『SHOGUN 将軍』最終回直前!「大航海時代、“世界”を感じるワンダーな映画」特集(後編)
※前編の記事はこちら
「肉が旨い」から始まるヨーロッパの挑戦
大航海時代って夢がありますよね。世界史的に見ると、この大航海時代でアジア中東とヨーロッパの文明の発達度は逆転してますね。それまではアジア中東の方が進化していたけど近代の扉を開いたのはヨーロッパだった。
命の危険を冒してまで、ヨーロッパの人々海外へと駆り立てたものは何だったのでしょうか?
領土的野心、もちろんあるでしょう、ヨーロッパは多数の国と民族がひしめき合って熾烈ですからね。あとはキリスト教信仰というものもあります。当時「プレスタ―ジョンの伝説」というのがありまして、遠く南の果てに、キリスト教を熱心に信仰する大王がいるのだと、なぜか信じられておりまして、ヨーロッパの人々は憎きイスラム教の国に対抗するため、このプレスタ―ジョンと出会い、共同戦線をはって挟み撃ちにしてしまいたいと考えて、アフリカ大陸を南に下っていくのです。
あとは、実は「食事」ですね。ヨーロッパの人々は肉食だったわけですが、肉ってあんまり日持ちませんよね。ところが胡椒とか、丁子とかクミンとか、特定の香辛料をつけておくと、匂いを軽減し腐敗と防いでくれることがわかった。
「肉がいつまでもウマい!」
これは人類にとって切実な問題ですよね。食欲です。商売としてみたら儲かる!おかげでヨーロッパの人々は大挙してこの香辛料が大量にとれるインド、そして東南アジアを目指すことになるのです。
ポイントはアフリカ廻りのインド航路、そして間違えて発見してしまったアメリカ大陸。トップランナーたるスペインとポルトガルはその後、実に勝手ながら「世界分割協定」を結びます。2国でもめずに世界を分け取りにしようというわけです。アフリカからインドはポルトガル、アメリカ大陸はスペイン。そしてその先のアジアはまあ、流れで。。という感じでした。この流れがアジアに訪れるのは少し後の話になりますが、つまり、アジアは両国のつかみ取り地域となったのです。
いずれにせよ、この「冒険には価値がある」と世に知らしめたのは、イタリアからきた、たった一人の貧乏な船乗りでした。
『1492 コロンブス』(1992年製作/イギリス・アメリカ・フランス・スペイン合作)
監督:リドリー・スコット
出演者:ジェラール・ドパルデュー、シガニー・ウィーバー
アメリカはこの男の妄想から生まれた。
1992年、コロンブスのアメリカ大陸到達500周年を記念して制作された映画。巨匠リドリー・スコットが、クリストファー・コロンブスの数奇な生涯を描く。リドリー・スコット作品の中ではあんまり語られませんが、大航海時代にご興味があるならば、その扉を開けたひとりの男の姿は、是非、がっつり重厚感のある映像美に満ち満ちたリドリーの世界で観ていただきたい。コロンブス役はジェラール・ドゥ・パルデュー、イザベラ女王約はシガ二―・ウィーバー。
この話、歴史上のポイントはコロンブスってイタリアからの移民ということで、このアメリカ大陸発見は決してスペインが国策として推し進めたものではなく一人の男の野望の賜物だということ。
彼が育った海港都市・ジェノバは元々勇猛で挑戦的な船乗りを輩出することで有名ですが、コロンブスもその一人。もはや時代の趨勢はイタリアが仕切る地中海貿易ではなく、スペイン・ポルトガルが仕切るアフリカ・大西洋に移る中、彼は全く新しいイメージに囚われだします。
「地球は丸いとすれば、反対からインドに行けるかも?」
自らの仮説を立証するために、コロンブスはスペイン王国枢密院に出向き、口八丁手八丁で自らの「大西洋経由インド行き航路開拓」への援助・出資を訴えますが、当然、そんな無謀な計画に誰も賛成する人はいません。
しかし、その話を聞いた船主・ビンソンが興味を持ち、コロンブスとイサベル女王との面会の約束を取り付けます(ユダヤ人の支援があったという説もあります。)。成功の暁には貴族の位や総督の位など多数の法外な要求をし、もし受け入れられない場合は出家するとまで言ったコロンブス。逆に興味を持ったイサベル女王の援助を取り付け、遂に待望の航海に出発したがー。
