【ネタバレ注意!】映画『おいしい給食 炎の修学旅行』公開記念!市原隼人&綾部真弥監督&岩淵規プロデューサー”どこよりもディープなファンによる”1万字インタビュー<前編>

市原隼人主演のドラマ『おいしい給食』。2019年からスタートしたキー局ではない30分尺のドラマは、今やTVシリーズ3シーズン、劇場版は4本を数える。ファンは拡大し続け、今や大手企業とのコラボCMまで流れる一大コンテンツへと成長した。その劇場版第4弾である映画『おいしい給食 炎の修学旅行』が10月24日から全国の劇場で公開となっている中、このプロジェクトを仕掛けてきた中心人物、主演の市原隼人さんと綾部真弥監督、そしてプロデューサーの岩淵規さんにお話を聞くお時間をいただいた。
初の単体映画となったことでの変化と進化、粒来ケンの底力、待望のシリーズ復帰を遂げた御園先生に対する甘利田先生のある想いまで、おいしい給食ファンのインタビュアーが、どこよりもディープにお届けします!
取材・文:稲生D(共感シアター)
この記事には、映画本編のネタバレがあります。鑑賞前の方はご注意ください

――お三方、今日はありがとうございます。そしていちファンとして謝罪させてください!すいませんでした!正直、疑ってたんですよ。ここまで来ると、さすがにもうできることもなくなっているんじゃないかと。
綾部監督:疑ってたんだ(笑)。
市原さん:第4弾ともなればね(笑)。
――そうなんです。
綾部監督:もう枯れてるだろうと(笑)
――それがもう、めちゃめちゃおもろかったです。それにまずびっくりして。まだ給食にこんな見せ方があるのかと。給食シーンの安定感はもちろん、修学旅行という場での外食、そして他校でのあの給食シーン。いやはや参りました!今日はいろいろとお話伺わせてください!
綾部監督:そう言っていただけて嬉しいです(笑)
修学旅行でついに外に飛び出す『おいしい給食』
――今まではドラマシリーズからの劇場版という流れがありました。しかし今回はシリーズ初の単体映画です。ドラマという後ろ盾がなくなる中で、なぜ単体の映画で、それも修学旅行にしたのですか?
綾部監督:単体の映画にしたのは、正直言うと粒来ケンを卒業させたかったのと、もしこの次を作ることになったとしても、甘利田も函館に残っている状態なので、どこかに移動させないと次が作れない (笑)。さすがに脚本の永森さんも「函館でもう10話やるのは無理だよ」とおっしゃっていて。わかりやすく言うと、いいアイデアはもう1位から10位まで全部使っちゃってるんです。だからと言って11位から20位のものでやっても意味がない。だったら映画1本で行こうよと。そして修学旅行にすれば外に出られるので、マンネリせずにできるんじゃないかというのがありました。
岩淵P:脚本読んだ時にびっくりしましたよ。「修学旅行?!外に出るの?!」って(笑)。
綾部監督:最初と最後は給食でちゃんと締めて、間で外に出るという新たな楽しみがある。市原くんともよく言うんですけど、時代や場所が変わっても甘利田は変わらない。でも場所が変わることによって、変わらない甘利田の見え方が違ってくるんですよね。
――よその学校に行くとは思いませんでした。片桐仁さん演じるスパルタ教師も出てきました。
綾部監督:あの学校は、あれはあれであの時代の正義であって常識なんです。先日岩手の学校にお邪魔したときも、校長先生が「男子は丸坊主、女子は三つ編みでした」っておっしゃっていたんです。片桐さんも「俺の時代はひどいスパルタだった」って言っていました。
――いましたね、ああいう先生。
綾部監督:時代が変わると、あの時の常識が良くないことになったりする。変わらないことの良さもあるんですが、変わることの良さもあって。甘利田をいつもと違う場所に置くことで、そういうメッセージが組み込めるなというところから、脚本を作っていきました。
――市原さんは、修学旅行という試みはいかがでしたか?
市原さん:まず修学旅行と聞いて考えたのは、「給食好きの男が食べる外食ってなんなんだろう」ということでした。今までは教室など小さい範囲でやっていたものが、この修学旅行で、また「おいしい給食」が勝負に出たなと。バスに乗って宿泊して、温泉に入ったり、甘利田がいろいろなご当地のものを食べるのですが、宿泊先でもその1991年の雰囲気が出せるのか、どんなシチュエーションになるのかと楽しみでした。

