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【終戦記念日特集】学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち①/『誰が為に鐘は鳴る』(後編)【第二次世界大戦の引き金】誰がヒトラーを許したのか?~共産主義への恐怖

8月。終戦記念日。

どうも日本人にとって戦争というのは、ある種のセンチメンタリズム(感傷主義)でしか語ってはいけない感じですよね。しかも、まず「もうしません」みたいな反省からはいる感じで気が重い。
高校の授業で20世紀の世界大戦を学ぶ時間もほとんどない。3学期のギリギリに複雑で政治的な匂いもある戦争なんて、先生もちょっと避けて通りたいのかもしれない。そうなると多くの日本人はテレビ番組のイメージで戦争を捉えてしまう。つまりセンチメンタリズムですね。焼野原の東京や広島・長崎の悲惨な姿や、アジアの国々の「被害者」からの怨嗟の声。

「戦争というのは嫌なものだなぁ」

つらいんで大体の人の思考はそこでストップしてしまいます。
それでいいんでしょうか?考えてみてください、これは特筆すべき人類の歴史です。戦争は政治も経済も社会も、人材も科学も一箇所に力を集中しますので、多くの先鋭的な結果を残します。インターネットや携帯、GPS、電子レンジなど現代を支配している文明が、図らずも戦争から生み出さたれたように、戦争の事実から学べることがもっとあるような気がします。
その中には「どうしたら戦争にならないか」も含まれていることでしょう。

今回は、終戦記念日企画として、「第二次世界大戦の真実」特別講義!
学校の授業、普通に接しているマスコミでは決して触れない角度から第二次世界大戦を解説!秘められた歴史の真実から、8月みるべき映画を特集してみます!

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

学校では教えてくれない戦争の本当がわかる映画たち①

『誰が為に鐘は鳴る』(1943)
【第二次世界大戦の引き金】誰がヒトラーを許したのか?~共産主義への恐怖(後編)

※前編はこちらリンク

ヒトラーVSスターリン、暗躍する帝国主義のリーダーたち
ナチスドイツのヨーロッパ侵攻にまいったのはソ連のリーダー、スターリンです。ヒトラーは自著「我が闘争」にあるように、やがて我々に襲い掛かってくるだろう。なんとかせねば。彼は考えました。そして「既存の政治勢力とは相容れないのが共産主義の原則だが、人類の敵・ファシストに対しては例外的に既存勢力と共闘する」方針を発表します。いわゆる「人民戦線」と呼ばれるナチスドイツの膨張を防ぐための一手でした。

名作「誰が為に鐘は鳴る」(米国・1943年)は、まさにナチスドイツと共産主義の代理戦争、第二次世界大戦直前のスペインにおける内乱の模様を描いています。これは右派のフランコ将軍と左派の共和国人民戦線政府の戦いです。フランコ将軍のバックにいるのはドイツとイタリアで、ヒトラーはこの戦いに膨大な量のドイツ製兵器を投入してフランコ軍を支援します。いや実体は支援という名前を借りて、スペイン人をターゲットに戦車や急降下爆撃機などドイツの最新兵器の実験場としたのです。(※ピカソの「ゲルニカ」はこの模様を描いた絵画です。)

ピカソ「ゲルニカ」(1937)

「これはひどい」
と世界の世論は沸き立ち、何にもしない自由主義国のリーダーに対する苛立ちを募らせました。そして各国から有志達・知識人が義勇兵としてが集まって人民戦線として戦ったのです。

映画の主人公、ロベルト・ジョーダン(ゲイリー・クーパー)もそのひとり。地元のゲリラ組織と連動して、憎くきファシストとの戦いを繰り広げる中、運命の女性マリア(イングリッド・バーグマン)との出会いがあり、事態はさらに逼迫していくという内容で、反ファシストの戦いが描かれています。本作は多くの米国民の関心を呼び、1941年のアカデミー作品賞をとっています。なんせ、この原作者アーネスト・ヘミングウェイ(米国人)自体が義勇兵として戦ったということなので人民戦線のゲリラの実情など世界観はリアルだし、ストーリーも実話に近いので古い映画ながら心震えます。そして、ファシズムの脅威を感じることでしょう。

