MOVIE MARBIE

文：大西D（ヒカセン兼業ライター）

世界三大映画祭の一つ、第76回カンヌ国際映画祭の結果が発表された。最高賞のパルム・ドールを受賞したのはジュスティーヌ・トリエ監督の『Anatomy of a Fall』。夫の不審死を疑われた女性の裁判の行方と、唯一の証人となった視覚障碍者の息子の葛藤を描いた作品だ。

そして男優賞を受賞したのがヴィム・ヴェンダース監督作品『Perfect Days』に主演した役所広司。本作は東京・渋谷の公共トイレの清掃員・平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に映し出した作品だ。日本人で同部門を受賞したのは是枝裕和監督作品『誰も知らない』の柳楽優弥以来、史上2人目の快挙だ。

その是枝裕和監督最新作『怪物』は坂元裕二が脚本賞を受賞。是枝監督作品はカンヌ国際映画祭では既に数々の賞を受賞しているが、もちろん坂元裕二にとっては初の受賞だ。また同作はLGBTQを題材にした作品に贈られる独立賞の「クィア・パルム賞」も受賞している。

その他、第二次世界大戦中にアウシュビッツ強制収容所の所長を務めたルドルフ・フェルディナント・ヘスとその家族を描いたジョナサン・グレイザー監督作品『The Zone of Interest』がグランプリを、『ノルウェーの森』などを監督したトラン・アン・ユンが『The Pot au Feu』で監督賞を受賞。

『雪の轍』でパルム・ドールを受賞したヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作品『About Dry Grasses』のメルヴェ・ディズダルが女優賞を、名匠アキ・カウリスマキ監督最新作『Fallen Leaves』が審査員賞を受賞した。

近年カンヌ国際映画祭でパルム・ドールや各賞を受賞した作品はアカデミー賞にもノミネートされることが増えている。もしかしたら年末に再び彼らが話題になるかもしれない。

結果一覧は以下の通り。

パルム・ドール
★Anatomy of a Fall （ジュスティーヌ・トリエ監督）

グランプリ
★The Zone of Interest （ジョナサン・グレイザー監督）

監督賞
★トラン・アン・ユン 『The Pot au Feu』

男優賞
★役所広司 『Perfect Days』

女優賞
★メルヴェ・ディズダル 『About Dry Grasses』

脚本賞
★怪物 （監督：是枝裕和/脚本：坂元裕二）

審査員賞
★Fallen Leaves （アキ・カウリスマキ監督）

★大西Dの記事をもっと読む

・『エスター ファースト・キル』／本当に変なのはどっちだ！？思わず「そう来たか！」と驚く怪作が誕生！
・『シン・仮面ライダー』／庵野秀明が紡ぐのは“愛”か“怪奇”か。石ノ森章太郎の“魂”を継承した作品が遂にベールを脱ぐ！
・『仮面ライダーBLACK SUN』”生きている限り戦い続けろ”という強烈なメッセージ
・『ラスト・オブ・アス』お互いにとって残された「最後の一人」。傑作が静かに動き出す。
・『バルド、偽りの記録と一握りの真実』あなたのおうちはどこ？イニャリトゥがメキシコに帰ってきた！
・【第95回アカデミー賞】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞含む7部門受賞！！ミシェル・ヨーがアジア人初の主演女優賞を受賞！
・【第95回アカデミー賞】今年は誰がオスカー像を手にする！？映画祭ウォッチャーが第95回アカデミー賞受賞予想！
・【第95回アカデミー賞】巨匠たちの悲しき記録！？アカデミー賞で10以上ノミネートされたのに無冠に終わった作品たち