4Kリマスター・IMAX版公開記念!編集部スタッフが語る『ロード・オブ・ザ・リング』特集!④そういうことじゃないロード・オブ・ザ・リングの魅力
先週より上映中の『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』。今秋より『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のIMAX上映が順次始まりましたが、この『王の帰還』はアカデミー賞最多11部門を受賞(しかもノミネートされた部門すべてを受賞する快挙)を成し遂げたほどの名作です。『王の帰還』だけでなく『ロード・オブ・ザ・リング』トリロジーはアカデミー賞ではもちろんだが、今でも映画史に名を刻む映画となっています。
日本で公開された時も3部作全てが大ヒットを記録し、同時期に公開された『ハリー・ポッター』と合わせて、まさにファンタジー映画の一時代を築いた『ロード・オブ・ザ・リング』。既に公開されてから20年以上が経ったこれらの映画は、当然10代の映画ファンなんかは、名前は知っていても観たことない人や、DVDなどでしか見たこと無い人も多いでしょう。そういった意味では今回の特別上映は新たなファンを生むきっかけにもなります。
そこで今回、ムービーマービーでは上映された『ロード・オブ・ザ・リング』に際しての特別企画を実施。編集部20代~50代のライターが、それぞれの胸に抱く『ロード・オブ・ザ・リング』への想いを語ります!
そういうことじゃないロード・オブ・ザ・リングの魅力
2022年秋、まさか「ロード・オブ・ザ・リング」三部作がもう一度映画館で観れると思わなかったですね。しかも、4K IMAX。プレミアムラージフォーマットで楽しむ「ロード・オブ・ザ・リング」。一生に一度の体験を逃してはなりません。
え、「ロード・オブ・ザ・リング」ご存じない?「ハリー・ポッター」と同じようなシリーズものファンタジーかって?バカ言ってはいけません。申し訳ないけど「ハリー・ポッター」と比べること自体おかしい。そういう映画ではない。
というわけで、「ロード・オブ・ザ・リングって、ちょっと大作のファンタジー??」くらいに思っているあなたに贈る「そういうことじゃないロード・オブ・ザ・リングの魅力」入門編お送りしたいと思います。
○ストーリーを完全に凌駕する「世界観」
ファンタジーやSF映画はよく「世界観がすごい」とか言いますね。
でも「ロード・オブ・ザ・リング」のそれは異常です。だって原作の「指輪物語」を書いたJ・R・R・トールキンて元々は言語学者。言葉を作って、それを使う人々のヒストリーを作った。世界の創造に始まる3万7000年以上の時間経過。神々から、ホビット、エルフ、ドワーフ、人間たちの3000年の歴史。主要王族の系図や地理など克明な設定がなされた世界。「ロード・オブ・ザ・リング」はそんな歴史の一番最後のエピソードに過ぎない。あれだけ壮大な物語なのに、全体から見れば尻尾みたいものなのです。
さらに、この物語を書いたのは(物語の中では)本作の主人公フロド・バギンズ。そしてその本を何万年も経ってからトールキンが発見して現代語に翻訳して出しているという設定となっており、世界観の重層構造が最終的に自分の言語学の仕事に回帰するという変な律義さが凄い。
そしてファンタジーといいつつ、これは地球上で起こった太古の昔の話なの?という驚きもあり、ともかく、もはやこれだけで、他のファンタジーやSF作品とは全く異なるものだとわかるでしょう。
○心のものがたり
圧倒的なスケールと映像の美しさ。戦闘シーンの迫力やアクションのスピード感などエンタテインメント大作の条件を全て兼ね備えた「ロード・オブ・ザ・リング」ですが、この映画の真の凄味は「心のものがたり」にあります。どれほど意志の強い人でも、高潔な性格でも、プライドを持った者でも、この指輪の魔力には勝てない。むしろプライドや理想によって指輪の毒にむしばまれる。そのリアルが凄いんですね。
だからこそ本作は「指輪を捨てに行く」ストーリー。普通は「指輪を探しに行く」のですが本作は逆なんですね。最初よく呑み込めないのですが、途中からわかってきます。そして、指輪の力がわかればわかるほど物語が面白くなってきます。そして最後までみると「指輪とはこれほどであったか」と気持ちにずっしり。
ストーリーの大団円となる第三部「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」はアカデミー賞11部門受賞という映画界の歴代記録を持ってますが、これはそれまでのシリーズまとめての評価・ご褒美という見方もありますが、どうしてどうして、この第三部が映画単体として恐ろしい程によくできていて―それはビシビシ感じる「指輪の力」の凄味と一見弱々しいけどそれしかないという「友情」の存在が激突し―「心のものがたり」として昇華しているからなんですね。
原作者トールキンは敬虔なクリスチャンだったといわれてますが、まさに悪魔の正体は自分の弱い心にあることが身に沁みてわかる。冥王サウロンは我々の身近にいるんです。
○何度でも観れる
