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今年は誰がオスカー像を手にする!?映画祭ウォッチャーが第95回アカデミー賞受賞予想!

毎年この時期が近付くとそわそわする。アカデミー賞の授賞式が近づくからだ。日本人にとって1年の締め括りというのは12月か3月だが、私はこのアカデミー賞授賞式が1年の締め括りとなり、今年で15年。

迫る1年で最大の大イベント「アカデミー賞授賞式」!!今年もゆる~く受賞予想していきます!

文:大西D(ヒカセン兼業ライター)

■作品賞

『フェイブルマンズ』(7部門ノミネート)

『エルヴィス』(8部門ノミネート)

『西部戦線異状なし』(9部門ノミネート)

『逆転のトライアングル』(3部門ノミネート)

『イニシェリン島の精霊』(8部門9ノミネート)

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2部門ノミネート)

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(4部門ノミネート)

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(10部門11ノミネート)

『トップガン マーヴェリック』(6部門ノミネート)

『TAR ター』(6部門ノミネート)

★大西Dが予想!

受賞予想:『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

対抗馬:『イニシェリン島の精霊』

大穴:『トップガン マーヴェリック』

今年無類の強さを見せているのは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だ。A24作品初の興収1億ドル突破作品で、前哨戦でも無類の強さを誇っていた。ゴールデン・グローブ賞こそ逃したものの、アメリカ製作者組合賞と、アメリカ映画俳優組合賞のアンサンブル賞を受賞。しかもこの部門だけに限らず監督賞や演技部門でも他の作品の追随を許さない圧倒的な強さ。まさに「2022年を代表する映画」がこの映画だ。確かにこれまでのアカデミー賞作品賞受賞作とはタイプの違う映画だし、オスカーの歴史から考えれば「アカデミー賞向きの映画」では無い。それでも歴史はいつか変わるもの。近年何かと重要視されている“多様性”にもマッチしている。受賞最短距離だ。

同じく前哨戦で強かった『イニシェリン島の精霊』だが、ここに来て一気に差を付けられてしまった感。ゴールデン・グローブ賞受賞までは良かったが、そこから勢いを伸ばすことが出来なかった。

ビッグサプライズがあるとしたら『トップガン マーヴェリック』かもしれない。コロナによって客足が遠のいた映画館を間違いなく救った映画だし、映画界に貢献したという意味では他のどの作品よりも相応しいだろう。受賞する可能性はかなり低いが、それを期待したくなるほど、多くの映画ファンに愛された作品とも言えるだろう。

 

■監督賞

スティーブン・スピルバーグ 『フェイブルマンズ』(2年連続9回目)

ダン・クワン、ダニエル・シャイナート 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(初ノミネート)

マーティン・マクドノー 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)

トッド・フィールド 『TAR ター』(初ノミネート)

リューベン・オストルンド 『逆転のトライアングル』(初ノミネート)

★大西Dが予想!

受賞予想:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

対抗馬:スティーブン・スピルバーグ 『フェイブルマンズ』

大穴:リューベン・オストルンド 『逆転のトライアングル』

作品賞同様、この部門も『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダン・クワン、ダニエル・シャイナートのコンビ監督が前哨戦を爆走し、組合賞も危なげなく受賞。作品人気も絶大で、そんな彼らが今年の堂々たる大本命と言えるだろう。まだまだキャリア的には浅い彼らだが、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を監督した彼らの受賞に異を唱えるものはいないはずだ。

対抗馬はスピルバーグか。『フェイブルマンズ』は彼の体験が多く映画に盛り込まれた、まさにスピルバーグの自伝的映画とも言える作品で、ゴールデン・グローブ賞を受賞した。しかし、さしものスピルバーグでもエブエブの監督コンビを前に受賞は難しいか。何より、彼は既にこの部門を2度も制している。『フェイブルマンズ』が圧倒的な勢いで賞レースを牽引していたならまだしも、そうではない状況であるなら厳しそう。とは言えまだまだ制作意欲の衰えはなさそうなので、またその内ノミネートするのではないかと勝手に思ってる。マクドノーとフィールドは、今年はノーチャンスだろう。ただし、2人とも今回が初ノミネートだが、それは遅いぐらい。彼らのノミネートは映画ファンとしては凄く嬉しい。

大穴としてはリューベン・オストルンドを予想。昨年のカンヌを制した監督で、監督作品が2作品連続でパルム・ドールを受賞した今注目の監督だ。前哨戦では全く目立たなかったが、まさかの候補入り。受賞はほぼ無いかも知れないが、「まさかの」を起こせるとしたら彼な気がする。

 

■主演男優賞

ブレンダン・フレイザー 『ザ・ホエール』(初ノミネート)

コリン・ファレル 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)

ポール・メスカル 『aftersun アフターサン』(初ノミネート)

ビル・ナイ 『生きる LIVING』(初ノミネート)

オースティン・バトラー 『エルヴィス』(初ノミネート)

★大西Dが予想!

