MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『ナポレオン』観る前に、リドスコ映画満喫術(3)仕事人&ゴッドファーザー、リドリー爺『JAPAN IN A DAY ジャパン イン ア デイ』

監督リドリー・スコットこそ、現代のハリウッドが抱える最高のクリエーターであり、映画界がもっと評価しなければならない最高の英知でしょう。と、いきなりほめまくりましたが、リドリー・スコットはブレイクした『エイリアン』(1979)から、多くのクリエーターにとって、もはや宗教ともいえる映画『ブレードランナー』(1982)、アカデミー賞を獲得した『グラディエーター』(2000)、ゴールデングローブ賞を獲得した『オデッセイ』(2015)、近年の『ハウス・オブ・グッチ』(2021)まで、70年代後半のデビューから現在まで、半世紀に渡り非常に高いレベルの、しかも話題の大作をほぼ毎年提供し続けています。

そんな監督は他にはいません。85歳でこれだけ精力的にクリエイションし続けるスーパーお爺ちゃん。

そんなリドリー・スコットの最新作が『ナポレオン』。この話題作を観る前にリドスコ映画満喫術ということで、リドリー・スコット映画に特徴的なポイントから最新作のみどころを想像してみようという企画お届けします。

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

 

 

(3)仕事人&ゴッドファーザー、リドリー爺
『JAPAN IN A DAY ジャパン イン ア デイ』

私は、リドリー・スコットはナポレオンに共通するものを感じていると思いますね。それは圧倒的な仕事人ということです。睡眠しなくていい(ナポレオン睡眠)なんて、ほんとかどうかわかりませんが、少なくとも「眠る暇がない程やることがある」という事情がない限り、そんなことをやったりしませんよね。ナポレオンは、何より1000年に一人の軍事的天才で、それまでの戦場の様相を一変させたけど、あらゆる状況に首を突っ込みたい人でもあったでしょう。独裁者ですからね。ちょっと神経質だったかもしれない。

だから言いたい。前々回、「雪は舞うか?」の回で、「いや今回の撮影監督はダリウス・ウォルスキーだから『グラディエーター』の時の撮影監督とは違うんだよな」と思ったアナタ!ちょっと知ってるつもりのアナタ!違います!(どした?)

リドリー・スコットはBBC時代から映像製作に関するすべての作業に熟達しており、絵コンテの執筆や撮影などを自らの手で行うことも多いんです。(彼の書いた絵コンテやイメージボードの画力はハイレベルであり、映画愛好家のコレクターズアイテムともなっています)特に撮影についてはフィルムからレンズ、照明についても熟知してますから、クオリティの高い撮影監督と組んでいることはもちろんですが、リドスコの映画の映像イメージは全てリドスコの意識下にあるものです。丸投げはしないのです。彼は究極の仕事人なのです。

ただおかげで、最初の頃は仕事の範囲が撮影監督と交錯し、トラブルを引き起こしたケースが少なくないんです。また彼のイメージする映像世界を実現するために美術から照明など細部にわたり構築していく完璧主義がたたり、製作ペースの遅れやスタジオとの対立から『ブレードランナー』をはじめ数多くのディレクターズカット版が作られるなど辛酸をなめたケースが少なくないと言われています。只結果としては、その苦労を経験したことで、任せられる確かなスタッフを率いることに成功し、50年の長きに渡り、ハイペースで監督しつつ、一歩引いたプロデューサーとしての仕事までやれるようになったと思います。

ご存じと思いますが、リドリー・スコットには最強の弟がいますね『トップガン』監督のトニー・スコット。1995年に設立した「スコット・フリー・プロダクションズ」は彼ら兄弟の牙城です。二人はめちゃ仲良し、異国の地で助け合ってきました。残念ながらトニーは亡くなってしまいましたが、リドリー・スコットは家族のつながりを非常に大切にしており、息子ジェイク・スコットやルーク・スコット、娘ジョーダン・スコット監督の映画を制作しています。家族思いのゴッドファーザーですね。リドリー・スコット一家のことがよくわかる本として、ハウスキーパーとして働いていた日本人の高尾慶子の著書「イギリス人はおかしい」で、スコット家の私生活、性格やその母親とのエピソードを知ることができます。リドリー・スコットじい、めちゃ几帳面らしい。

リドリー・スコットのプロデューサーとして仕事も多岐に渡りますが、日本人として覚えておきたいのは、2012年、フジテレビと共同で、東日本大震災から1年を経た2012年3月11日の映像の記録を人類共通の財産として共有するプロジェクト『Japan in a Day ジャパン イン ア デイ』を開始し、YouTubeに公式チャンネルを開設したこと。

 

次回:(4)偏った男の生きる道『アメリカン・ギャングスター』『ハンニバル』

 

『JAPAN IN A DAY ジャパン イン ア デイ』(2012)

【スタッフ】
監督:フィリップ・マーティン 成田岳
製作総指揮:リドリー・スコット、トニー・スコット
エグゼクティブプロデューサー:亀山千広
2012年製作/92分/G/イギリス・日本合作
配給:ギャガ
劇場公開日:2012年11月3日

 

1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく――。彼を駆り立てたものは、一体何だったのか?

【キャスト】
ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット

【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ

公式サイト:https://www.napoleon-movie.jp

12月1日(金)全国の映画館で公開

★関連記事

【観るべき100本】『キングダム・オブ・ヘブン』 エルサレムはいつイスラムの手に落ちたのか?

【あなたなら孤独とどう付き合う?】『グラディエーター』『ブレードランナー』の巨匠リドリー・スコットが再びアカデミー賞を狙う究極の宇宙サバイバル、話に似合わず明るい雰囲気、もれなく感動する。

『アリータ』観ると見たくなる! おさえたいサイバーパンク映画の系譜5選『アリータ :バトル・エンジェル』

『アリータ』観ると見たくなる!これぞサイバーパンク映画の世界!『ブレードランナー』