやった「戦場のメリークリスマス」だったでしょう。
坂本龍一が後年、多くの社会活動や「News23」と組んだ音楽プロジェクトを手掛けるのも、同じく「音の力」を信じたゆえだと思います。
というわけで、坂本龍一の一周忌、「戦場のメリークリスマス」も劇場公開していることですし、われらが教授、坂本龍一が「音楽」からはみ出て世界的な音楽家になる導線にあった「映画」たちを振り返ってみたいと思います。
『戦場のメリークリスマス』(1983)
大島渚監督の最大のヒット作『戦場のメリークリスマス』。坂本龍一が初めて映画音楽を手がけただけでなく、ヨノイ大尉としてビートたけし、デヴィッドボウイと共に映画出演を果たした。捕虜収容所と同性愛を捉えた当時としては内容的には非常に変わった作品だったが、これは音楽で当たった映画。第36回カンヌ国際映画祭に出品され、坂本龍一は英国アカデミー賞作曲賞を日本人として初受賞した。
『ラスト・エンペラー』(1988)
ベルナルド・ベルドリッチの代表作。第60回アカデミー賞で作品賞や監督賞をはじめ最多9部門を受賞した。坂本龍一は甘粕大尉として演技しつつ、音楽を手掛け、日本人として初めて、デヴィッド・バーン、コン・スーとともにアカデミー賞作曲賞を受賞した
『シェルタリング・スカイ』(1991)
ベルドリッチと再タッグを組んだ『シェルタリング・スカイ』。ポール・ボウルズの小説『極地の空』の映画化。せつなくも美しい旋律で坂本映画音楽の一つの頂点。『ラストエンペラー』に続き2度目のゴールデングローブ賞作曲賞を受賞
『レヴェナント 蘇りし者』(2016)
めっちゃ汚いレオナルド・デ・カプリオがアカデミー主演男優賞を受賞した米国西部開拓時代の復讐劇。自然環境の中で生き抜こうともがく主人公のさまをダイナミックな映像と音楽で描く。アカデミー賞では、デ・カプリオ以外にも監督賞、撮影賞も獲得、3冠に輝いた。本作で音楽の坂本龍一は「今回はイニャリトゥと相談して、ピアノを使うのをやめようとなった。(その代わり)ピアノをぶったり、鍵盤を押さえたりして効果音的な使い方をした」とのこと。
『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』(2017)
米軍の圧政と戦った1人の男の生き様を描いたドキュメンタリー。沖縄の民衆に支えられ、那覇市長、国会議員と立場を変えながら闘い続けた政治家・瀬長亀次郎の物語。監督は「筑紫哲也NEWS23」でキャスターを務め、本作が初監督となる佐古忠彦。テーマ曲を筑紫哲也とも繋がりの深い坂本龍一が手がけ、大杉漣が語りを担当。
『約束の宇宙(そら)』(2021)
「007 カジノ・ロワイヤル」「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」のエバ・グリーンが主演を務め、シングルマザーの宇宙飛行士と幼い娘の愛と絆を描いたドラマ。物理学者の夫と離婚し7歳の娘ステラと2人で暮らす彼女は、「Proxima(プロキシマ)」と名付けられた宇宙飛行ミッションのクルーに選ばれる。長年の夢が実現し喜ぶサラだったが、宇宙へ旅立てば娘と約1年もの間、離れ離れになってしまう。。坂本龍一が音楽を担当。
『アフター・ヤン』(2021)
AIロボットのヤンが動かなくなった。そのメモリには、家族の誰もが気付かなかった愛おしい記憶と、ある”秘密”が残されていた―。ロボットとある家族の危機と再生を描いたA24が放つ傑作で、監督はコゴナダ、主演はコリン・ファレル。このエモいストーリーを彩るのは坂本龍一の名曲「Memory Bank」。ストリングス・アレンジにAska Matsumiya & Ho-Ling Tangが参加。
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