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【終戦記念日特集】学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち④/『トラ・トラ・トラ!』 第二次世界大戦の分岐点、パール・ハーバー 米国のフラットな史観の中で堪能するド迫力「クロサワ」映画

8月。終戦記念日。

どうも日本人にとって戦争というのは、ある種のセンチメンタリズム(感傷主義)でしか語ってはいけない感じですよね。しかも、まず「もうしません」みたいな反省からはいる感じで気が重い。
高校の授業で20世紀の世界大戦を学ぶ時間もほとんどない。3学期のギリギリに複雑で政治的な匂いもある戦争なんて、先生もちょっと避けて通りたいのかもしれない。そうなると多くの日本人はテレビ番組のイメージで戦争を捉えてしまう。つまりセンチメンタリズムですね。焼野原の東京や広島・長崎の悲惨な姿や、アジアの国々の「被害者」からの怨嗟の声。

「戦争というのは嫌なものだなぁ」

つらいんで大体の人の思考はそこでストップしてしまいます。
それでいいんでしょうか?考えてみてください、これは特筆すべき人類の歴史です。戦争は政治も経済も社会も、人材も科学も一箇所に力を集中しますので、多くの先鋭的な結果を残します。インターネットや携帯、GPS、電子レンジなど現代を支配している文明が、図らずも戦争から生み出さたれたように、戦争の事実から学べることがもっとあるような気がします。
その中には「どうしたら戦争にならないか」も含まれていることでしょう。

今回は、終戦記念日企画として、「第二次世界大戦の真実」特別講義!
学校の授業、普通に接しているマスコミでは決して触れない角度から第二次世界大戦を解説!秘められた歴史の真実から、8月みるべき映画を特集してみます!

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち④

『トラ・トラ・トラ!』
第二次世界大戦の分岐点、パール・ハーバー
米国のフラットな史観の中で堪能するド迫力「クロサワ」映画

真珠湾の米国海軍に、その強さをみる。
82年前、日米戦争の発端となった、映画でも有名なハワイのパールハーバー(真珠湾)にある米国の戦争記念館の展示の中で一番目立つのは日本の戦闘機「ゼロ戦」と空母「赤城」です。

奇襲攻撃をされた憎き日本軍を蔑むならわかりますが、米軍はこれを展示のメインとしています。場内の解説を読むと「帝国主義の時代、アジア大陸での利権をめぐって2つの国が戦争に至った」と、どうもイコールな目線で不思議な感じがしますが、「日本の山本(五十六)提督は海軍の戦いの主役を戦艦から、飛行機と空母へと切り替えた。パールハーバーはひとつの敗戦ではなく、その時代を変えたを象徴的な戦いだった」と締めくくります。

つまり、ここは米海軍にとっての大きな反省の博物館なんですね。反省と言ってもセンチメンタリズムではありません。多くの米軍の兵器の中でゼロ戦と赤城がメインで展示されているのは、「敵ながらアッパレ」も多少あるでしょうが、何より戦争を変えたエポックに対する冷徹な賛美そのものです。実際、この地での反省を元に、米海軍はその後飛行機と空母を作りまくって日本軍を圧倒します。逆に日本の方が戦艦・大和なんかにこだわって弱体化していく。勝ってるときも、負けてる時も事実【ファクト】を見たがらない、というのが日本人の姿勢になっています。何とこれは現代にいたるまでです。

ちなみに、パールハーバーの戦争記念館では「日本の攻撃による米軍の戦死者は約2400名、民間人の死亡は68名、そのほとんどが友軍誤射によるもの」と書いています。日本海軍は米民間人を攻撃対象にしなかったと敵が証明してくれているのは驚きます。中国だったらこうはいかないでしょうね。

超弩級エンタメ『トラ・トラ・トラ!』はやっぱり、クロサワ映画だった
また、アメリカは軍事大国だけあって、「戦う者の心」を分かっている人も多いし、そういうエンタテインメントがあったりします。敵味方を超えた、戦う者同士のシンパシーというのがあるんですね。クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』『父親たちの星条旗』や、ベトナム戦争を扱った『ワンス・アンド・フォーエバー』なんかとっても敵(と言っても実際に戦っている兵士に限定されますが)に対するシンパシーをかんじます。そのはしりが真珠湾攻撃を扱った『トラ・トラ・トラ!』だと思います。

『トラ・トラ・トラ!』という題名は真珠湾攻撃時、日本の攻撃隊が母艦に送信した奇襲攻撃成功を伝える電信の暗号略号「トラトラトラ(『ワレ奇襲二成功セリ』の意)」に由来します。本作は制作費100億円などと言われ、日本人にはもちろん当時の米国人にも考えられないような大作でした。実際、空母からゼロ戦が実際に飛び立っていくシーンは米海軍の本物を使ってますので(空母はヨークタウン、ゼロ戦はグラマン・テキサンが似ていたのでそれを使った)、大スクリーンでみると迫力が半端ないわけで、それまで日本人が邦画の「戦争映画」で観ていた円谷英二のミニチュア・ゼロ戦とまるで違う。カルチャーショックだったわけです。

