「この作品を埋もれさせてはいけない!」宇野維正が熱く語る!映画『スティルウォーター』トークイベントレポート
マット・デイモン主演最新作
『スティルウォーター』
「この作品を埋もれさせてはいけない!」
映画ライター宇野維正が熱く語った映画トークイベントレポート!
マット・デイモン主演のサスペンス・スリラー『スティルウォーター』の試写会が1月6日(木)に渋谷のユーロライブで実施。その上映後に映画ライター宇野維正氏によるトークショーが行われた。昨年カンヌ国際映画祭にてプレミア上映され大絶賛の評価を得た本作について、「素晴らしい作品にも関わらず、アメリカで公開された際(昨年夏)はコロナ禍で完全にお客さんが戻り切っていないというタイミング。そんな不運な状況にあり、これは是非応援しないと!という思いです」と語った。
本作の主演マット・デイモンについて、「いまマット・デイモンは何度目かの全盛期にある!ですが、世の中は気づいていないんですよ!昨年公開の『最後の決闘裁判』もアメリカで興行的には不遇で、どうしても結果が出ないと賞レースでも不利になってしまう。本当だったらもっと“やっぱりマット・デイモンすごい!”という声があがるべきタイミングだと思います」と『最後の決闘裁判』での粗野な女性の心が理解できていない騎士役や『スティルウォーター』での典型的なアメリカ人労働者役を説得力のある演技と高く評価した。
そんなマット・デイモンが本作で演じる主人公ビル・ベイカーについて「彼の地元であるオクラホマ州は最近の大統領選でもトランプ支持者が多かった州でして、本作中でもビルはトランプ支持派ということが示唆されている保守層の男性」と語り、続けて「また、ビルの協力者となる現地の女性ヴィルジニーはフランス・マルセイユの演劇人で典型的なリベラリスト。この2人の交流やすれ違い、理解と断絶…実は本作の比重はそこにあるんですよね。娘が留学先で罪に問われ拘留されてしまい、真犯人は誰なのか?本当に冤罪なのか?刑務所から出ることが出来るのか?というサスペンスの縦軸と、アメリカの保守派とヨーロッパのリベラル派の関係性という横軸、この2つの軸を見事に映画化しているんです!」と熱弁した。
本作の撮影監督は日本人である高柳雅暢が務めている。それについて宇野は「ハリウッドの第一線で活躍されている日本出身の方の筆頭ですよね。本作では、米・スティルウォーターのパートでは引きの画が多く、仏・マルセイユのパートではハンディカメラを用いてカット割りも多め。このように舞台となる場所によって撮影方法を変えている。先程話した縦軸・横軸の他にも手法的に緻密な事をしているんです」と語った。
最後に、監督を務めたトム・マッカーシーに関して「不思議な人ですよね。『スポットライト 世紀のスクープ』でアカデミー賞を受賞した後はNetflixの『13の理由』のプロデューサー・演出も何本か務めていたり、ディズニープラスで子供向けの映画『名探偵ティミー』を撮っていたり、所謂”アカデミー賞受賞監督”に求められるような大きな作品だけでなく、元々彼が役者ということもあるのでしょうが、色んな世界に飛び込んで自分の好奇心・探求心に忠実の赴くまま常に新しい環境で作品を作り続けていて、今後もどのような形で作品を作っていくのか読めないところがある。これまでのアカデミー賞受賞後の監督のムーブとは全然違った動きをしていて僕はそれを非常に好ましく思います」と豪語。
「マット・デイモン同様、トム・マッカーシーも評価が見合っていない感じがするんですよ!こんな良い作品を埋もれさせたくないので、皆さんも是非ご協力を!」と締めくくった。
映画『スティルウォーター』は1月14日より公開。
【ストーリー】
留学先の仏マルセイユで殺人罪で捕まった娘アリソンの無実を証明すべく、米オクラホマ州スティルウォーターから言葉も通じない異国の地へ単身渡ったビル。現地の協力者を得るも、ほとんどの地元民はよそ者のビルに口をきこうともしない。何者かの襲撃を受けるなど自らの身にも危険が迫る中、ビルはわずかな手がかりを頼りに前進していくが……。
【作品概要】
出演:マット・デイモン、アビゲイル・ブレスリン、カミーユ・コッタン、リル・シャウバウ、イディル・アズーリほか
監督・脚本:トム・マッカーシー『スポットライト 世紀のスクープ』
脚本:マーカス・ヒンチー、トーマス・ビデガン『預言者』『君と歩く世界』、ノエ・ドブレ『ディーパンの闘い』
撮影監督:高柳雅暢『荒野の誓い』『ファーナス/訣別の朝』
2021年/アメリカ/カラー/デジタル/ビスタサイズ/英語・フランス語/
原題:STILLWATER/映倫G/
字幕翻訳:松浦美奈
配給:パルコ ユニバーサル映画
© 2021 Focus Features, LLC.
公式HP:https://www.universalpictures.jp/micro/stillwater
2022年1月14日、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開