第62回:『いのちの停車場』|みんなで食べたパオは家族と愛情の象徴!【瀬田ミナコのシネまんぷく】
共感シアターでもお馴染み、女優の瀬田ミナコによる連載コラム。毎回「映画」と「食」をテーマに、ゆるゆるとお届けします!
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■今回の映画:『いのちの停車場』(2021)
今回は劇場公開中の映画「いのちの停車場」を選びました。
映画を観ながら何度も泣いてしまったし、登場人物たちが誰かを想う気持ちに心が温まりっぱなしでした。しかし、その温かい気持ちのまま劇場を後にできるのかと思いきや、最後には答えの出ない、悩ましい問題を突き付けられます。映画の中では明確には描かれることのなかったラストシーンの意味を、いつまでも考えてしまうような作品でした。
現役医師の南杏子さんの同名小説を原作に作られた、映画「いのちの停車場」は、在宅医療を通して患者や家族の「いのちの終わり方」を描いた作品です。
主役の白石咲和子を演じたのは吉永小百合さん。その職場の仲間を西田敏行さん、松坂桃李さん、広瀬すずさんが演じ、咲和子の父親として田中泯さんも出演。さらに咲和子らが診察する患者達も豪華キャストが演じています。監督を務めたのは成島出監督で、観る前から泣く予感がしました。(笑)
白石咲和子は東京の救命救急で働く医師でしたが、とある事件の責任をとって病院を去ります。それを機に、実家の金沢へと戻り『まほろば診療所』で在宅医療を行う医師として働くことになるのです。大きな病院でやってきた医療との考え方の違いに、最初は驚く咲和子でしたが、まほろばの院長である仙川や看護師の星野麻世、そして在宅医療を望む患者達と向き合ううちに、少しずつ考え方も変わっていきます。
やがて咲和子は、在宅医として患者一人一人の生き方を尊重した医療を行うようになりますが、そんな中、父・達郎が病に倒れてしまい、緩和医療の利かない病気に苦しむ父は、ついに苦しみからの永遠の解放を望むようになります。痛みに苦しむ父親の横で咲和子もまた、医者として、娘としての心の葛藤に苦しむのでした。
作中のセリフにあった「命のしまい方」という言葉が強く印象に残り、病気と闘い続け「長く生きたい」と思う人もいれば、「穏やかに自分らしく最期を迎えたい」という人もいるし、本当に人それぞれなんだなぁ…ということを感じました。だから、咲和子が大きな病院で働いていた頃の人の命を救う医療も絶対に必要な事ですが、考え方の方向性が異なる『まほろば診療所』の医師の仕事も大変難しく、そしてとても重要な医療だと思います。
色んな患者さんが登場しますが中でも印象的だったのは、小児がんの少女のエピソードです。自分の死を悟っている本人と、まだ幼い娘に間もなくやってくる死を受け入れられずに取り乱す両親の姿が、観ていて本当に切なかったです。行けなくなる前に海に行きたい少女と、体に障るのを恐れ絶対に行かせたくない両親。その子のためを思った時、「何が正解なんだろう」と考えさせられました。
柳葉敏郎さん演じる末期癌の患者さんのエピソードでも、同じ疑問が頭をよぎりました。その患者さんは、昔家を出て行ったきり会えていない息子の事を気にかけており、ベットの横には息子が幼いころに遊んでいたプラレールを置いていました。
彼に最期の瞬間が近づき、妻や咲和子らは最後にどうにかして息子に会わせてあげたいと願いますが音信不通状態。咲和子はとっさに、まほろばのスタッフである野呂に息子のふりをしてもらい、患者さんに声をかけさせます。本当は息子が父親に会いに来ることはなかったのに、嘘をつくなんて良くないんじゃないかという気持ちと、最後に笑顔にしてあげられるなら良かったのかな、という二つの気持ちになりました。
どのエピソードも考えさせられるけど、家族の愛やまほろばの皆の行動に心が温かくなるものばかりです。そして最後には咲和子の父の話になります。病気になる前から自分の命のしまい方は自分で決めたいと願っていた父は、死を望み、それぞれの人の生死を尊重してきた咲和子の頭には安楽死という言葉がよぎります。
咲和子の決断ははっきりと描かれず、この最後のエピソードだけは絶望してしまいました。
最初に触れた通り、豪華キャストが勢揃いの今作ですが、吉永小百合さんをはじめとする名優はもちろん、松坂桃李さんと広瀬すずさんの若者二人がすごく良かったです。松坂さん演じる野呂の、不器用で頼りないけど、優しくて真っすぐな所が映画を未来を明るくしてくれますし、広瀬すずさんの少女と母親が混ざったような絶妙な演技が素晴らしかったです。
この二人が、映画の中の「希望」なんだなぁなんて思いました!
