『ナポレオン』観る前に、リドスコ映画満喫術(4)偏った男の生きる道『アメリカン・ギャングスター』『ハンニバル』
監督リドリー・スコットこそ、現代のハリウッドが抱える最高のクリエーターであり、映画界がもっと評価しなければならない最高の英知でしょう。と、いきなりほめまくりましたが、リドリー・スコットはブレイクした『エイリアン』(1979)から、多くのクリエーターにとって、もはや宗教ともいえる映画『ブレードランナー』(1982)、アカデミー賞を獲得した『グラディエーター』(2000)、ゴールデングローブ賞を獲得した『オデッセイ』(2015)、近年の『ハウス・オブ・グッチ』(2021)まで、70年代後半のデビューから現在まで、半世紀に渡り非常に高いレベルの、しかも話題の大作をほぼ毎年提供し続けています。
そんな監督は他にはいません。85歳でこれだけ精力的にクリエイションし続けるスーパーお爺ちゃん。
そんなリドリー・スコットの最新作が『ナポレオン』。この話題作を観る前にリドスコ映画満喫術ということで、リドリー・スコット映画に特徴的なポイントから最新作のみどころを想像してみようという企画お届けします。
(4)偏った男の生きる道
『アメリカン・ギャングスター』『ハンニバル』
リドリー・スコット映画のココを見て!を最後に言いますと、アクションもいいんですが、とにかくリドスコ映画は男がかっこいいんです。しかもちょっと偏った男が。。
とにかくイカしているのがオーランド・ブルームの十字軍映画『キングダム・オブ・ヘブン』ですね。この映画は、実は投石機映画として有名でして、エルサレムの城を襲うイスラム軍団の投石機が普通じゃない。石が弓なりに飛ばないでイチローのレーザービームみたいにビジュー!!!と、直線で飛んでいきます。こんなに怖いものはない。映画史に残る攻城戦なのでぜひご覧ください。この映画の戦いの決着のつき方がめちゃかっこいいです。対立するイスラム教とキリスト教のリーダー同士の会話がこんなにムネ熱になってしまっていいんでしょうか?オーランド・ブルームの最高傑作だと思います。
『アメリカン・ギャングスタ―』ももしかしたら『ブレードランナー』や『ブラック・レイン』の延長戦上にある話なのかもしれません。デンゼル・ワシントン演じる端正でスマートなギャング、誰も友達がいなさそうなラッセル・クロウ演じる薄汚い刑事。この映画のラストはそれまで対決に明け暮れていた刑事とギャングに第三の道を提供し、急展開のラストを迎えます。アウトローに対する愛がありますよね、この話は邦画として藤井道人監督と綾野剛あたりにやってもらったらいいと思います。
そして、見る度に私がしびれるのが『ハンニバル』のクライマックスへ至る過程ですね。クラリスの家で悪の宴を繰り広げようとするレクター博士。オペラのアリアが鳴り響く中、その人殺しの準備を病院からキッチンへ縦横無尽に、まるで料理を楽しむかのように次から次へと流麗に段どっていく。この感じはジョナサン・デミが監督した前作『羊たちの沈黙』のレクター博士にはない。その後「げえええ!!!!!!」という脳みそ料理の凄い展開はありつつ、最後の飛行機の展開も実は映画だけ。原作にはない。この緻密で華麗で、しかも大胆な男・レクター博士は、実はリドリー・スコット本人だろうと思います。だから、片腕にクラリスへの愛を表現した。
この最高に偏った変態スリラー『ハンニバル』は、『ジョーカー』が出るまで日本のR15洋画の記録をもっていたそうですが、それもわかります。シリアルキラーを見に来たら、いなせなイイ男を見せつけられた感じ。このラストでハンニバル・レクターはジョナサン・デミのものではなく、リドリー・スコットのものになった。これほどの続編はないでしょう。
『ナポレオン』の生涯は数奇です。やたらに戦のうまい軍人として突如して歴史に現れ、30代で皇帝の位についた。しかも国民投票を行い、自らの手で戴冠(冠を被る)、つまり、宗教支配を否定し、民主主義と独裁を体現した男としてその名を刻む。こんな男が普通の訳ないですよね、レクターをあそこまでかっこよく(男としてね)描き切ったリドリー・スコットに世界史上まれに見る“天才”はどう映るのか?
さあ、観てみましょう!!!
『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)
【キャスト】
オーランド・ブルーム、リーアム・ニーソン、ジェレミー・アイアンズ ほか
【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:ウィリアム・モナハン
製作:リドリー・スコット
製作総指揮:テリー・ニードハム、リサ・エルジー、ブランコ・ラスティグ
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影:ジョン・マシソン
編集: ドディ・ドーン
製作会社:20世紀フォックス、スコット・フリー・プロダクションズ
配給:20世紀フォックス
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『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)
【キャスト】
オーランド・ブルーム、リーアム・ニーソン、ジェレミー・アイアンズ ほか
【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:ウィリアム・モナハン
製作:リドリー・スコット
製作総指揮:テリー・ニードハム、リサ・エルジー、ブランコ・ラスティグ
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影:ジョン・マシソン
編集: ドディ・ドーン
製作会社:20世紀フォックス、スコット・フリー・プロダクションズ
配給:20世紀フォックス
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『ハンニバル』(2001)
【キャスト】
アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、レイ・リオッタ、フランキー・R・フェイソン、ジャンカルロ・ジャンニーニ、フランチェスカ・ネリ、ゲイリー・オールドマン ほか
【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・マメット、スティーヴン・ザイリアン
原作:トマス・ハリス『ハンニバル』
製作:ディノ・デ・ラウレンティス、マーサ・デ・ラウレンティス
製作総指揮:ブランコ・ラスティグ
音楽:ハンス・ジマー
撮影:ジョン・マシソン
編集:ピエトロ・スカリア
製作会社:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、ユニバーサル・ピクチャーズ、ディノ・デ・ラウレンティス・カンパニー、スコット・フリー・プロダクションズ
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1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく――。彼を駆り立てたものは、一体何だったのか?
【キャスト】
ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット
【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ
公式サイト:https://www.napoleon-movie.jp
12月1日(金)全国の映画館で公開
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