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「ムービーマービーアワード2021」ノミネート作品⑤『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ダニエル・クレイグは最高のボンドか?

ムービーマービーが読者の皆様と共に毎年ベストな1本を決める最もユーザーフレンドリーな映画賞「ムービーマービーアワード」。今回は、昨年末からTwitterで募集した作品と、ムービーマービー編集部が選出したノミネート作品、計14本の中から今年度の「ぜったい面白い映画大賞」を決定します!

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ノミネート作品⑤
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
ダニエル・クレイグは最高のボンドか?

ダニエル・クレイグは最高のボンドか?。この答えは簡単ではないですね。「007」シリーズはまさに時代とともにあったスパイアクションですから、女をビシビシひっぱたくショーン・コネリーや、宇宙まで行って優雅にキメるロジャー・ムーアなど、今では考えられないボンド像でも、当時多くの映画ファンの心をわしづかみにしていたのは事実なので、現代視点から並列に評価はできない。ボンドはその時代、時代の「イイ男」なのです。

もちろん、最新ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグは、その昔のジョージ・レーゼンビーより哀愁があり、ガチアクションの割にはティモシ―・ダルトンほど汗臭くなく、ピアース・ブロスナンより、走り方も上手です。

でも私がクレイグ=ボンドが抜きんでて素晴らしいと思うのは、シリーズ全体の価値を高めたと思うからです。

何かといえば、本作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」はクレイグ版に決着をつけた作品と言われてますが、これまでのシリーズ全ての大団円となっているんです。

「007」には、細々ではあるけど“グランドストーリー“が存在します。

登場人物やボンドカー、愛銃のワルサーPPKもそんな要素といえなくもないですが、やはり宿敵スペクター、そのラスボス・ブロフェルドとの因縁、そして特別なボンドガールとの恋愛模様に重点が置かれていて、ファンは緩い設定のバカみたいなストーリーの中に秘められた、この2大要素を拾って、面白がっていたものです。

実際、1969年の「女王陛下の007」はそのあたりの総括的な内容で、これまで陰に隠れて猫をなでていたブロフェルドと遂に直接対決し、ボンドガールのトレーシーとはいつも通りのアバンチュールかとお思いきや、本気で好きになって結婚してしまうという驚きの展開をみせたのです。この物語は最終的にその花嫁が殺されるという衝撃的な結末を迎え、ボンドは本当の涙を流す。

この作品はシリーズの鍵を握り、その後のボンド像にも微妙に影を落としてるんです。

「ダイヤモンドは永遠に」(コネリー=ボンド)、「ユアアイズ・オンリー」(ムーア=ボンド)、「消されたライセンス」(ダルトン=ボンド)、「ワールドイズ・ノット・イナフ」(ブロスナン=ボンド)・・・。

上記の作品は、ブロフェルドとのその後に触れるものもあれば、亡き妻の墓参りをしたり、過去に愛する人を失った話をするなど、ボンドの過去がわかるシーンが垣間見れます。

(ブロッコリ他プロデューサー陣もボンドの人物像として、ここは永続的に大事にしていたことが伺えます)

クレイグ版007は、これまでのボンドと縁を切ったようなカタチで始まりましたが、回を重ねるにつれ、マニーペニーが戻り、Qが、アストンマーチンDB5が戻ってきて、最高傑作といわれる「スカイフォール」はオマージュがちりばめられた中、ボンドの出生の秘密に触れた素晴らしい物語でした。実際、クレイグ版007はここで終わりでもよかった。

だとすると、続く連作「スペクター」と「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は何なのか?単なるオマージュではなく、もう一歩進んで過去の物語をすべて含んでボンドの「運命」を進める映画だったんじゃないか。

故に、同じような役割を過去に果たした「女王陛下の007」に対するアンサー映画となっているのです。(音楽からシチュエーションから、観たことのある人なら、もう完全に下敷きになってるのがわかる。)

そして、その「運命」とは家族でした。

クレイグ=ボンドが最後に挑むのは恋人でなく、家族を失うかもしれない悲劇との戦い。カチンコチンの冷たい世界で生きてきたスパイの心に灯をともした娘の存在は、ジェームズ・ボンドという人間像にこれまでにない側面を浮かび上がらせます。

愛する者のためなら何の躊躇もなく土下座できる、プライドもへったくれもない、それは生々しいお父さんの姿。これはスパイとしては、とてつもない弱点を背負ってしまったという事を意味します。ただそれ故の強さもあるということを彼は最後に示す。

「女王陛下の007」の時は家族を失ったが、今回はそうはさせないという命の使い方。これは今後、どんなにカッコいいジェームズ・ボンドが出てきたとしても超えられない要素になるかもしれない。

何にせよ異様な映画です。何度も観たいけど、最後の部分は二度と観ないと思います笑

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

 

【キャスト】
ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、ラッシャーナ・リンチ、アナ・デ・アルマス、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、ナオミ・ハリス、レイフ・ファインズ

【スタッフ】
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
脚本:ニール・パーヴィス & ロバート・ウェイド、キャリー・ジョージ・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
撮影監督:リヌス・サンドグレン
音楽:ハンス・ジマー
共同製作:ダニエル・クレイグ、アンドリュー・ノークス、デヴィッド・ポープ
主題歌:ビリー・アイリッシュ
配給:東宝東和

NO TIME TO DIE © 2021 Danjaq & MGM. NO TIME TO DIE, 007 Gun Logo and related James Bond Trademarks, TM Danjaq. Package Design © 2021 MGM. All Rights Reserved.

公式サイト:https://www.nbcuni.co.jp/movie/sp/007no-time-to-die/

 

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