それぞれの俳優さんたちの素晴らしかったところをあげたらキリのない映画ですが、すごく強く思ったのは吉永小百合さんが自分の担当医だったらこんなに素敵なことはないということです。あの上品で優しい声で励まされたら、穏やかな気持ちで病気と向き合えそうだし、なんなら病気も治っちゃいそうです!本当に素敵でした!
さて、家族のようなまほろばの皆ですが、彼らの食事処はモンゴルびいきの料理屋さん「BAR STATION」 です!みなみらんぼうさん演じるマスターの作った、まほろば御用達の場所。今日作る料理は、そんな「BAR STATION」で食べていたパオ(肉まん)です。
咲和子の後押しもあって、新たな治療に挑戦していた女流囲碁棋士が亡くなった後、皆で追悼の気持ちを込めて食べた料理です。肉まんが中国の方ではパオと呼ばれることと、その白くて丸い見た目から、モンゴルの移動式住居・パオにかけられており、家族を思わせる一品でした。
それではさっそく作っていきます!
まずは皮の部分を作ります。薄力粉、強力粉、ドライイースト、ベーキングパウダー、砂糖、サラダ油をボウルに入れ、少しずつ水を入れながら混ぜていきます。
纏まってきたら手でしっかり捏ねていきます。表面が滑らかになって手にくっつかなくなってきたら、OK!
ラップをして、発酵させます。
肉だねは、玉ねぎと豚ひき肉で作っていきます。
玉ねぎをみじん切りし、ひき肉と一緒にボウルに入れます。パン粉、ウェイパー、醤油、砂糖、ごま油、片栗粉を入れて手で混ぜます。
生地の発酵が終わり、肉だねをちょうどいい大きさに丸めたらいよいよ包んでいきます。
生地を麺棒で伸ばし、肉だねを乗せ、包んでいきます。本当の肉まんは回しながら包むイメージですが、そんな難しいことはできないので、対角線同士を合わせて包みました!
蒸し器で蒸したら完成です!
蒸したら二回りほど大きくなりました!パオの形のようにできたかな?
手作りの蒸したて肉まんは皮も中身もしっとりフワッフワで美味しいです!
ひき肉がシューシーでとっても柔らかくて、甘みのある皮によく合います。手で食べられることもありパクパクいけちゃいます!
おやつにも軽食にもちょうどいい、家族みんなで幸せになれるお味でした!
ごちそうさまでした。
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今回取り上げた作品はコチラ!
【キャスト】
吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、南野陽子、柳葉敏郎、小池栄子、みなみらんぼう、泉谷しげる、石田ゆり子、田中泯、西田敏行
【スタッフ】
監督:成島出
脚本:平松恵美子
原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎)
©2021「いのちの停車場」製作委員会
公式HP:https://teisha-ba.jp/
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瀬田ミナコ(Acstar所属)
1996年4月3日生まれ 東京都出身
出演作品:映画「ゆずりは」「不能犯」(2018)
映画「種まく旅人~華蓮のかがやき~」全国順次公開中!!
その他:共感シアターでMCやコメンテーターとして活躍中
Acstar:http://acstar.jp/talent/minako_seta.html
Twitter:@minako_seta
『瀬田ミナコのシネまんぷく』これまでの連載記事はこちらから!
https://moviemarbie.com/special/cinemanpuku_index/
※瀬田ミナコが出演中の共感シアターのアーカイブ動画はこちら!
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