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カンヌで脚本賞受賞!”脚本家・坂元裕二”の世界観を堪能する作品4選

6月2日より是枝監督による最新作『怪物』が公開されます。本作の脚本を手掛け、カンヌ国際映画祭でみごと脚本賞を受賞したのは坂元裕二さんです。坂元さんといえば、唯一無二の世界観と名台詞で「東京ラブストーリー」(1991/フジテレビ系)、「Mother」(2010/日本テレビ系)、「最高の離婚」(2013/フジテレビ系)など、これまで数々の名作ドラマを生み出してきました。その魅力は、個性的な登場人物、独特な世界観、予想を裏切られる展開、心と記憶に焼き付く言葉で織り成す会話劇…とあげればきりがありません。特に、苦しみや孤独、生きづらさを抱えている人たちに寄り添うセリフは、時に自分だけに語りかけてくれているような気さえして、心の中にいつまでも留めて置きたくなります。坂元さんの紡ぐ言葉に救われた経験があるのは、きっと私だけではないでしょう。今回は、そんな坂元さんのまだまだある魅力を、それを堪能することができる4作品と名台詞と共にご紹介します。

文:カカオ豆(映画とコーヒーとチョコが好物)

 

 

「大事なものって、荷物になんねん」(第1話 音)
①『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016)

坂元さんはこれまで「それでも、生きてゆく」(2011/フジテレビ系)、「Woman」(2013/日本テレビ系)など登場人物たちがこれでもかというほど救われず、とにかく胸が締め付けられる作品をいくつも手がけてきましたが、筆者的に人生で最も泣いたテレビドラマは本作です。もう4回以上は見ているのですが、毎回同じシーンで涙が止まらなくなるし、今ではもう手嶌葵さんの「明日への手紙」のイントロを耳にしただけで音(有村架純)と練(高良健吾)を思い出して泣けてきます…。何がそんなに泣けるかというと、優しくて思いやりのある音と練が、誰かのために自分のことを犠牲にしてしまうが故に、いつも辛い思いをすることになる姿が非常に切なく、胸をえぐられるのです。晴太(坂口健太郎)に言わせると「夢が叶わなかったことに気づかずにいられる場所」である東京に出てきた練は、人身事故が起こった時に舌打ちする音を聞くとよくわからない気持ちになると言います。つまり、練は電車が遅延して自分が困ることよりも、人身事故に合ってしまった人のことを想うことのできる人なのです。練や音のような登場人物を描くことができるのは、きっと坂元さんが他人の痛みを自分のことのように感じることのできる方だからでしょう。しかも、これほど優しい練に、この後起こる衝撃的な変化にまたより一層胸が痛むのです。坂元さんはなぜこんなにも人間という生き物を知っているのでしょうか…。

脚本:坂元裕二
プロデュース:村瀬健
演出:並木道子
出演: 有村架純、高良健吾、高畑充希、西島隆弘、森川葵、坂口健太郎 他
(C)フジテレビ

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「レモンするってことはさ、不可逆なんだよ。」(第1話 家森)
②『カルテット』(2017/TBS系)

からあげにレモンをかけるか、かけないか。この論争だけでこんなにも記憶に焼き付く名シーンが生まれるなんて誰が想像できたでしょう。家森さん(高橋一生)のように、からあげにレモンをかけない派の人にとっては、断りもなくからあげにレモンをかけられたら大事件なのです。では、どうすればいいのか。「レモンをかけてもいいですか?」と聞けばいいのでは?と思いますよね。でも、家森さん的にはそれは不正解です。坂元さんらしいこの論争の正解は、ぜひドラマを見てお確かめください(笑)しかも、これただ笑いのネタとして組み入れられたわけではなく、後にじわじわと意味深いシーンだったことに気づかされるのです。日常の些細な出来事の中に、実は人の深層って隠されていることや、性格が現れることに気づかされることも坂元さんの作品ならでは。からあげを見る度にカルテットの4人を思い浮かべてしまうように、坂元さんの作品を見た後は、日々の何気ないことがちょっぴり特別なものになります。

脚本:坂元裕二
演出: 金子文紀、坪井敏雄
演出/チーフプロデュース:土井裕泰
プロデュース:佐野亜裕美
出演: 松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし、八木亜希子 他
(C)TBS

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「人生に失敗はあったって、失敗した人生なんてないと思います」(第5話 とわ子)
③『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年/カンテレ・フジテレビ系)

