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【海外ニュース】リブート版『ヘル・レイザー』ピンヘッド役に女優がキャスティング!

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

カルトホラー映画として知られる『ヘル・レイザー』(1987)のリブート版である『Hellraiser(原題)』の制作が進行中だ。リブート版では作品のトレードマークとも言えるキャラクター、ピンヘッドを『センス8』への出演で知られる女優ジェイミー・クレイトンが演じると米DEADLINEが報じた。

『ヘル・レイザー』は、スティーブン・キングと並び称されるホラーの巨匠で、映画監督でもあるクライブ・バーカーが自身の原作を映画化したものだ。上手く組み替えると究極の快楽を得られるというパズルボックスをめぐる、SMホラーと呼んでも差し支えないテイストの作品だった。その中で最も誰の印象にも残るのは、顔面に無数の釘が刺さったキャラクター、ピンヘッドだろう。まさに目が釘付けになること間違いなし…これは普通、美しいものに対して用いる表現だが、誤用ではない。ピンヘッドの風貌には退廃的な美しさがあるからだ。オリジナル版でピンヘッドを演じたのは俳優のダグ・ブラッドレイだった。あまりに特徴的なキャラクターなので、今回の性別変更はあまりにも予想外のことかもしれない。しかし、実はそれほどおかしなことでもないのだ。数年前に、女性版ピンヘッドとも言うべき「ヘル・プリーステス」のフィギュアが発売された。クライブ・バーカーの制作スタジオと、映画作品などのフィギュア製造メーカー、サイドショウが共同開発したもので、非常に見事な造形に仕上がっている。

リブート版の監督を務めたのは、Netflixで配信中の『ザ・リチュアル いけにえの儀式』や、レベッカ・ホール主演で日本未公開の『The Night House(原題)』を手がけたデビッド・ブルックナー。『The Night House』は、特に批評家から高く評価されている。クライブ・バーカーは、「新しい『ヘル・レイザー』のデザインをいくつか見たが、1作目が生み出したものに敬意を払いながらも、これまでにない場所に到達している。これは、私が予想だにしなかった規模の『ヘル・レイザー』だ。」とコメント。新たなピンヘッドの姿はまだ明かされていないが、期待して良いのは間違いなさそうだ。

新ピンヘッド役に抜擢されたジェイミー・クレイトンはただの女優ではない。トランスジェンダーの女優だ。現在、映画界ではシスジェンダー(生まれつき割り当てられた性別と、自認している性別が一致している人)の俳優がトランスジェンダーの役を演じる機会と、トランスジェンダーの俳優がシスジェンダーの役を演じる機会のアンバランスさが問題になっている。2018年には、スカーレット・ヨハンソンが『Rub & Tug(原題)』で実在のトランスジェンダー男性役にキャスティングされたものの、大きな批判を受けすぐさま降板することになった。当時、この機会の不均等に声を上げたうちのひとりが、ジェイミー・クレイトンだったのだ。ピンヘッドにシスジェンダーとかトランスジェンダーの概念はなさそうだが、この挑戦的なキャスティングはトランスジェンダー俳優にとって大きな希望となるだろう。今年日本でも公開されたスリラー映画『RUN/ラン』では、実際に車いすユーザーである女優キーラ・アレンが主要な役を務めた。これはハリウッドでは1948年以来2度目のことだった。ホラーやスリラーは普段は侮られがちだが、今や時代を牽引しているジャンルと言っても過言ではないのかもしれない。『Hellraiser』は、オリジナル版公開から35周年となる2022年に米Huluで配信予定だ。ちなみに、去る10月5日はクライブ・バーカーの誕生日だった。今回のニュースは、我々にとっても喜ばしいサプライズプレゼントとなった。

【参照記事】

Deadline
https://deadline.com/2021/10/hellraiser-jamie-clayton-pinhead-clive-barker-producing-hulu-movie-1234851827/https://deadline.com/2021/10/julia-ducournau-agathe-rousselle-talk-titane-1234847189/