とはいえ、歴史は残酷なもので、結局ドイツとイタリアの支援を受けたフランコ将軍側がこのあとスペインを制してしまいます。ヒトラーは余勢をかって更なるヨーロッパ拡張を図ろうとイタリア(ムッソリーニ引きいるファシスト党)と協約を結びます。

スターリンの八面六臂と深謀遠慮
一方、スターリンは焦った。もはやスペインの共産主義者なんかどうだってよかった。“失われゆく母国“を守るため、恐るべき智謀の数々をこの時期ひねり出しています。それが独ソ不可侵条約というやつで「ヒトラーさん、ポーランドを山分けしましょう。西半分はそっちにやるから、それ以上来ないでね」という密約を含んだ条約を自ら声をかけて結んでいます。死中に活を見出す曲芸外交でした。よりによってヒトラーと?と世界はいぶかりましたが、人の国の土地で密約を交わすジャイアン的思考・帝国主義時代の外交の恐ろしさを感じます。

スターリンはスペインなんかどうだってよかった、と書きましたが、したたかな彼は人民戦線で共闘したことで、自由主義陣営の共産主義対するイメージが上がったことを感じたはずです。後にノーベル文学賞を受賞する、アメリカ最高の作家ヘミングウェイがあれだけ反ファシストを叫べば、少なくとも知識人やメディアが敵視するのはヒトラーのドイツであるはず。これはこの後有利だと最大のピンチの中、核心したと思います。(このやり方でいこう)

そして、スターリンとの密約の後、ヒトラーはついに1939年ポーランドに侵攻します。第二次世界大戦の始まりです。急降下爆撃機がまず敵の重要拠点を破壊し、その後戦車部隊が敵の主力を叩き、最後に歩兵が残った敵を殲滅していく、いわゆる「電撃作戦」はスペインで実験と訓練が繰り返されたやり方そのもので、あれだけ広いポーランドをたった2週間で制圧してしまいました。ここにおいてイギリス・フランスは遂にナチスドイツに宣戦布告しますが、具体的に何もしません。何もしない相手だからといって恩に着るヒトラーではありません。この一年後、ナチスドイツの最強戦車部隊はアルデンヌの森(ベルギー)をなぎ倒して、フランス国境に現れ、一気にパリを落とし、イギリス軍をダンケルクの岸から追いやります。

スペイン内戦時、英仏のリーダーの意識が違ったら世界大戦は起こらなかったでしょう。

(追記)
意外なことに、このスペインのフランコ体制は1975年つい最近まで続きます。
フランコ将軍は恩義あるヒトラーの要請にもかかわらず、第二次世界大戦に参戦せず中立を貫いた。「腰抜け」と呼ばれましたが、結果それで45年以降も生き残り、その後は冷戦時代となりますから、やっと共産主義の恐怖に気づいた世界は、巨大なソ連の影に怯えたわけで、米国にすり寄ったフランコ将軍はファシスト体制のまま75年まで生き永らえました。

 

次の記事を読む➡『ジョーカー・ゲーム』『スパイの妻』『K20怪人二十面相・伝』 省みたい「スパイ天国」ニッポンの歴史~そもそも誰が米国と戦おうとしたのか?

 

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「誰が為に鐘は鳴る」
1943年/170分/アメリカ
原題:For Whom the Bell Tolls
配給:パラマウント

<キャスト>
ゲイリー・クーパー、イングリッド・バーグマン、エイキム・タミロフ、カティーナ・パクシヌー

<スタッフ>
監督:サム・ウッド
脚本:ダドリー・ニコルズ
原作:アーネスト・ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』
製作:サム・ウッド
製作総指揮:B・G・デシルヴァ

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