主人公の大豆田とわ子(松たか子)は不動産会社の社長で、バツ3。一人目の夫は、モテたくないのにモテてしまい、時に「心がない褒め言葉で人を傷つける」田中さん(松田龍平)。2人目は、300円多く払ったタクシー代をいつまでも根に持つほど器の小さい佐藤さん(角田晃広(東京03))。3人目は「挨拶って入ります?言うとわかっている定型文言う必要あります?」と尋常じゃなく理屈っぽい中村さん(岡田将生)。なんだかんだでとわ子のことが気になる彼らと、それを鬱陶しいと思っているとわ子との間に繰り広げられる、思わず笑ってしまう会話劇がとてもクセになります。また、「手に入ったものに自分を合わせるより、手に入らないものを眺めている方が楽しいんじゃない?」(第9話 田中)、「誰かと二人でいたって、自分を好きになれなかったら、結局一人だしさ」(第9話 とわ子)など、仕事や恋愛で多くの苦労や失敗を経験してきた大人たちに響く名台詞に溢れていることも見どころの一つです。他にも個性的な人物たちがたくさん登場するのですが、どれだけ濃いキャラの人たちが集おうと、絶対に誰の生き方も否定しないのが、坂元さんです。思うことも考えることも人それぞれで、人の数だけ人生があって、誰の生き方が正解だなんてないんだということが、とわ子たちを通して伝わってきます。だからこそ、自分の人生も肯定してもらえたような気がして、前向きになれる作品です。

脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美

出演: 松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン 他
(c)カンテレ

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「偉いのかもしれないけど、きっとその人は今村夏子さんの「ピクニック」を読んでも何も感じない人だと思うよ」(麦)
④『花束みたいな恋をした』(2021)

恋を「花束みたいな」と表現するところから、もう素敵な作品であることが伝わってくる本作。イヤホンのLとRから出ている音は違うという会話から「恋愛は1人に1個ずつ」という名台詞が飛び出すところから物語は始まります。この一連の会話がもう坂元裕二の世界観すぎて、これから始まる物語にワクワクしてきます。「恋愛は1人に1個ずつ」というセリフの意味は冒頭では深く語られませんが、そこから描かれる麦(菅田将暉)と絹(有村架純)の5年間の恋愛を見届けた後に振り返ると、「なるほど、そういうことかぁ…」とジーンと来るものがあります。恋愛の本質をイヤホンで例えるなんて、どうやったら思い浮かぶのでしょうか…。このような恋愛に関する感慨深い台詞が数多く飛び出すのも、坂元さんの作品を見る楽しみの一つです。また、筆者の好きな場面は、麦が「電車に揺られていたら」と言ったことに対して、絹ちゃんがときめくところです。なぜときめいたかと言うと、普通は電車に“乗っていたら”と表現するところを、麦君は“揺られていたら”と表現したからなんです。自然にそういった表現ができる麦君も素敵ですが、それに気づくことのできる絹ちゃんも素敵すぎませんか。坂元さんの作品を見ていると、どんな言葉を選ぶかに、人柄が滲み出るのだということを心から感じます。だからこそ、一言一言を聞き逃したくないし、言葉の魅力や重みを味わいたくなります。

監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太 他
(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

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いかがだったでしょうか。普段は多忙のあまり倍速で観がちな人も、今回ご紹介した作品においては倍速で観ることはお勧めしません。なぜならセリフの一言一言を噛みしめ、味わうことが坂元裕二作品の醍醐味であるからです。

さて、『怪物』ではどんなが名台詞が待っているのでしょうか…。遂に、世界も認めた坂元裕二の世界観をぜひ劇場でご堪能ください。

 

『怪物』(2023年6月2日(金) 全国ロードショー)

【STORY】
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――。

監督・編集:是枝裕和『万引き家族』 
脚本:坂元裕二『花束みたいな恋をした』 
音楽:坂本龍一『レヴェナント:蘇えりし者』
キャスト:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太 / 高畑充希 角田晃広 中村獅童 / 田中裕子
企画・プロデュース:川村元気 山田兼司
製作:東宝、フジテレビジョン、ギャガ、AOI Pro.、分福
配給:東宝、ギャガ 

©2023「怪物」製作委員会  
■公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
■公式twitter:@KaibutsuMovie
■公式instagram:@kaibutsumovie