映画『おいしい給食炎の修学旅行』公開記念！市原隼人＆綾部真弥監督＆岩淵規プロデューサー”どこよりもディープなファンによる”1万字インタビュー＜後編＞

2025.10.30

市原隼人主演のドラマ『おいしい給食』。2019年からスタートしたキー局ではない30分尺のドラマは、今やTVシリーズ3シーズン、劇場版は4本を数える。ファンは拡大し続け、今や大手企業とのコラボCMまで流れる一大コンテンツへと成長した。その劇場版第4弾である映画『おいしい給食炎の修学旅行』が10月24日から全国の劇場で公開となっている中、このプロジェクトを仕掛けてきた中心人物、主演の市原隼人さんと綾部真弥監督、そしてプロデューサーの岩淵規さんにお話を聞くお時間をいただいた。

初の単体映画となったことでの変化と進化、粒来ケンの底力、待望のシリーズ復帰を遂げた御園先生に対する甘利田先生のある想いまで、おいしい給食ファンのインタビュアーが、どこよりもディープにお届けします！

取材・文：稲生D（共感シアター）

★インタビュー前編はこちら！
【ネタバレ注意！】映画『おいしい給食炎の修学旅行』公開記念！市原隼人＆綾部真弥監督＆岩淵規プロデューサー”どこよりもディープなファンによる”1万字インタビュー＜前編＞

甘利田先生は御園先生のことを・・・

――ファンはみんな聞きたいはずなので、この際ぶっちゃけて聞きますけど、甘利田先生は御園先生好きですよね(笑)？

市原さん：御園先生のことも絶対好きですよ！(笑)、絶対好き。

――御園先生がバスを追いかけるところとか、音声オフでしたけど、明らかに口が言ってましたよね。「おれも好きだー！」って(笑)。

市原さん：バレちゃいましたね (笑)

綾部監督：ここだけの話ですけど、最初は編集で「俺も好きだー！」っていう市原くんの声をオンにしてたんですよ。すると脚本の永森さんが、「おれ『も』ってどういうことですか」って(笑)。

市原さん：そんなセリフ台本に一切書いてないですしね(笑)。

岩淵P：御園先生は別に好きって言ってないしね (笑)。

――甘利田が箸を忘れてるだけ(笑)。

お三方：（爆笑）

綾部監督：あのセリフは観客のみなさんに聞かせない方がいいって思ったんですよ。絶対そうだってわかってるからこそ、何かが壊れちゃう気がしたし。想像力を掻き立てる意味でも、あえて音声はオフにした方が面白いかなと。

岩淵P：やっぱりこのふたりは甘酸っぱいよね。

市原さん：このシリーズで唯一甘酸っぱい(笑)。

綾部監督：ついに再会したシーンも最高ですよね、「甘利田です」とか言ってるのに、「振り返らねーのかよ！」って(笑)。

市原さん：あれが過去に戻らせないんですよ(笑)。

お三方：（爆笑）

綾部監督：この映画の音楽をやってくれてる沢田さんが最初に俺に連絡してきたのも、「あそこの市原さん最高でしたね～。振り返らなかったですね～」って(笑)。

新たなヴィラン、スパルタ樺沢先生登場

――今回は映画ということで、給食対決はもちろんですが、当然ヴィラン的な存在が必要になります。そこで片桐仁さん演じる樺沢先生です。短時間でちゃんと観客に「これは甘利田とぶつかるな」と思わせて、存在自体にパワーがありました。

綾部監督：市原くんと全く違う芝居のアプローチをするタイプの相手だったんで、演出側としてはスリリングでした。片桐さんからいろいろと提案してくれて、最初に脚本にあった人物像からさらに踏み込んだ人物になりました。片桐さんは教員免許も持っておられて、ご自身もすごいスパルタ教育を受けてきていて。

岩淵P：片桐さんの高校時代にものすごいスパルタの先生がいたらしくて、その先生を思い出しながらやればできるって。ほんとにすごかったですね。

綾部監督：前作の石黒賢さんの迫力とはまた違う、ガチンコ感のある対決になりましたね。

『おいしい給食』最大のチャレンジ

――今回、甘利田先生の「給食はおいしく食べるものだ」というセリフにもあるように、シリーズ最大のテーマ「おいしく食べる」ということに改めて向き合いましたね。

市原さん：このシリーズのテーマですよね。みんなが食べたくなるように、うまそうに食べることが最大の魅力なんだと思います。所作についても、お子様が見てたりしますから、知識を得られるようにちゃんと調べています。お箸の持ち方とかも、ちゃんとつゆにお箸をつけてから頂くとか。日本人ならではの給食という文化と歴史をちゃんと見つめて、食育と言うとおこがましいのですが、食べることが楽しくなるようなものでなければいけないと思っていたので。給食はおいしく食べる。それはシーズン1からずっと変わらない軸です。

綾部監督：今回の1番のチャレンジは、他校での給食シーンですね。おなじみである給食中の甘利田のモノローグをやめて、それを客観的に見せたらどうなるんだろう、ということでした。観ている人がシュールさに耐えられるだろうかとか、撮影当日まで自信がなかったんです。でも、シーズン1からずっと助監督をやってくれてる人が「これ面白いですね」って言ってくれて。なるほど、じゃあ客観だけでやっちゃおうと。そして途中から御園先生の目線に持ってけば、あの頃と今の私、みたいなことも表現できるなと。だから甘利田はどこでも、たとえ他校でもやるんです(笑)。

