明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選/#7『もしも昨日が選べたら』キーになるのは“リモコン”の便利さとファストフード!
映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。全20回に渡って「生きる原動力になるコメディ映画」をテーマに1本ずつ映画を紹介させていただきます!私がコメディ映画を観たいと思うのは、心が沈んでいるときや現実逃避をしたいとき。だからこそ、爆笑までしなくとも、観ている間だけでも楽しい気分にさせてくれる作品をテーマにピックアップしていこうと思います。
今回選んだのはアダム・サンドラー主演
『もしも昨日が選べたら』
第7回となる今回選んだのは映画『もしも昨日が選べたら』(2006年)です。以前この特集でご紹介した『ウソツキは結婚のはじまり』でのキャラクターとは打って変わって、アダム・サンドラーは本作で妻にも子供にも好かれており、建築士としての仕事も順調なマイケルを演じています。
しかし、少し生活が仕事に傾いており、家族との関係が崩れそうな予感が漂い始めます。キャリアのために仕事を頑張りたいけれど、家族と大切な時間も捨てられない……イライラしてしまった彼は、少しでも効率的に過ごすために家中にあるリモコンを一つにまとめたいと考え、ホームセンターに向かい、倉庫の奥深くで万能リモコンを手に入れます。
が、なんと、このリモコンはテレビや照明の電源だけでなく、現実世界の音声制御や一時停止、2画面視聴まで可能なリモコンなのでした。そのほかにも、「人生メニュー」を選択すると生まれる瞬間から、過去の人生を追体験でき、未来のチャプターまで飛ばすことができる優れもの。一方、早送りされている間の自分は自動操縦となってしまいます。マイケルは、この便利な機能を利用して面倒なことを早送りすることに慣れてしまい、大事なことを理解できない、一人よがりな人間になっていきます。
キーになるのは“リモコン”の便利さとファストフード
先述の通り、登場する魔法のようなリモコンは、テレビのリモコンにある機能はなんでも利用可能で、早送り・チャプター飛ばしをすることができるだけでなく、観る対象を縮小したり拡大したり、別言語の吹き替えにしたりすることができてしまうのです。そのため、日本人との仕事の時には日本語を翻訳して本音を探り、本当に求めていることを提供して契約締結まで持っていくことができました。そういった仕事の成功はだけでなく、上司を一時停止して目の前でおならをしてみたり……あったらいいなと思う機能ばかりで、遊び心も満載です。
『ウソツキは結婚のはじまり』でもそうでしたが、アダム・サンドラー自身が特殊メイクをして登場するシーンも衝撃的かつシュールな笑いを誘います。肥満男になったシーンと脂肪吸引をした後のシーンは、対照的なのでぜひご注目ください……さすがアダム・サンドラー!と思わず言ってしまうような、彼なりの世界観に引き込まれていきます。
こんな楽しいことが起こる一方で、やはりリモコンはいいことばかりもたらすわけではありませんでした。自分が昇進できないことで家族に迷惑をかけているのを見たくなくて、昇進するまで早送りすると、妻との関係も悪化し、愛犬も死んでおり、子供たちも成長している姿を目の当たりにすることになります。止めたくても、リモコンには学習機能があって、勝手に早送りになってしまうのです。
そして妻にはいつのまにか別のパートナーができ、父親と交わした最後の言葉も心無いものになってしまっていることを知り、自らのために早送りをしてきたことを悔やみます。
筆者は、『パーム・スプリングス』や『ハッピー・デス・デイ』など、タイムリープものが好きでこの映画を発見しましたが、共通して言えるのはこの“時間”による沼にハマってしまう人間は善人ではないということです。自分のことばかり考えて生きてきた人たちにとっては罰のようなもの。自己中心的で、自分の都合の良い面ばかりを見て生きていても、他人に迷惑をかける人間になっていくだけです。苦労や面倒なことがあるからこそ、人生は輝くし、いいものになるということをこの映画は教えてくれているように思います。
最後に、マイケルのようにファストフードばかり食べると将来不健康になる!ということも忘れないように。手軽においしく食べることができるからといって、それに依存してしまうと、劇中のマイケルと同じく病気を発症して人生取り返しのつかないことになるかもしれません。まさに、便利な魔法のリモコンがマイケルにもたらしたように、ファストフードは私たちの生活をむしばんでいるかも?
健康的に、そして周りに感謝して自分なりに生きていくことが大切だと思わせてくれる、『もしも昨日が選べたら』は笑えて人生の価値を教えてくれる映画です。
伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
関連記事:【ENDROLL】「ライターとして生きる。」ライター 伊藤万弥乃 さん(前編)
『もしも昨日が選べたら』(2006)
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【ストーリー】
出世=家族の幸せと考えるマイケルは、愛するドナや二人の子供と過ごす時間よりも仕事を優先させてきた。そんなある日、電化製品だけでなく人生さえも自在に操れる夢のような“万能リモコン”を手に入れる。そのリモコンで家族との面倒な時間や、出世までの道のりを早送りするマイケル。すべてが夢に見た通り、面白いように人生が進んでいく。しかし、早送りしたことで失われた時間の代償は大きかった…。果たしてマイケルは、本当の幸せをつかむことが出来るのか!?
【キャスト】
アダム・サンドラー、ケイト・ベッキンセイル、クリストファー・ウォーケン ほか
【スタッフ】
監督:フランク・コラチ
脚本:マーク・オキーフ、ニール・H・モリッツ
製作:スティーブ・コーレン マーク・オキーフ
撮影:ディーン・セムラー
音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
美術:ペリー・アンデリン・ブレイク
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