20世紀FOXはこの映画をそれまでのハリウッド映画とは違い、米軍は英語、日本軍は日本語という描き方をしましたし(それって普通じゃんと思うかもしれませんが、未だにハリウッドは英語を話すロシア人、アラブ人みたいなのはよくやりますよね)、米国パートはアメリカ人、日本パートは日本人監督に作らせようとしました。そのあたりの考え方から俯瞰で戦争という史実を見つめる映画というコンセプトもわかると思います。監督が二人なんて、くっつけたからバラバラな印象なんじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、全くそんなことない、日米両方のパートがリズムよく連なって観れますし、むしろ日本海軍のピシリとした雰囲気に対して、アメリカのなんとなくカジュアルな(ある種だらしない)雰囲気が対比的で、その後の展開の伏線にもなっており、とても楽しめます。特に映画の冒頭、戦艦長門(ながと)甲板で、新任の連合艦隊司令長官、山本五十六を迎える登舷礼(とうげんれい)のシーンはずらりと海軍の白い正装で水兵と将校が居並び、壮観です。このシーン、実物大の戦艦長門(!)の甲板と艦橋を作って撮影したそうですから、そういうことって現代の映画作りにおいて、もう絶対ない(CGですよね。)と思いますので、ぜひぜひ必見のシーンです。

日本パートの監督は舛田利雄『二百三高地』、深作欣二『仁義なき戦い』、脚本は小国英雄『七人の侍』、菊島隆三『椿三十郎』。本作は舛田利雄監督の『二百三高地』や『零戦燃ゆ』より全然テンポがよく、深作欣監督の作品の中でも図抜けてスケールを感じる撮り方になってます。つまり、映画ファンの方はお分かりだと思いますが、これは撮影開始二週間で降りた監督・黒澤明の映画なのです。小国英雄、菊島隆三は黒澤組の常連、本作の脚本は熱海の温泉宿で黒澤明も加わって3人で書いたものです。7時間あったと言われてますがそれを切りに切って練りに練ったのが本作で、ほとんどのシーンがセリフではなくビジュアルで説明されていたりして、コッポラやスピルバーグが憧れた、クロサワ的ストーリーテリングと撮影手法が展開されます。なんで降りたのか?ノイローゼだそうで、ちょっと気になりますが、まあ黒澤本人の完璧主義もありつつ、米国側との文化摩擦、あと実は東映撮影所で作ったというのが大きいのかもしれませんね。ともかく、黒澤明本人はクレジットされていないですが、その残像を感じながら見るのもいいかもしれません。

とにかく、『トラ・トラ・トラ!』は大作中の大作、CGのない時代の圧倒的なスケールと迫力のアクション、スクリーンの面圧が違うのを感じてほしいです。そして、米国議会で「あの卑劣な日本が勝つ映画に、わが国の海軍の実物の軍艦と飛行機を貸し出すとは何事か!!」ということで問題になったほど、この映画は敵味方にフラット目線であったという事が伺えますし、山本五十六という希代の軍略家が考えた「航空機と空母がこれからの海戦を制する」という考え方を引き継いだのは、日本海軍ではなく、敵である米国海軍だったことも鑑賞後感の一助として覚えておくとよいと思います。

目覚めた米国海軍、第二次世界大戦にアメリカ参戦!
真珠湾の痛手によって一年は動けまいと思っていた米海軍は、わずか半年後の1942年6月のミッドウェー海戦に山本五十六伝授の飛行機と空母を使ってリベンジ、日本海軍を壊滅に追い込みます。本当に、パールハーバーは米国海軍が目覚めた戦いだったのです。

そして、各国のリーダーに目をやりますと、ルーズベルトは真珠湾の惨状を聞いて、「リメンバー・パールハーバー」と日本のだまし討ちを怒った言われてますが、実際彼は事前に知っていたのです。それでいてハワイに伝えなかった。チャーチルはこの報告を聞いて「これで勝った」とつぶやいたと言われます。第二次世界大戦において、パールハーバーがもたらした意味は大きかった。いよいよアメリカが表舞台に現れたのです。

 

次の記事を読む➡アメリカ参戦、史上最大の作戦へ 『史上最大の作戦』『パリは燃えているか』

 


『トラ・トラ・トラ!』(1970)
出演:フィン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン ほか
監督:リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
脚色:ラリー・フォレスター、小国英雄、菊島隆三
原作;ゴードン・W・プランゲ、ラディスラス・ファラーゴ
製作総指揮:ダリル・F・ザナック
製作:エルモ・ウィリアムズ
製作補佐:オットー・ラング、高木雅行、久保圭之介
撮影:チャールズ・ウィーラー、姫田真佐久、佐藤昌道、古谷伸
美術:ジャック・マーティン・スミス、村木与四郎、リチャード・デイ、川島泰三
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
編集:ジェームズ・E・ニューマン、ペンブローク・J・ヘリング、井上親弥
特殊効果:L・B・アボット、アート・クルイックシャンク
配給:20世紀フォックス

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