明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選/#8『50回目のファーストキス』福田組らしいシュールな笑いの数々!悲しさと笑いが交錯するリメイク作品!
映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。全20回に渡って「生きる原動力になるコメディ映画」をテーマに1本ずつ映画を紹介させていただきます!私がコメディ映画を観たいと思うのは、心が沈んでいるときや現実逃避をしたいとき。だからこそ、爆笑までしなくとも、観ている間だけでも楽しい気分にさせてくれる作品をテーマにピックアップしていこうと思います。
今回選んだのはアダム・サンドラー主演…ではなく、山田孝之が主演!
日本版『50回目のファーストキス』
前回の作品も含め、この特集で度々ご紹介してきたアダム・サンドラー。彼の出演作はバカバカしいコメディばかりですが、その中でも恋愛要素が際立つ『50回目のファースト・キス』は日本でも人気なロマンスコメディです。事故に遭い、事故の日以降の記憶を一日以上維持することのできなくなってしまったルーシー(ドリュー・バリモア)とプレイボーイのヘンリー (アダム・サンドラー)が出会い、周囲に反対されながらも、お互い惹かれあっていくという物語。
ハワイの色鮮やかな景色とともに繰り広げられるこの温かいラブストーリーは、実は2018年に日本でリメイクされました。手がけたのは「勇者ヨシヒコ」シリーズなど、シュールなコメディを作り続ける福田雄一監督。日本版では福田組常連俳優たちがハワイに飛び出し、原作の面白さを残しつつ、オリジナリティを加えた物語を展開していきます。
福田組らしいシュールな笑いの数々!
福田監督といえばコメディ映画のイメージが強いですが、実は『高校デビュー』『ヲタクに恋は難しい』などラブストーリー(?)も手がけてきました。日本を代表するコメディ作品の数々を生み出してきた福田監督こそ、アダム・サンドラーが表現するラブコメを日本版に置き換えて作り上げるのにぴったりだと言えるでしょう!
日本版では、旅行会社で働きながら天文学の研究に勤しむ主人公・大輔を山田孝之、ハワイで暮らす日本人のヒロイン・瑠衣(名前がハリウッド版のルーシーっぽいですね)を長澤まさみが演じています。
先述の通り“これぞ福田組”という常連俳優たちが登場。その中でもおそらく有名なのは佐藤二朗ではないでしょうか? 毎回アドリブ感の強いギャグや自主ツッコミを見せていますが、今回は瑠衣の父親という少しシリアスな役どころ。それでも家族への愛と不安を感じさせる演技を見せつつ、佐藤二朗らしい笑いも織り交ぜる演技を見せてくれます。
さらに、仲野太賀が演じる瑠衣の弟もかなり変わり者。筋トレしまくりの陽気なおバカキャラで、父親と共に瑠衣を明るく支えています。本来であれば、家族もかなりナーバスで、そこに部外者の大輔が入ってくることを良くは思わないはずです。それでも彼らが持っている持ち前のコメディ力で、もう少し視聴者にも気楽に見てもらえるような作品になりました。
一方、大輔を良き親友として傍らで支えるムーラを演じるのはムロツヨシ。「勇者ヨシヒコ」シリーズではニセ教祖のメレブとして、勇者役の山田孝之に対して時にツッコミ、時に一緒にふざける仲間を演じていたため、長年のファンにとってはこのタッグは嬉しかったはず……。本作でも一緒にふざけているだけかと思いきや、大輔が瑠衣との一筋縄ではいかない関係性に悩んでいた時、一番近くで見ていた人間として客観的な助言をするなど親友としてできる最大限のことをしてくれる本当に“いいやつ”。その空気感をだせるのはムロツヨシだからこそだと思います。
ハリウッド版との違い、プラスされたコメディ要素
ハリウッド版と日本版ではどんなところを変更して作られたのか、というところですが、実は基本的にハリウッド版に忠実に作られています。ただ、出演キャラクターが基本的には日本人であることから、設定は若干微調整されているところもあります。
主人公の職業については大きな変更が。ハリウッド版でヘンリーは水族館に勤める獣医で、アラスカに調査をしに行くことを望んでいますが、日本版の大輔は旅行会社のツアーガイドとして勤める傍ら、天文学の研究で成功してアメリカ本土に渡ることを夢見ています。ツアーガイドということもあって「日本人はこういうことをすれば、はしゃぐんだろう」と考え、歴史が“ありそうな”石像を作り出したり……ハワイに来て浮かれる日本人たちを皮肉った言動が多いです。確かに、ハワイに来て羽目を外す日本人たちは多いと思いますし、そういった冗談が含まれている点は「日本版ならでは」と感じるところでしょう!
ハリウッド版のファンとしては、日本版のリメイクは賛否両論あるかもしれませんが、根本的なテーマである、家族や友人たちが注ぐ「愛」については何も変わることなく、ハリウッド版同様に純粋に描かれています。そこに福田組独特のコメディ要素が合わさり、悲しさと笑いが交錯するような、しんみりしすぎない新しい作品になっています。
また、福田雄一監督と言えば、Netflixオリジナル映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』が配信スタートするや否や、Netflixの週間グローバルTop10(非英語映画)で一位を獲得するなど、衰えることなく大活躍しています。次回は福田監督続きで、そんな『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』を中心に取り上げようと思います!お楽しみに!
伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
関連記事:【ENDROLL】「ライターとして生きる。」ライター 伊藤万弥乃 さん(前編)
『もしも昨日が選べたら』(2006)
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【ストーリー】
ハワイでコーディネイターをするプレイボーイ弓削大輔(ゆげだいすけ)はある日、カフェで藤島瑠衣(ふじしまるい)という女性と出会い恋に落ちる。しかし、翌日同じカフェで会った彼女は大輔の事をまるで覚えていない。実は彼女は交通事故の後遺症により、新しい記憶は1日で消えてしまう短期記憶障害を負っていたのだ。彼女を想う父と弟の手で、その事実を隠され、同じ日を繰り返す瑠衣。事情を知った大輔は、毎日、自分を覚えていない彼女に一途に愛を告白し続ける。瑠衣にとっては毎日が大輔との初対面。大輔の機転と努力により結ばれた二人だが、大輔の本当の夢を知った時、瑠衣はある行動に出る。
【キャスト】
山田孝之 長澤まさみ ムロツヨシ 勝矢 太賀 山崎紘菜/大和田伸也 佐藤二朗
【スタッフ】
脚本・監督:福田雄一
音楽:瀬川英史
主題歌:平井堅「トドカナイカラ」(アリオラジャパン)
プロデューサー:北島直明 松橋真三
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)2018 『50 回目のファーストキス』製作委員会
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