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(2007年製作/イギリス)
監督:シェカール・カプール
出演者:ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ
戦うヴァージン・クイーン、ついに決戦の時
ケイト・ブランシェットの代表作「エリザベス」。変人の父王ヘンリー8世とアン・ブーリンという低い身分の母親から生まれ、カトリック派の異母姉メアリー女王によって弾圧され幽閉されたが、その死によって女王に即位したひとりの女性・エリザベスが陰謀と裏切り渦巻く宮廷でどう生きたのか?第71回アカデミー賞で作品賞など7部門にノミネートされるほどで人間ドラマとして抜群に面白い。そして、これをみるとカトリックとプロテスタントの闘争が如何に過酷かわかる。
続編である本作は、さらに過激で華やかでスケールも大きい。なんといっても世界を支配しているスペインのラスボス・フェリペ2世との直接対決、いわゆる「アルマダの海戦」がクライマックスに待ち受けているのでスペクタクルとしても、見ごたえ十分。英国艦隊の司令官フランシス・ドレークも登場、ほぼジャック・スパロウと変わらない海賊だが、ドーバー海峡の海流を読んでスペインの無敵艦隊をやぶった。「SHOGUN―将軍」の按針(ウィリアム・アダムズ、劇中ではジョン・ブラックソーン)は彼の元で航海士としてこの奇跡の勝利を収めた戦いに参戦している。(つまり、按針は家康とエリザベスに仕えた唯一の人間なのである)。
同じ時代の日本とイギリスを比較してみてみるのも楽しい。日本の方がよほど近代的なんじゃないか。
この後、エリザベスの下イギリスはスペイン、ポルトガルに代わって世界に勇躍。大英帝国として、ゴールデンエイジを迎えることになる
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『魔界転生』(1981年製作/日本)
監督:深作欣二
出演者:千葉真一、沢田研二 ほか
千葉真一✖沢田研二のコラボで送る、奇想天外すぎる島原の乱のリベンジ!
山田風太郎の伝奇小説、を映画化した1981年の作品。主演の柳生十兵衛は、もうこの人しかいないという「十兵衛役者」千葉真一、天草四郎は沢田研二。監督:深作欣二によって製作され、日本では観客動員数200万人・配給収入10億5000万円といいますから、およそ興収20億円を記録、大ヒットしたマジカルSF時代劇。
この話は、いろいろ設定も展開も突拍子もないので、見逃されがちですが、江戸時代初期の不安定な時代を描いており、有名な「由井正雪の乱」を下敷きに、そこに世の中に恨みを持って死んでいった数々のヴィラン・剣豪の亡霊が集結し、将軍家光の天下を奪わんとするという、わりとしっかりしたお話。
この亡霊を呼び寄せる“魔界転生”の術をつかうのが、元キリシタン大名小西行長の家来で、島原の乱の反乱軍の実質的リーダー、森宗意軒。つまりこれは島原の乱のリベンジ的続編でもあるわけです。
転生で蘇る魔界衆は、もちろん島原の乱といえばこの人・天草四郎時貞、荒木又右衛門、居合の田宮坊太郎、宝蔵院流槍術の宝蔵院胤舜、尾張柳生流の柳生如雲斎、江戸柳生流の柳生宗矩、二天一流兵法の宮本武蔵ら名だたる剣豪たち。
しかし、森宗意軒にはもう一人、どうしても魔界転生させたい男がいて、その男こそ柳生十兵衛!じゃじゃーん!ところが十兵衛は宗意軒の意に反し、魔界衆と戦うことを選ぶ。
この、デビルマン的展開にわくわくしない男子はいませんね。
やたらに、色気があってそれ故おっかない沢田研二のジェンダーレスな妖気にやられつつ、観る者は皆、千葉ちゃんの虜になるという、そういう活劇です。
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『黄金の日日』(1978年製作/日本)
演出:岡本憙侑 他
出演者:市川染五郎 ほか
エネルギッシュでうかつで、命は軽く、死にざまは残酷ではかない。青春度MAX大河ドラマ
古い映画が続いて恐縮ですが、考えるとこの「大航海時代」の日本を捉えた映画ドラマはあまりないんじゃないかと思いますね。まさに日本史に世界的な目線が欠如している証左だと思いますが、それでも1970年代くらいまでは、まあまああった。
