【終戦記念日特集】学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち③/「ダンケルク」と「パール・ハーバー」のつながり。映画『ダンケルク』『ウィンストン・チャーチル』』解説
8月。終戦記念日。
どうも日本人にとって戦争というのは、ある種のセンチメンタリズム(感傷主義)でしか語ってはいけない感じですよね。しかも、まず「もうしません」みたいな反省からはいる感じで気が重い。
高校の授業で20世紀の世界大戦を学ぶ時間もほとんどない。3学期のギリギリに複雑で政治的な匂いもある戦争なんて、先生もちょっと避けて通りたいのかもしれない。そうなると多くの日本人はテレビ番組のイメージで戦争を捉えてしまう。つまりセンチメンタリズムですね。焼野原の東京や広島・長崎の悲惨な姿や、アジアの国々の「被害者」からの怨嗟の声。
「戦争というのは嫌なものだなぁ」
つらいんで大体の人の思考はそこでストップしてしまいます。
それでいいんでしょうか?考えてみてください、これは特筆すべき人類の歴史です。戦争は政治も経済も社会も、人材も科学も一箇所に力を集中しますので、多くの先鋭的な結果を残します。インターネットや携帯、GPS、電子レンジなど現代を支配している文明が、図らずも戦争から生み出さたれたように、戦争の事実から学べることがもっとあるような気がします。
その中には「どうしたら戦争にならないか」も含まれていることでしょう。
今回は、終戦記念日企画として、「第二次世界大戦の真実」特別講義!
学校の授業、普通に接しているマスコミでは決して触れない角度から第二次世界大戦を解説!秘められた歴史の真実から、8月みるべき映画を特集してみます!
学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち③
「ダンケルク」と「パール・ハーバー」のつながり
映画『ダンケルク』『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』解説
何故、真珠湾攻撃なのか?
さて、1941年12月8日、真珠湾(パールハーバー)攻撃をもって、日米戦争の火ぶたが切って落とされるわけですが、まず何で日本の領海から全く離れたハワイの真珠湾なのか考えてみましょう。
日本が南方政策を打ち出し東南アジアに進駐すると対米英関係が急速に悪化、対米交渉をするものの向こうの外務大臣に相当するハル(男です)国務長官は「日本は中国大陸から出ていけ」とのことで全く譲歩の余地はなく、日本は開戦を決意するに至ります。
日本が欲しいのはスマトラ島の石油。採掘して石油を日本に運んでくる途中、気になるのはアメリカ領のフィリピンですね、必ず攻撃を受けるだろうと。日本の生命線を守るためにどうしたらいいか?それなら米国の太平洋司令部があり、艦隊がまとまって係留されているハワイを叩くのがいい。1年くらい米海軍は行動不能に陥るから、その間に石油を大量に持ってこようということなります。海軍の感覚は前線というものがないのでわかりづらいんですが、だいたいそういうことです。しかも、日本海軍にはゼロ戦をはじめとした航空機と、それらを長駆運ぶための基地「空母」を6隻も持っていました。これは当時世界最大規模です。司令長官山本五十六はこれらを駆使して新しい海軍戦術を実行しようとしていました。
ヒトラーの野望とチャーチルの登場
ところがこの真珠湾攻撃、背景に目を転じると全く違った風景が見えてくるのです。ヨーロッパといえばその前年(40年)は、ナチスドイツが遂にフランス、イギリスに牙をむき、一気にパリを落としたしまった年です。ポーランド侵攻の際、とりあえず宣戦布告をしたものの、悠長に構えて何もしなかったチェンバレン英首相の“宥和政策”が地に堕ちたのです。この段階で英国のリーダーとなった男があのウィンストン・チャーチルですね。彼はいきなりピンチに遭遇します。フランスのダンケルクという大西洋に面した浜辺で40万もの英仏軍がドイツ軍に包囲されて危機的な状況。彼はこれをドーバー海峡を越えて回収するための撤退作戦を指揮します。
映画としては『ダンケルク』『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』がこの辺りの状況を伝えています。エンタメとして人間ドラマとして、この二作品は秀逸で、何より胸アツです。特に『ダンケルク』は、ノーラン演出による「空」「海」「陸」の視点、別々の視点と時間軸が撤退の一点に集約していく感じの高揚感はただならぬものがあります。
ギリギリの選択を迫られる、撤退モノはおもしろいんですね。
その後休む暇もなく、今度はドイツ空軍が飛来し、ロンドン市街が空襲されます。ロンドンが空襲されたのは歴史上初めてのことではないでしょうか?迎え撃つ英国空軍との空の死闘が始まります。ロンドン市民たちは地下鉄に避難して、真っ暗な闇の中で響く爆発音に耐えました。こうなると逆にイギリス人は「ナチスドイツには絶対負けない」ということで腹がすわり、チャーチル以下イギリスは一個にまとまります。映画『チャーチル』も死中に活を見出すブレないリーダーを中心にまとまるイギリス国民の姿が心にびんびん響いてくる映画となってます。
世界大戦のカギは、ダンケルクからパール・ハーバーへ
ですが、元軍人のチャーチルはヒトラーのナチスドイツがどれほどの力をもっているかわかっています。
「ナチスドイツを止められるのは、アメリカだけだ。」
第一次世界大戦以降、世界最大の工業力を持った国アメリカですが、ヨーロッパ情勢に振り回されて、自国の若者を異国の戦場で死なせたくないという意見が大半だったのです。
「ファシズムとの戦いは正義の戦い、これは世界の危機なのだ」
と懇願するチャーチル首相に、フランクリン・ルーズベルト米国大統領はいいます。
「武器や物資は提供しましょう。だが参戦するのは議会が許さない。米国は民主主義国家ですから」
実はルーズベルト大統領は風前の灯のイギリスに手を差し伸べたかった、ドイツではユダヤ人が大量に殺されているという情報も入ってきており、ユダヤ人が多い米国の政財界でも出兵を促す声は大きくなっていました。だが彼は「戦争しない」という公約で大統領になったのです。民主政治のややこしさですが、だからルーズベルトには、米国には、決定的な「何か」が必要だった。その「何か」は東側にあった。中国大陸で迷走している、日本という国だったのです。そう、「ダンケルク」と「パール・ハーバー」はつながっているのです。
※次の記事を読む➡『トラ・トラ・トラ!』 第二次世界大戦の分岐点、パール・ハーバー 米国のフラットな史観の中で堪能するド迫力「クロサワ」映画
『ダンケルク』(2017)
出演:フィン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン ほか
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス クリストファー・ノーラン
撮影:ホイテ・バン・ホイテマ
音楽:ハンス・ジマー
視覚効果監修:アンドリュー・ジャクソン
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017)
出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ
監督:ジョー・ライト
脚本:アンソニー・マッカーテン
撮影:ブリュノ・デルボネル
音楽:ダリオ・マリアネッリ
特殊メイク/ヘア&メイクデザイン(ゲイリー・オールドマン):辻一弘
配給:ビターズ・エンド、パルコ
(C)2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
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