「小津映画とジブリ映画を混ぜたような映像体験」オダギリジョーが絶賛する日台合作『妖怪、化物をひろう』東京国際映画祭Q&Aレポート【第39回東京国際映画祭】
オダギリジョーがプロデューサーを兼ねて出演し、名優・余貴美子が主演を務めた池田暁監督の最新作『妖怪、化物をひろう』が、開催中の第39回東京国際映画祭コンペティション部門に選出され、10月28日(水)にヒューリックホール東京にてワールドプレミア上映と舞台挨拶・Q&Aが実施された。ステージには池田監督、余、オダギリをはじめ、白石隼也、チェン・シュウテイン、ウェン・ユウミン、プロデューサーのチュウ・ヨウニン、小坂史子が登壇。前日27日(火)に台湾文化センターで行われたプレミアムトークイベント「金門島×ハル×キャスト プレミアムトーク」のエピソードも交え、独自の表現手法や撮影の裏側が語られた。
本作は、かつて嵐で壊滅的な打撃を受けた町を舞台に、焼き団子を売りながら孤独に暮らす老婦人タエが、雑木林で拾った人間とは思えない奇妙な生き物の赤ん坊を“ハル”と名付け、大切に守り育てようとする姿を描いた日台合作のヒューマンドラマ。1990年代にロシアで「老夫婦がエイリアンのような赤ん坊を拾って育てた」という実際の出来事から着想を得ており、祖先信仰や風獅爺文化など独自の歴史と信仰が息づく台湾・金門島で全編ロケが敢行された。
舞台挨拶の冒頭、池田監督は製作が中断しかねない局面を何度も乗り越えてきたことを振り返り、「完成して、東京国際映画祭で上映させていただけることを大変光栄に思います」と挨拶。主人公タエを演じた余貴美子は「お客さまがいらしてくださって、ほっとしています。妖怪ババアを演じさせていただきました」とユーモアを交えて客席を和ませ、この日は劇中で命を宿した赤ん坊“ハル”も一張羅の着物姿で客席の前に姿を見せた。生真面目な警官・小宮役を演じたオダギリジョーは「こういう珍しいタイプの映画を、東京国際映画祭で上映してもらえることが非常にうれしい」と選出を喜んだ。俳優として出演しながらハルの操演代表も務めた白石隼也は、作品への参加を通じて「愛でる存在を見つけることの大切さを感じた。映画が皆さんにとって愛でる存在であり続けたらいいなと思います」と語り、金門島出身で本作の製作協力や出演も担ったチェン・シュウテイン(まる子)、共演のウェン・ユウミンも観客へ感謝の想いを伝えた。
上映後のQ&Aで、池田監督は本作の原点について「1996年にロシアで老女が奇妙な子どもを拾って育てたとされる出来事を知り、人間ですらない存在に愛情を持って育てる人間の愛情の広さに興味を抱いた」と制作動機を明かした。プロデューサーとしても名を連ねるオダギリは、約20年の親交があるプロデューサーの小坂史子から声をかけられたことがきっかけだったと回想。池田監督の過去作を観て衝撃を受けたとし、「めちゃめちゃ面白いんですよ! この2020年代の日本映画に、まさかこういうタイプの作品を作る方が残ってくれているとは。小津映画とジブリ映画を混ぜたような、気持ちのいい空間というか、映像体験でした」と手放しで絶賛。さらに「今の時代、こういう作品を作るのは難しいし、お金も集まらない。何かしら協力できることで、稀有な才能を世の中に広げられるならと参加しました。プロデューサーという立場を利用するというよりは、僕を利用してもらえればっていう気持ちでした」と熱い信頼を吐露した。
撮影現場のエピソードとして、余貴美子はハルについて「大御所なんです。スタッフが手袋をして丁寧に扱っていて、私なんておざなり(笑)。ポスターだってハルちゃんのアップですから、やきもちを焼くくらい大事にされていました」と笑わせつつ、「実体のあるハルと金門島の美しい風景の中に身を置き、せりふを言うだけで監督のワンダーランドに入れた、幻のような撮影でした」と振り返った。池田監督によると、ハルの造形は頭部が約6個、体も5〜6個用意され、脱皮の場面など状況に応じて使い分けられたが、会場に連れてこられた個体が本編の約8割を担ったという。
前日27日のプレミアムトークでも明かされた通り、造形を担当した百武朋氏が「可愛い」と「怖い」の絶妙なバランスを追求して頭部を大きく体を小さくデザインし、表情のパーツや呼吸、目の動きに至るまで細工が施された。このハルを動かすため、白石をはじめ最大5人の操演スタッフがベッドや机の下に潜り込み、砂や埃まみれになりながら息を合わせて生命を吹き込んだ。白石は「ただの人形として扱わず、ひとりの俳優として感情や目的を共有して演じた」と語り、池田監督もCGではなく実体のパペットにこだわった理由として「老婆とハルの愛情を描く物語だからこそ、愛する対象が実際に触れられる存在であることが重要だった」と強調した。余も「だんだん本当に生きているように見えてきて、おならもするし、脱皮もするし、人間になっていくようでした」と深い愛着をにじませた。
ロケーションについて池田監督は、「特定の場所ではなく、架空の場所と時代を描きたかった」と説明。日本国内ではなく金門島を選んだ理由として「昔ながらの建物や集落が色濃く残り、セットを建てずともどこを切り取っても絵になる独特の風景があった」と語り、言語もあえて4種類ほど混在させることで無国籍な空気感を創出したという。最後に俳優としての芝居のアプローチを問われたオダギリは、「小栗康平監督から『表情やせりふで感情を説明せず、観客に想像してもらいたい』と言われた経験があり、観客に答えを渡し切らないことの大切さを学んだ。説明的な芝居をするのは簡単だが、いかにゼロに近づけ、芝居を無にしていくかが一番難しい。池田監督もそうした表現を求める方であり、余さんもこの作品で多くを表現しすぎない最高の着地点を見つけられていた。それこそが池田作品の一番の魅力だと思います」と締めくくり、会場は温かな拍手に包まれた。
『妖怪、化物をひろう』
2026年12月25日(金)シネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開
【キャスト】
余貴美子、ハル、オダギリジョー、リウ・グァンティン、Leo王(リオ・ワン)、きたろう、片桐はいり、白石隼也、佐藤菫 ほか
【スタッフ】
監督・脚本:池田暁
プロデューサー:チュウ・ヨウニン、小坂史子、オダギリジョー
スペック:2026年/日本・台湾合作/日本語・中国語/108分/ビスタサイズ/カラー/5.1ch/G 英題:The Canary’s Lullaby
配給:ハーク
配給協力:フリック
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公式サイト:hark3.com/youkai/
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