受賞予想:ブレンダン・フレイザー 『ザ・ホエール』

対抗馬:オースティン・バトラー 『エルヴィス』

大穴:ビル・ナイ 『生きる LIVING』

近年かなり珍しい、全員が初ノミネートという今年だが、前哨戦の段階ではコリン・ファレルとブレンダン・フレイザーの一騎打ちという状態だった。それがゴールデン・グローブ賞ではオースティン・バトラーも加わって三つ巴の争いとなったわけだが、ブレンダン・フレイザーが俳優組合賞を制したことで、頭一つ抜けた予感。『ハムナプトラ』シリーズでお馴染みの彼だが、久しくスクリーンで彼の姿を見ていなかった。そして久々に彼の名前を聞いたと思ったら体重270キロの男の役!見た目の強烈なインパクトはもちろん、その演技も絶賛を呼び、見事ノミネートを果たした。俳優をカムバックさせることに定評のあるダーレン・アロノフスキー監督作品で、遂にオスカーまであと一歩に迫った。

ただし、フレイザーには大きな懸念点がある。それは対象作『ザ・ホエール』が作品賞にノミネートされていないということだ。実はここ10数年、主演男優賞は作品賞ノミネート作品から出ている。最後に作品賞候補作品以外でこの部門を制したのは第82回のジェフ・ブリッジスまで遡らなければいけない。そこがどうなるかは気になるところだ。

対抗馬はオースティン・バトラーと予想。ゴールデン・グローブ賞受賞後、勢いが増した予感。何と言ってもあのエルヴィス・プレスリーを見事に演じきってみせた。実在の人物というのはオスカーに好かれやすい役柄でもある。コリン・ファレルは少し勢いが落ち着いてきた予感だ。

大穴はビル・ナイだ。恐らく今回最もノミネートされて嬉しかった俳優ではないだろうか。大作からドラマまで幅広く活躍してきた英国紳士のノミネートは多くの映画ファンには嬉しい出来事だろう。しかもあの黒澤明の『生きる』のリメイク版だ。なお、まだ若いポール・メスカルは今回はノーチャンスだろう。彼は『グラディエーター』続編の主演に抜擢されているので、そちらに期待したい。

 

■主演女優賞

アナ・デ・アルマス 『ブロンド』(初ノミネート)

ミシェル・ウィリアムズ 『フェイブルマンズ』(6年ぶり5回目)

ミシェル・ヨー 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(初ノミネート)

ケイト・ブランシェット 『TAR ター』(7年ぶり8回目)

アンドレア・ライズボロー 『To Leslie』(初ノミネート)

★大西Dが予想!

受賞予想:ミシェル・ヨー 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

対抗馬:ケイト・ブランシェット 『TAR ター』

大穴:アンドレア・ライズボロー 『To Leslie』

実は今回のオスカー、演技部門で過去に受賞経験があるのはケイト・ブランシェットただ一人。当初はそんな彼女が3度目のオスカーを受賞するという予想が強かったが、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が勢いを増すたびに、ミシェル・ヨーがどんどんと迫っていき、ゴールデン・グローブ賞を受賞。そして遂に映画俳優組合賞でもミシェル・ヨーが受賞し、一気にこの部門のフロントランナーになった。『グリーン・デスティニー』や『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』で有名なってから20年以上の時が経ち、誰もが予想しなかったアカデミー賞ノミネートを獲得した。ちなみに彼女がこの部門を制したら、アジア系女優としては初の快挙となる。多様性を後押しするハリウッドの傾向も追い風となっている。