シャム(現在のタイ王国)のアユタヤの支配者となった山田長政の話とか、武闘派ボーダレス商人、ルソン助左衛門を描いた「大盗賊」。
あとはこの城山三郎の大河ドラマ「黄金の日日」。「大盗賊」と同じ人物を描いているが、こちらは風雲の志(こころざし)がメイン。若き商人が商売の力を信じて、堺の街から東南アジアに飛躍し、日本の大航海時代を描いたということで、NHKの大河ドラマとしてはなかなかのチャレンジな題材だったと思います。
主演は市川染五郎(当時:今の松本白鴎)、栗原小巻、根津甚八、緒形拳、鹿賀丈史、ということで、これはもうキャスティング的には青春モノですよね。当時大ヒットしていた民放の「俺たちの旅」や「傷岳らの天使」の大河版にちかく、それゆえ出演者はエネルギッシュでうかつで、挑戦に価値があり、命は軽く、死にざまは残酷ではかない。
話は、安土桃山時代にルソン(フィリピン)に渡海し、貿易商を営むことで巨万の富を得た豪商・呂宋助左衛門(ドラマ内では助左または納屋助左衛門と呼ばれている)と泉州・堺の町の栄枯盛衰、今井宗薫の妻・美緒をめぐる今井宗薫と助左衛門らの争いを描いた作品。
注目は当時として画期的な、徹底的な悪役として描かれた豊臣秀吉、緒形拳の狂気の演技が話題に。また、その大坂城に忍び込む根津甚八演じる石川五右衛門のクールなカッコよさも印象深い。
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▪️ここまでの『SHOGUN 将軍』(1話〜8話)
1600年の日本。それまで日本を統一していた太閤がこの世を去り、諸国は五人の大老によって治められていた。関東地方を治める大名、吉井虎永(真田広之)は、大坂城の城主でもある五大老のひとり、石堂和成(平岳大)の策略によって他の大老たちと対立関係に陥ってしまう。虎永は外国船で漂着した英国人航海士ジョン・ブラックソーン(コズモ・ジャーヴィス)に出会い、言葉のわかる戸田鞠子(アンナ・サワイ)の通訳を得て対面。“按針”と呼ばれることになったブラックソーンは虎永と行動を共にする。囚われていた大坂城から脱出した虎永は石堂たちに立ち向かう準備を進めるが、石堂は太閤の側室・落葉の方(二階堂ふみ)の後ろ盾を得て他の大老を掌握。兵を失い、我が子・長門(倉悠貴)も失い、打つ手のない虎永はついに降伏を宣言するが、賛成できない家臣の広松(西岡德馬)は切腹。虎永は最側近であり、最も頼りになる広松を失い、さらなる窮地に立たさされる。虎永はすべてを失った。あとは降伏あるのみ。そのことを伝えるため、家臣の樫木藪重(浅野忠信)、按針、鞠子は石堂への使者として大坂に旅立った。
▪️【4/16(火)配信】第九話「紅天」予告
大坂にたどりついた藪重は貢物として按針を石堂に差し出す。幼少期を共に過ごした落葉の方と再会した鞠子は、石堂に「虎永は1か月後に大坂にやってくるが、その前に虎永の正室・桐の方(洞口依子)と静の方を連れて江戸に戻る」と宣言する。石堂はその要求をはねのけるが、鞠子は自らの命に変えてでも、ふたりを江戸に連れ戻すという。彼女の硬い決意、そして鞠子の使命がいま、明らかになろうとしていた。
▪️【来週4/23(火)配信】 第十話「夢の中の夢」予告
襲撃によって大坂に動揺が広がるが、五大老は江戸にいる虎永に攻め入ることを決断。按針は藪重と共に虎永の領地・網代に戻る。藪重は謀反の疑いで網代につくと拘束され、切腹を命じられる。そして按針は自分の船が何者かに壊されているのを知り、犯人を探そうとするが虎永に止められる。藪重の切腹の日。介錯を務めることになった虎永は静かに語り出す。それは虎永が長年にわたって遂行してきた秘策の正体、誰も予想できなかった衝撃の真実、この国への想い、そして未来に向けた壮大な策の全貌だった。
『SHOGUN 将軍』
2024年2月27(火)からディズニープラスで独占配信開始
(c)2023 Disney and its related entities
公式サイト:https://www.disneyplus.com/ja-jp
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