――他校なのにいつもの教員席に座ってましたね(笑)

綾部監督：なんでそこに座ってんのって話だからね(笑)。

岩淵P：当たり前のように座ってたね(笑)。

市原さん：違う学校なのに(笑)。

――市原さんはあのシーンの完成版を観ていかがでした？

市原さん：他校で食べるというのも含めて、今までにないシチュエーションでしたから。ものすごい違和感でした(笑)。ですが同時に、あのシーンは同じ教師という立ち位置の、似たもの同士が向きあって、それぞれがそれぞれの看板を背負って正義をぶつけ合うわけじゃないですか。あれを見て、改めて「甘利田ってすごく柔軟だ」と感じました。彼は堅物ではあるのですが、ちゃんと相手の気持ちを汲んで、なおかつ中立で。その上でみんなが思っていることを代弁してくれる存在ですよね。芝居していてすごく気持ちがいいですし、気持ちが入るんです。

――学校の子供たちに好かれるのがわかりますよね

綾部監督：頑固なんだけど、リベラルなんですよね。個人の自由を尊重する。頑固教師だけど保守じゃなくてリベラルという、実は新しい人物ですよね、甘利田は。そこが最大の魅力ですよね。

市原隼人＆綾部真弥の最強コンビ

――『おいしい給食 Road to イカメシ』の時のインタビューで、市原さんと綾部監督に「お互いを一言で例えるなら？」と聞いたところ、お互いを「同志」だとおっしゃってたんです。そんな『おいしい給食』最前線のおふたりは、プロデューサーの岩淵さんからどう見えていますか？

岩淵P：僕はキャスティングする段階から、市原さんと綾部監督は絶対に合うと思っていました。そこは最初から淀みなく「絶対合う！」と言えるぐらいの自信があったんです。だからふたりがこうなるなっていうのも想像していた通りでした。もし男女だったら、絶対もう付き合ってる。間違いなく(笑)。

市原さん＆綾部監督：（爆笑）。

岩淵P：このふたりのコンビネーションによる物語の作り方は想像以上でしたね。このふたりがいなければ『おいしい給食』はここまでのものになっていなかったでしょうし。でもなんか自信はあったんです。このふたりには。最初に監督に「市原くんで行きたい」って言った時はびっくりしてましたけど(笑)。

綾部監督：「え！やってくれるんすか？！市原隼人って、あの市原隼人ですよね」って(笑)

岩淵P：第一声がね(笑)。自分も市原さんとはこれが初めてなんですが、2007年の東京国際映画祭の時に『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』っていう作品で、市原くんが舞台挨拶してたんですよ。その時の市原くんのやんちゃというかパワーが凄くて、惚れてたんです。「こういう若者がいるのか、凄いな」って。いつか仕事したいなと思っていて、その後に別の監督の作品ですごくギャップのある役で出ているのを見て、「あ、これなら甘利田に合うかも」って思ったんです。

――すごいですよね。この作品に市原さんを持ってくるっていうのは。

岩淵P：最初はみんなびっくりですよ。配給の人もびっくりしてました。みんな「え？！ほんとに？」って。

――テレビで見てもビックリしました(笑)

綾部監督：「市原隼人なにやってんの？！」ですよね(笑)

岩淵P：ほかの俳優さんなら、たぶん普通に給食を食べてる感じになるなと思ったんですよ。でも市原くんなら何か化けるんじゃないかと。この人は絶対やらないよなっていう人にやってほしかったんですよね。

――逆に市原さんと綾部さんから見た岩淵さんはどういう存在ですか？

綾部監督：スーパーマンなんですよ本当に。プロデューサーなんですけど、すべて現場で起こったトラブルは、最終的に・・・

市原さん＆綾部監督：岩淵さんがいれば、何とかなる！

綾部監督：「すいません、車が故障しちゃいました」とか、「これが壊れちゃったんですけど」とか(笑)。僕は岩淵さんとは『おいしい給食』以外もたくさんやらせてもらってるんですが、最後は監督にも寄り添ってくれるというか。ただ「ダメだよ」ってシャットアウトするんじゃなくて、やりたいことができるにはどうしたらいいかを最大限考えてくれる。だから最後の最後に相談できるんです。この3人でいつも現場にいるんですが、それぞれ独立していて、それがちょうどいい緊張感というか。戦ってるところは3人とも違うんですよ。市原くんが戦ってる部分と、僕が苦しい部分と、岩淵さんが苦しい部分は全部違う。でもそれが1つになって『おいしい給食』という作品に繋がるんですよね。

市原さん：ほんとにどこまでも人間くさい方で。岩淵さんが持つ理念とか思いというものに、僕はすごく共感できるんです。当たり前のことなのですが、それを当たり前のように言えない方も多い中で、すごくいつも人間臭く、職人肌な人でいてくれる。こういう方と一緒にモノを作りたいなと、そう思わせてくれる器のある方です。必ず現場にいて、全てを端から端まで見ていて、そして責任感を持って作品を背負ってくれる人ってなかなかいないんです。岩淵さんの集めてくるスタッフのみなさんも、本当にすごく気持ちがいい方たちですし、心から尊敬してます。肩書きを外しても、この人たちと一緒にいたいと思えるような現場ですね。

『おいしい給食炎の修学旅行』は新宿ピカデリー他にて全国公開中！