市原隼人と田澤泰粋の絆が生きた卓球シーン
――粒来ケンとの卓球のシーンが印象的でした
市原さん:卓球もやったことなかったですから(笑)。それもセリフを言いながらラリーできるレベルまでにならないといけない。じゃあどうしよう、ということになって、東京でプロの方に粒来ケン役の(田澤)泰粋とふたりで教わったんです。それ以降は、学校終わりの泰粋と待ち合わせて、近くのショッピングモールの端っこにあった卓球スペースで練習したりして。長い時は6時間を超えることもありましたが、泰粋も真面目に一生懸命取り組んでくれて。練習後にはショッピングモールで一緒にご飯食べたりして。今までにない『おいしい給食』への向かい方ができました。
――めちゃくちゃ練習したんですね
市原さん:やっぱり、どんな作品でもドキュメントだと思うんです。この『おいしい給食』も6年間続けてきた我々のドキュメントですから、嘘がつけないんです。どんなことも嘘をつかずに挑戦していくことが『おいしい給食』なのかなと思います。なので、しっかりと準備をしてそれができた、というのもいい思い出かなと思っています。
綾部監督:あの卓球シーンはもう市原くんとケン(※綾部監督は田澤さんのことをケンと呼びます)のおかげですよね。おかげでテイクも思った以上に少なくて済みましたから。卓球でラリーしながら喋るシーンがある映画はいくつかあるんですが、調べてみたら有名なものも含めてほとんどがCGを使ってるんですよ。あの体制で打ち合いながらセリフを喋るのってかなり難しい。だから市原くんとケンがそこにフォーカスして努力してくれたことは、卓球だからということだけじゃなくて、ふたりの新たなモチベーションに繋がったんだろうなと。僕は最初の1回だけ練習の場に行ったんですが、ふたりから「監督はどういうのを撮りたいんですか!」って、すごかったですから(笑)。「じゃあ、なるべく長く、ワンカットで」と(笑)。
市原さん:ははは(笑)。どうとでもなれるようにですね。
綾部監督:当時はロケハンで地方をずっと回ってましたから。練習にも付き合えず、もう全部任せっきりになっちゃって(笑)。途中途中で市原くんからLINEが送られてくるんです。「見てください。ラリーがこんなに続きましたよ」とか「今ショッピングモールでアイス食ってます」とかね(笑)。
市原さん:あったあった(笑)
綾部監督:これってケンだからできたというか、初めましてだとなかなか難しかったなと思うんですよね。これまでのふたりの先輩後輩の関係性がしっかりある中で。本当に1回や2回じゃないですからね。何回も何回も練習してくれて。
市原さん:(しみじみと)ちゃんとやってましたね。本当に泰粋は大変だったと思います。慣れないことで、あの卓球のシーンだけじゃなく、彼がいろいろ限界を超えて挑んでくれているというのは、僕自身すごく励みになりました。逆に学ばなきゃいけないことがたくさんあるなと。

重圧の中、粒来ケンを演じてきた田澤泰粋の底力
――田澤さんは今回、すごく落ち着いて見えました
綾部監督:今回の撮影で忘れられないことがあって。ちょっとネタバレになっちゃうんですけど、甘利田が校歌を歌われて泣くシーンがあるじゃないですか。あそこは最初に市原くんが泣くという大きな芝居を撮るんです。その後に重要な生徒たち、つまり2番目に撮るのがケンなんですが、1発目から100点の芝居をしたのでオーケーにしたんです。でもケンを見ていたら少し首をひねったんですよ。気になったものの、芝居は悪くなかったですから。で、残りの生徒を撮って、じゃあ最後に引きの画で終わりとなった時に、ケンを見たらやっぱり彼の中で「足りていないのかな」って感じがしたんです。なのでケンに「まだ集中してるか?」って聞いたら、「集中してます」と。「もう1回やりたいか?」って言ったら、「やらせてください」と返ってきた。それで「さっきの芝居で十分100点だけど、さらに行くんだったら最初からリミッター外して行け」と。
そして市原くんにお願いして、最後にもう1回リテイクしたんですよ、ケンだけ。そしたらもう、その芝居がフルスロットルでものすごくて。「うおお!きたー!」って(笑)。俺も岩淵さんも感動しちゃって。
岩淵P:みんなボロボロ泣いてたよね。
――本人の中でもっとできたというのがあったんでしょうね。
綾部監督:そうみたいです。悪く聞こえてしまうかもしれないですけど、他の生徒だったら許さなかったと思うんです。もうオッケーしたし、100点だし。まだ撮らなきゃいけないことがたくさんありましたから。でもケンはもうひとりの主役なんですよ。だからこそもう1回やらせてあげようっていう気になれましたし、そしてそれに応えてくれました。あそこまで俳優として自己主張できるようになったというか、「まだできます。やらせてください」っていう感じがすごく嬉しかったですね。
――市原さんはいかがですか、田澤さんの成長を見て
市原さん:全部本当の涙ですから。ここまでずっと築き上げてきて、この作品の本当の主役は子供たちだと思っています。私も13歳から芝居の世界に入って、押し付けではなく、すごく現場が好きだったんです。芝居がすごく楽しくて、周りの映画を作る人たちが、みんなかっこよく、輝いて見えてたんです。生徒たちにとってもそういう場であってほしいと心がけています。お芝居をする時には、「なぜこれを作らなければならないのか、お客様にどう見てほしいのか。何を見せるべきで、そのために自分は何をしなきゃいけないのか。それぞれ考えてみてください。撮影が終わった後に、その答えが出ると思います」という話もしました。そうやって挑む撮影だったのですが、みんなすごく一生懸命で、しっかりお客様のことも考えてくれて。子供たちの背中を見ていると本気で涙が止まらないんです。シーズン1からずっと、子供たちがみんな生々しいんです。「おいしい給食」は、やっぱそうじゃなきゃいけない。子供たちがありのままでいられる。その素晴らしさが映像に残っていると思います。

