【レコメン広場】「オールタイムベスト・ホラーキャラ選手権」／投稿⑨ 蘇りし地獄のマッドコップ『マニアック・コップ』

2022.07.14

可愛らしい人形の見た目とは裏腹に、残虐な殺人を繰り広げる『チャイルド・プレイ』のチャッキー。初のドラマ作品が日本での配信を直前に控え、ホラーファンたちの注目を集めています。

白黒映画の時代から世界中で作られているホラー映画ですが、作品には必ず人々を恐怖のどん底に叩き落とす、恐ろしくも魅力的なキャラクターたちが登場します。『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス、『13日の金曜日』のジェイソン、『ハロウィン』のブギーマン、『エルム街の悪夢』のフレディ、『リング』の貞子…などなど。

そこで今回のレコメン広場では、ホラー映画を彩る最恐キャラクターを大募集します！あなた心に刻まれたホラーアイコンの魅力を存分に語って頂きます！

⬛︎投稿者：ぜんぞう さん

蘇りし地獄のマッドコップ『マニアック・コップ』

強盗に襲われ助けを求めた女性の首をへし折り、イチャつくカップルを襲撃。来るから荷下ろししていた男を突如手錠で拘束、追い回した挙句半生コンクリートに顔面を押しつけて窒息死…。これらの凶悪過ぎる残虐行為に及んだのが警察官だったら？その恐怖を描いたのが『マニアック・コップ』だ。巨大な体躯を警察官の制服に身を包み、暗闇に紛れ、常に顔は影になって窺い知れない。警棒に仕込んだ妖しく光る剣と人間離れした怪力で虐殺を繰り返す。警察署を襲撃し幾人もの警察官を無差別に殺して回るマット・コーデルと『ターミネーター』のシュワルツェネッガーを重ねて見る人もいるだろう。極悪非道、凶暴凶悪な『マニアック・コップ』、その正体は。

シリーズ1作目では『マニアック・コップ』の疑いがかけられた警官ブルース・キャンベル(！)とその不倫相手ローレン・ランドン、ベテラン刑事トム・アトキンスが事件を追う。『マニアック・コップ』の正体は、腕利きの刑事であり刑務所で死亡したマット・コーデルだった。マット・コーデルは尋問よりも発砲を選ぶデンジャラス刑事だったが、マフィアと市長の癒着を調べる内に罠にハマり逮捕、有罪、刑務所送り。囚人に襲撃され顔を切り刻まれ惨殺される。しかし、突如復活。復讐に燃える『マニアック・コップ』が誕生する。残虐な事件の合間に挿入されるマット・コーデルの刑務所での惨殺シーンはもの悲しく描かれる。切ないメロディと共にシャワー室で囚人たちに襲われるマット・コーデルがスローで映され、セピア調に加工された画面がやるせなさを増加させる。

彼を密かに支える足の不自由な恋人サリーの存在もまた切ない。罠に陥れた者たちへの復讐と権力への恨みを晴らすべく、凶行に走るマット・コーデル。その顔には無数の傷が刻まれ、醜く恐ろしく悲哀に満ち溢れている。余りにも恐ろしく悲しき怪物『マニアック・コップ』。彼の怒りに心を打たれたのは僕だけだろうか。その怒りと悲しみ故に、恐怖の怪物となった彼の凶行は心底恐ろしい。矛盾した感情を抱かせる稀有なホラー・アイコン、それが『マニアック・コップ』だ。ブルース・キャンベルとローレン・ランドンの奮闘により、どうにかこうにかマット・コーデルに打ち勝つも、ホラー映画の定番に倣い、復活。シリーズは3作目まで製作される。

2作目では、ロバート〝ジョンソン捜査官〟ダヴィが『マニアック・コップ』に挑むが、思いがけない銃の腕前を披露し、火だるまになりながら警官を虐殺して回るマット・コーデルの派手さくらいしか見所がなく、3作目に至っては、火だるまカーチェイスシーンしか記憶に残らない凡作だ。シリーズを重ねるたびにマット・コーデルの顔が益々人間離れしていくのも、逆効果だったのではないか。それにしてもマット・コーデルを演じたロバート・ツダールのインパクト絶大な顔よ。一度見たら絶対に忘れることの無い、その顔。『デッド・フォール』ではスタローンとカート・ラッセル相手にその存在感を遺憾なく発揮する。彼なくして『マニアック・コップ』はない。

ところで自分が初めて『マニアック・コップ』を鑑賞したのは淀川長治の『日曜洋画劇場』だった。その時は『地獄のマッドコップ』というタイトルで放送されたのだが、こちらのタイトルも結構気に入っている。さらに、『地獄のマッドコップ』では『マニアック・コップ』本編にないラストシーンが追加されている。というか、最初に見たのが『地獄のマッドコップ』だったので、中古VHSで鑑賞した『マニアック・コップ』ではラストシーンが削除されてる？と驚いたものだった。もし鑑賞出来る機会があるのなら、ぜひ、『地獄のマッドコップ』バージョンを鑑賞してほしい。

数年前にニコラス・ウィンディング・レフンが『マニアック・コップ』をドラマ化すると発表されたが、一向に続報が来ない。レフンがどう『マニアック・コップ』を調理をするのか興味深かっただけに、続報が無いのが寂しい。蘇りし地獄のマッドコップ『マニアック・コップ』。ぜひ、その恐怖と悲哀を目の当たりにしてほしい。