対抗馬はケイト・ブランシェット。映画俳優組合賞こそ逃したが、実はミシェル・ヨーとの差はそこまで無いと思っている。というものの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は大量受賞の可能性が有る作品であるのに対して、恐らくではあるが、『TAR ター』の支持票はケイト・ブランシェットに流れ込む可能性が高い。確かに彼女は既にオスカーを2度手にしているが、ブランシェットであれば3つ目を手に入れたとしても全く不思議はないだろう。ミシェル・ヨーとケイト・ブランシェットはかなりの接戦だと思う。

大穴は突如としてノミネートを果たしたアンドレア・ライズボロー。彼女の演技は多くの女優から絶賛を得ていたが、まさかノミネートを獲得するほどだったとは。彼女のキャリアにとって間違いなくハイライトとなっただろう。ウィリアムズとアルマスは今回はノーチャンス。ちなみにアルマスは対象作がラジー賞に8部門ノミネートされたにもかかわらず候補入りを果たした。凄い。

 

■助演男優賞

キー・ホイ・クァン 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(初ノミネート)

ブレンダン・グリーソン 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)

ジャド・ハーシュ 『フェイブルマンズ』(42年ぶり2回目)

バリー・コーガン 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)

ブライアン・タイリー・ヘイリー 『その道の向こう』(初ノミネート)

★大西Dが予想!

受賞予想:キー・ホイ・クァン 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

対抗馬:なし

大穴:なし

今年最も予想が簡単なのはこの部門。前哨戦の結果、対象作の勢い、近年のオスカーの傾向、このどれをとってもキー・ホイ・クァンが受賞することになるだろう。『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』や『グーニーズ』では子役として出演し、その後長らく映画出演は止まっていたが、復帰2作目でまさかの大ブレイク。前哨戦のほぼ全てを勝利したと言っても過言ではない。ミシェル・ヨー演じる主人公の夫を演じた彼もまた、多くのファンと、映画人に愛された。もうオスカー像はほぼ手中に収めたと言っても良いだろう。

 

■助演女優賞

ケリー・コンドン 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)

アンジェラ・バセット 『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』(29年ぶり2回目)

ステファニー・スー 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(初ノミネート)

ホン・チャウ 『ザ・ホエール』(初ノミネート)

ジェイミー・リー・カーティス 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(初ノミネート)

★大西Dが予想!

受賞予想:アンジェラ・バセット 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

対抗馬:ケリー・コンドン 『イニシェリン島の精霊』

対抗馬:ジェイミー・リー・カーティス 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

大穴:ステファニー・スー 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

今年最も予想が難しい部門。前哨戦ではステファニー・スーとジェイミー・リー・カーティスが批評家賞で勝利の山を築いていたが、ゴールデン・グローブ賞とブロードキャスト映画批評家協会賞を受賞したのはアンジェラ・バセットだった。なのでなおのこと映画俳優組合賞の結果が重要になってくる。そしてそれを制したのはジェイミー・リー・カーティスだった。

まずノミネート5人の内ホン・チャウ以外の4人にはそれなりに受賞の可能性が有ると思う。

もちろん組合賞に候補入りしたジェイミー・リー・カーティスを受賞予想にしたいのだが、彼女の場合は何と言っても同じ部門に、共演者のステファニー・スーがいる。どうしたって票が割れるはずだ。しかも組合賞はジェイミー・リー・カーティスが勝利したとはいえ、前哨戦で注目されていたのはむしろステファニー・スーだし、何なら彼女の演技の評価の方が高いという声もある。

そうなると必然的に浮かんでくるのはやはりアンジェラ・バセットだろう。息子を失った母親役であり、主人公であるチュリの母親。主人公の母親というのはこの部門が最も好む役柄でもある。何よりも息子を演じた亡きチャドウィック・ボウズマンが受賞を逃したことを考えたら、その時の追悼コーナーで彼の名前を読み上げた彼女がオスカー像を手にするというのは多くの映画ファンが見たい光景でもあるだろう。また女優陣では唯一のアフリカ系の女優で、そういった面でも票は集まりやすい。

ケリー・コンドンもまた、エブエブの2人の票が割れて浮上する可能性が有る。彼女の場合はアンジェラ・バセットと異なり何と言っても対象作品が強力だ。知名度はまだまだかもしれないが、重要な批評家賞でも勝利をしているし、彼女が受賞しても全く不思議はない。

 

さて、一体誰が、どの作品がオスカー像を手にし、その歴史に名を遺すのか。第95回アカデミー賞授賞式は日本時間3月13日に開催。

 

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