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【終戦記念日特集】学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち②/『ジョーカー・ゲーム』『スパイの妻』『K20怪人二十面相・伝』 省みたい「スパイ天国」ニッポンの歴史~そもそも誰が米国と戦おうとしたのか?

8月。終戦記念日。

どうも日本人にとって戦争というのは、ある種のセンチメンタリズム(感傷主義)でしか語ってはいけない感じですよね。しかも、まず「もうしません」みたいな反省からはいる感じで気が重い。
高校の授業で20世紀の世界大戦を学ぶ時間もほとんどない。3学期のギリギリに複雑で政治的な匂いもある戦争なんて、先生もちょっと避けて通りたいのかもしれない。そうなると多くの日本人はテレビ番組のイメージで戦争を捉えてしまう。つまりセンチメンタリズムですね。焼野原の東京や広島・長崎の悲惨な姿や、アジアの国々の「被害者」からの怨嗟の声。

「戦争というのは嫌なものだなぁ」

つらいんで大体の人の思考はそこでストップしてしまいます。
それでいいんでしょうか?考えてみてください、これは特筆すべき人類の歴史です。戦争は政治も経済も社会も、人材も科学も一箇所に力を集中しますので、多くの先鋭的な結果を残します。インターネットや携帯、GPS、電子レンジなど現代を支配している文明が、図らずも戦争から生み出さたれたように、戦争の事実から学べることがもっとあるような気がします。
その中には「どうしたら戦争にならないか」も含まれていることでしょう。

今回は、終戦記念日企画として、「第二次世界大戦の真実」特別講義!
学校の授業、普通に接しているマスコミでは決して触れない角度から第二次世界大戦を解説!秘められた歴史の真実から、8月みるべき映画を特集してみます!

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち②
『ジョーカー・ゲーム』『スパイの妻』『K20怪人二十面相・伝』
省みたい「スパイ天国」ニッポンの歴史~そもそも誰が米国と戦おうとしたのか?

『ジョーカー・ゲーム』(2015)

目的なし、意味なし、謎の日中戦争とは?
日本が太平洋戦争、つまり日米戦争になだれ込んでいく道はこうです。1930年代後半、泥沼化する日中戦争。中国(中華民国・リーダーは蒋介石)のバックに実は米国がいて、武器や物資を提供しているんで日本が中国軍をいくら叩いてもやや後退するだけで降伏する気配がない。前線は広い中国大陸に分散し、いつまでたっても終わらないという状況になり、「ならば米国からの補給ルートを遮断しよう」ということで、日本軍は南下、東南アジアに進駐。ところが、これが米国の逆鱗に触れ、日本への石油の全面輸入禁止という経済制裁が発動。米国に対する逆恨みともいえる感情が国内に渦巻き、遂に対米開戦に踏み切ったというものです。

元々、ソ連に脅威を感じて満州に手を出したのに、中国大陸全土に引き釣り出されて、東南アジアに攻め込んだ挙句、国力が10倍以上の米国との戦争に踏み切る。なんと当時、日本の石油は90%以上米国に依存していたのによくもケンカしたな!?という感じですが、この時期の日本は戦略なし、手段が目的化してしまっているというか「馬鹿なの?」と思わず言いたい感じで完全に自分を見失っていますよね。この後、スマトラ島の石油を奪取しにいくことでさらに南下、日本みたいな小さい国が太平洋全域を前線としてしまいますので、これでは勝てるわけないのです。

じゃ何でこんなことになったのか?軍部の暴走ということでいいのか?確かに現場の将校にとってみれば「やったもん勝ち」というムードはあったでしょう。ところが、その流れを満州事変で作ってしまった参謀・石原莞爾も満州から出ることに猛反対してますし、全体戦略として北京以南で中国と戦うメリットは全くないのに戦っているという状況だったのです。暴走した軍部はとんでもない馬鹿だったんでしょうか?

誰がアメリカと戦争したがったのか?
誰が、南進論を唱えたか?
当時の関東軍参謀長は東条英機で担当の参謀は武藤章、海軍も石油確保の観点から賛成していたなど色々いますが、やはり近衛文麿ですね。南進論がアメリカとの対立を生むとして拒んだ米内光政内閣を陸軍が拒絶して倒し、その後組閣したのが近衛でした(第二次近衛内閣)。ところが、1941年に独ソ不可侵条約が破られドイツがソ連に攻め入った。その際に「東西からソ連を挟撃しよう」と松岡洋右外相が言い出したため、内閣改造し、彼をはずした(第三次近衛内閣)。近衛は「東亜新秩序」を発表し、日本のアジア侵略の理想論を掲げました。総理大臣がお墨付きを与えたのだから現場の将校は中国大陸で戦線を拡大しますよね、そりゃ。