ファン待望の御園先生こと武田玲奈さんがカムバック!
――今回、御園先生こと武田玲奈さんがシリーズに復帰しました。ファンを代表して言いますけど、早くしてくれ、何をもたもたしているんだと思っていました(笑)。
お三方:ですよね(笑)
――やはり制作サイドとしても戻したいという気持ちはずっとあったんですか?
岩淵さん:そうですね。いつか出したいという思いはずっとありました。ファンのみなさんの声もすごい多かったので(笑)。ようやくタイミングが訪れた感じですね。本当にみんな「今だよね」と納得のタイミングでした。武田さん自身も、「シーズン1が終わってから、ちょうど年齢的にも成長している頃でいいですね」とおっしゃっていましたから。そういうタイミングですし、ああいうスパルタ教育のもとにいたっていうのも、また違う成長の仕方とか、そこで悩んでる姿も出せたんじゃないかなと思います。彼女の実年齢ともリンクしますし、甘利田の「そんなもんですか?」っていうセリフが刺さる年齢でもある。本当にちょうどいいタイミングでしたね。
――市原さんはどうですか?武田さん自身の印象は以前と変わりましたか?
市原さん:変わりました。対応能力といいますか、シーズン1の時はやっぱり新米教師役ですし、現場でもキャッチする、受け止める側だったと思うんです。今回、自分からより掴みに行こうとする姿勢に感動しました。そして彼女ならではの凛とした雰囲気と、艶やかさと言いますか、すごく素敵だなと。役としても以前とは違う、新たな御園先生を見せてくれます。武田さんご自身もいろんな経験を経て、同じ役でもこれだけ変わるんだっというのを、本当にまじまじと、特等席で見せていただいたので(笑)。なかなかないじゃないですか。一度出演して、何年か後にまた同じ役をやることは。僕もそういう経験してみたいですし、彼女にとっても、もう今後なかなかないことだと思うんですよね。
――監督はどうでした。久しぶりの武田さんは。
綾部監督:彼女は僕にとってちょっと特別すぎて(笑)。僕が監督になった時の最初のシリーズが『人狼ゲーム』で、僕が最後に担当した『人狼ゲーム INFERNO』の主演が彼女だったんです。僕自身、本当に苦しんだ作品で、ギリギリの精神状態の中で玲奈と向き合って、本当に救われたというか。彼女が主演だったからやりきれたと思ってるんです。さらに違うドラマでもヒロインやってくれて、この『おいしい給食』でもヒロイン。これだけ一緒にやってきてるんで、会いたいような、会いたくないような複雑な気持ちなんです。もう好きすぎて(笑)。
市原さん&岩淵P:好きすぎて(爆笑)
綾部監督:なんかね、こう、向き合い方というか。ちょっと気恥ずかしい部分もあって。さらに『おいしい給食』の古参のファンの方々にとっても、彼女は特別な存在じゃないですか。
――そりゃもうレイア姫みたいなもんです
綾部監督:ですよね(笑)。なので御園先生をどう戻したら納得してもらえるんだろうと。
――甘利田先生との再会シーンはドキドキしました
綾部監督:御園先生の再登場のポイントは、あの頃から少し変化してしまっている彼女が、再び甘利田と出会うとどうなるのかというところですよね。手を抜かずにここまで頑張ってるんだけど、この方法でいいのかと悩んでいる。20代後半の女性の等身大の悩みですよね。なので、この修学旅行編という特別な作品に花を添えるなら、新たなヒロインがいきなり出てくるよりも、御園先生が再び甘利田と出会うほうがいいと思ったんです。

★後編へ続く!
映画『おいしい給食 炎の修学旅行』公開記念!市原隼人&綾部真弥監督&岩淵規プロデューサー”どこよりもディープなファンによる”1万字インタビュー<後編>
『おいしい給食 炎の修学旅行』
2025年10月24日新宿ピカデリー他全国公開
©2025「おいしい給食」製作委員会
市原隼人
武田玲奈 田澤泰粋 栄信 田中佐季
片桐仁 いとうまい子 赤座美代子 六平直政 高畑淳子 小堺一機
監督:綾部真弥
製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二
プロデューサー:岩淵 規
主題歌:「君の花~4th session~」(AMG MUSIC)
制作プロダクション:メディアンド
企画・配給:AMGエンタテインメント
©2025「おいしい給食」製作委員会
公式HP:https://oishi-kyushoku4-movie.com
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