「なんだかよくわからない」というのも実は「ロード・オブ・ザ・リング」の特徴です。なぜガンダルフは魔法を使わないで、しかも何かといなくなってしまうのか?エルフって表情が乏しくて何考えてるかわからない?特にガラドリエルは味方なのか?旅の仲間がどうもギクシャクしているのは何でか?ボロミアは性根の曲がった欲張りなのか?どうも釈然としないシーンが多々あるのですが、これは演出がいい加減なわけでも手抜きでもなく、ちゃんと事情があるのが「ロード・オブ・ザ・リング」なんですね。ピーター・ジャクソン監督はそのあたりをエンタメ映画らしく“わかりやすく”することなく、ある程度観ないとわからないという演出をしています。(日本のアニメだったら、速攻インテリな脇キャラが解説する部分ですね)
おかげで三部作を最後まで観た後、最初から見直すと発見ポイントが山ほどありますし、心情がよくわかってより一層泣ける物語になったりします。最初はホビットの仲間たちの冒険物語として観て、次は指輪の力をめぐる諸部族の物語として、3回目は人間の王アラゴルンとエルフの恋人アルウェンの愛の物語として観れたりもするわけです。さらに、「ホビット」観てから「ロード」を見直すというのもあります。
「ロード」では全くわからないけど、「ドワーフの楽しさや友を大事にする性質をレゴラスは前から知ってたんだなぁ」と思うと、その子供世代のギムリとの友情につながる気がしますし、あのまっすぐで愉快で強いビルボが「ロード」に至って指輪の毒に冒され、フロドの首につるされた指輪に対して、無様で下劣な欲望にまみれた姿を晒してしまうのを哀しい気持ちと共に見れるのは、最後まで「ロード」シリーズを観た人ならではの想いなわけです。円盤欲求が高い、何度でも観れる映画です。
○ピーター・ジャクソンの奇跡
映画「ロード・オブ・ザ・リング」にとって最大の幸運はピーター・ジャクソンが作ったという事でしょうね。映画は原作と違う点があるものの、そこまで問題になってないですよね。これは監督ピーター・ジャクソンによるものだと思います。ちょっとドワーフのようなポッチャリなひげもじゃルック、趣味といえば昔の飛行機のプラモ作りが得意な完全なオタ体質なわけですが、ファンたちにとってはピージャクは“神”です。
ジャクソンはかつてアニメ映画版『ロード・オブ・ザ・リング 指輪物語』を見て、その後原作小説を読み大ファンになりました。しかしそのアニメ映画は物語が途中までで、後編がいつまでたっても作られないため、「だったら自分で作ったらぁ!」ということで映画化に奔走しだすという、うらやましい自己実現をやってのけます。
彼は「指輪物語」の世界を故郷ニュージーランドにみつけました。美術はファンタジー的な奇想天外を廃し、歴史の遺物に範をとり、CGの濫用を避け、プラモ好きらしくミニチュアを使った実体感あふれる世界を作り出していきました。とはいえ、視覚効果も半端ではなく、自身が代表をつとめるWETAスタジオの映像表現は、「ロード」3部作3度にわたってアカデミー視覚効果賞を受賞するほどで、後の超メガヒット「アバター」を含め、世界トップの視覚効果スタジオといえばニュージーランドのWETAということになるほど伝説的な仕事を成し遂げました。結果、オタク気質から始まった彼の偉業は映画の枠を大いに超えてニュージーランドの観光資源にもなり、国のアイデンティティを確立しちゃいましたよね。
そんなわけで、「旅の仲間」映画公開時、字幕翻訳の戸田奈津子、日本ヘラルドをあれほど手こずらせた原作ファンたちも、同じ価値観を共有する「指輪物語」ファンの代表・ピージャクなら許す、というわけです。もちろん例外もありますが。。。
『ロード・オブ・ザ・リング』(2002年日本公開)
頼りになる仲間の勇者たちとともに、フロド・バギンズは危険に満ちた世界へと旅立つ。その目的は、大いなる力を秘めた“指輪”を滅びの山へと運び、冥王サウロンの手に二度と渡らぬよう、その魔力もろとも破壊してしまうことにあった。ファンタジー映画の概念を覆した、ピーター・ジャクソン(監督/共同脚本)による気宇壮大な3部作の第1作。驚くべき冒険がいざ幕を開ける。J.R.R.トールキンの中つ国に挑んだイマジネーション溢れる本作は、アカデミー賞(c)で作品賞を含む合計13部門にノミネート、最多4部門に輝いた。
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2003年日本公開)
遥中つ国では、アイゼンガルドのオルサンクの塔を拠点とするサルマンと、モルドールのバラド=ドゥアの塔にいる冥王サウロンが手を結んだことで闇の勢力がますます力を増大させていた。そんな中、離ればなれとなってしまった旅の仲間たちは三方に分かれたまま旅を続けるのだった。2人だけで滅びの山を目指していたフロドとサム。そんな彼らの後を怪しげな人影が付け回す…。サルマンの手下に連れ去られたメリーとピピンは隙を見つけて逃げ出し、幻想的なファンゴルンの森でエント族の長老“木の髭”と出会う…。一方、アラゴルン、レゴラス、ギムリの3人は、メリーとピピンを追う途中で、 国王がサルマンの呪いに苦しめられているローハンの騎士の一団と遭遇、周りを取り囲まれてしまう…。
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2004年日本公開)
中つ国の命運を分ける最終決戦がついに始まる。“ひとつの指輪 ”を破壊するという危険な使命を帯びたフロドとサムは、ゴラムを道先案内に燃えさかる滅びの山を目指していた。王としての務めを果たそうとするアラゴルンは、ますます増大する冥王サウロンの勢力を前に、数では劣る味方の軍勢を率いて死闘を繰り広げていた。“指輪 ”を担う者が旅の目的を遂げることに、一縷の望みを託しながら。
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