近衛首相は側近たちに操られていた可能性が非常に高いんです。官房長官の風見章は元々信濃毎日新聞の記者で戦後社会党の重鎮になりますので、この時代から左寄りの思想があった。さらに側近の尾崎秀実と西園寺公一はゾルゲ事件に連座したソ連共産党のスパイでした。この時期の尾崎の積極的な活動ぶりは映画『スパイ・ゾルゲ』でも描かれていますし、過去記事(戦争と陰謀)でも書かせていただきましたが、元朝日新聞記者の彼は「アジアに新秩序をもたらすため徹底的に中国と戦え!」と何度も新聞や雑誌に激越な文章を寄稿していますし、尾崎の古巣である朝日新聞も同様に、日中戦争を煽りました。そもそも日中戦争の発端となった盧溝橋事件も共産党がしかけたというのが定説になっています。

先ほど「馬鹿なの?」と思わず言ってしまった太平洋戦争直前の日本の動き、すべて、スターリンの手のひらで日本人たちが踊らされていたとしたらどうでしょうか?スターリンにとって、最大の脅威は西からドイツ、東から日本の挟み撃ちに遭う事でした。それを避けるためスパイを駆使して日本の中枢や世論を操作、日中戦争を泥沼化し、国論を南進にもっていった。敵をソ連からアメリカに変えてしまったのです。

『スパイ・ゾルゲ』(2003)

「スパイ天国」ニッポンの残念な歴史
「なんという男だ!」
とスターリンは敵ながら褒めたくなるくらいの鮮やかさですが、逆に日本は政治のトップがコロリと騙され、この後の一連の判断ミスが300万人を失ない、原爆まで落とされた戦争につながっていくわけですから、被害は甚大です。ところが、これほどスパイに世論捜査された歴史がある国なのにもかかわらず、日本は諜報の怖さを何も学んでない。現代に至っても「スパイ天国」などと言われているのは思考停止以外の何物でもありません。

エンタテインメントの世界では、この辺りを直接扱った映画というのは『スパイ・ゾルゲ』が一番ですが、他にも『ジョーカー・ゲーム』『スパイの妻』あたりが時代の空気を感じるにはいい作品かと思います。やはりこの時代のキーワードは前線における戦いというよりも諜報戦なんですよね。また、昭和初期の大日本帝国・満州帝国を感じる作品としては『K20怪人二十面相・伝』なんかもお勧めします。耽美的なメカメカ感は独特の美しさがあってこれも必見かと思います。きっと「幣原機関に育てられてた女スパイ」が主人公の新作『リボルバー・リリィ』もこの辺りの作品に連なるような美意識をもったスペクタクル大作になると期待しています。

『ジョーカー・ゲーム』(2015)

『スパイの妻』(2020)

『K-20 怪人二十面相・伝』(2008)

『リボルバー・リリー』(2023)

日本という国は「単一民族ゆえ性善説で諜報戦が苦手」などと言われますが、元々戦国時代は忍者などを介して、なかなかの諜報戦をやりあっていたわけですし、日露戦争でも明石元二郎などが、共産主義者と組んで帝政時代のロシアの世論かく乱に動いてますから、そういうことでもだけないような気がしますね。昭和の陸海軍の参謀は大学出のエリート揃いで、明治の軍隊のように維新戦争から様々な実戦の中で命のやり取りをしてきた連中と違います。「戦場で勝てば、全て収まる」とでも思っていたのでしょうか。四千年間謀略をお家芸としてきた中国と、世界革命をそもそもの存在意義としているソ連共産党に対して、あまりに脇が甘すぎたというべきでしょう。

後年、近衛は「自分は自分の周りに入り込んでいた共産主義者によって操られ道を間違えた」と天皇に報告してます。彼は育ちがいいから素直にそんなことを吐露するわけですが、それ故国民に人気があったんですよね。人気があったから「利用価値がある」とスパイたちがすり寄ってきたんだと思います。彼はヒトラーに憧れてチョビ髭をつけたりしてます。ヒトラーが何者かは関係ない、ファッション重視なわけです。

きっと今の総理大臣も「育ちも人もいいけど、断固たるビジョンがない」同じような人間な気がしますので、皆さん注意しておいた方がよいでしょう。

 

次の記事を読む➡ダンケルク」と「パール・ハーバー」のつながり。映画『ダンケルク』『ウィンストン・チャーチル』』解説

 


『スパイ・ゾルゲ』(2003)
出演:イアン・グレン、本木雅弘、葉月里緒菜 ほか
監督・原作:篠田正浩
脚本:篠田正浩、ロバート・マンディ
配給:東宝
(C)2003スパイ・ゾルゲ製作委員会


『ジョーカー・ゲーム』(2015)
出演:亀梨和也、伊勢谷友介、深田恭子 ほか
監督:入江悠
原作:柳広司
脚本:渡辺雄介
配給:東宝
(C)(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会


『スパイの妻』(2020)
出演:蒼井優、高橋一生、坂東龍汰、東出昌大、笹野高史 ほか
監督:黒沢清
脚本:濱口竜介、野原位、黒沢清
配給:ビターズ・エンド
(C)2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ


『K-20 怪人二十面相・伝』(2008)
出演:金城武、松たか子、仲村トオル ほか
監督・脚本:佐藤嗣麻子
原作:北村想
配給:東宝
(C)2008「K-20」製作委員会


『リボルバー・リリー』(2023)
出演:綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成、シシド・カフカ、古川琴音 ほか
監督:行定勲
原作:長浦京
脚本:小林達夫、行定勲
配給:東映
(C)2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

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