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【今週のおすすめ】『ヤクザと家族 The Family』(後編)/「ヤクザと家族」にみる、深い闇と、深い愛


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【今週のおすすめ】『ヤクザと家族 The Family』(前編)/きっと、あなたの【生涯の1本】が塗り替えられる。

■ヤクザは携帯持てない?子供は幼稚園入れない?

『ヤクザと家族』の河村光庸プロデューサーは今作の制作意図について

「ヤクザは人間社会の矛盾と不条理が集約された形で今日まで生き残ってきました。ところが2012年の暴対法及びその関連条例により、ヤクザは一括りに「反社」として扱われ、真っ先に排除される対象となってしまいました。もはやヤクザは携帯も持てないばかりか、ヤクザの子供は幼稚園にも入れないという、本人ばかりでなくその親・妻・子供まで及んでいて、その事をメディアも報道しないというのが実態です。それによって収入もなく、貧困から組織ばかりか家庭も崩壊するしかないヤクザとその家族の人権をどう捉えたらいいのでしょう?「家族とは?人権とは何なのか?」現代社会のリアルな暗部に潜んでいるテーマをこの映画は問題提起しているのです。」

これほどのエンターテインメントに隠された事実、皆さんはご存じでしたか?

「ヤクザと家族」が東映をはじめとした他社のヤクザ映画と圧倒的に違うのはヤクザをヒーローではなく、ダークヒーローでもなく、《社会現象》として捉えているところですね。これはヤクザをテーマとしつつ、現代社会の深い闇を映し出している映画なのです。

今回は本作の背景となったヤクザの実態について書いてみたいと思います。

■ヤクザは必要悪?といわれる中身とは

まずヤクザとは何か?振り返ってみると、古くは「清水の次郎長」などの親分がまず思い起こされます。侠客ですね。「銭形平次」など岡っ引きといわれる人たちや「め組」など火消しなども実はヤクザといっていい。ヤクザはそもそも地域の調整役でした。江戸時代、幕府は警察機能の多くを自治に任せていたんですね。それでヤクザです。ただいろんな奴がいて、ゆすりタカリをするような輩も昔からいたようですが、えらい親分は地域社会から畏怖される存在だったようです。

そんなヤクザがなぜその後の暴力団になっていったか?これはもう実は日本政府のせいもあるんです。第二次世界大戦後、世界に拡散した共産主義に対する警戒感から日本政府は児玉誉士夫などフィクサーと呼ばれる人物に頼んで任侠団体や右翼団体を糾合して左翼を封じ込めようとしました。これを契機として広域暴力団が登場し、高度成長期の恩恵を受けて組織を全国展開し始め、地域ヤクザを次々に飲み込んで巨大化していきました。つまり政治の事情が巨大な犯罪組織を生み出したといえるのです。

もうひとつのヤクザの真実は、はみ出し者たちのセーフティネット機能を社会で果たしているという事です。ヤクザは本作の主人公のように不幸な生い立ちの人間もいますが、被差別部落出身者や在日朝鮮人などが結構多いのです。

日本は一見、総中流社会などと言われますが、違います。単一民族の均一化された社会だからこそ、はみ出した人間、落ちこぼれた人間にとっては生きづらい国なのです。生まれで最初から普通に生きられない人々もいます。飢え死にするか、犯罪に手を染めるかしかない。そんな人たちが頼れるのは裏の世界しかありません。彼らは生きていくためにヤクザ社会を形成し、時には荒っぽいことや非合法なことにも手に染めて生きてきたのです。

そして、社会からはみ出した彼らだからこそ、強い結束があります。同じ境遇の仲間たちは、親子・兄弟の盃を交わし、実の肉親以上の絆を結んで組(ファミリー)を形成していきます。自分のファミリーが誰かにやられたら、黙っているわけにはいかない。だから強い絆は一方で永遠に終わらない復讐の連鎖を起こす、抗争の火種になります。ただ、そもそもそれはヤクザが厳しい環境の中生きていくため互いを結びつける深い愛が作用しているのです。

■「ヤクザと家族」が突き付けるものとは?

つまり、元々は地域の調整役であり、社会の底辺・はみ出し者の受け皿の役割を果たしてたヤクザ組織が、政治の要請によって巨大な犯罪組織としての道を歩んでしまったがために、セーフティネット的な面もあるのに根こそぎ社会から排除されているのが現状なのです。

まさに時代に翻弄されたということになるでしょう。
しかし、ヤクザがいなくなったからと言って「闇」がなくなるでしょうか?貧富の差が広がり、子供の貧困が問題視される現代、さらに地下に潜った新たな非合法の集団が次々に勃興することは目に見えてます。

本作は1999年、2005年と2019年でスクリーンの色が明らかに変わります。

それまでの夜のネオンやギラギラした雰囲気と打って変わり、最後の2019年のシーンは色あせたグレーの光景が広がります。これは主人公の目から見た世界の色だと思いますが、考えてみてください、彼がヤクザだろうが何だろうが、関係ないのです。

まさしくこれは、今、我々が生きている時代の色のなのです。

そして、それを観るもの全ての心に強烈に突きつける映画、それが「ヤクザと家族」なのです。

 

★『ヤクザと家族』メイキング写真集

 

【ストーリー】
ヤクザという生き方を選んだ男の3つの時代にわたる壮大なヒューマンストーリー。1999年、父親を覚せい剤で失い、その日暮しの生活を送っている時に、柴咲組組長の危機を救った男・山本賢治(綾野剛)。自暴自棄になっていた自分に手を差し伸べてくれた柴崎博(舘ひろし)に心の救いを得て、二人は父子の契りを結ぶ。2005年、短気な面もあるが一本気さのある山本は、ヤクザの世界で男をあげていく。激化する因縁の相手・侠葉会との争い、自分と同じような境遇で育った女性との出会い、大切な家族である仲間を失ってしまうなど、人生を大きく揺り動かす激動の瞬間に愚直なまでに向き合って生きる山本、そして彼は自分の【家族・ファミリー】を守るために、ある決断をするー。2019年、14年もの年月を犠牲にした山本が出所後目の当たりにしたのは、暴対法の影響でかつての隆盛の影もなく、存続していくのもギリギリな状態に一変していた柴咲組の姿。時代の流れによる大きな変化に戸惑いながらも、愛する家族との生活を望み、新たな人生を歩もうとする山本に、状況を根底から揺るがす事件がー。

【キャスト】
綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮龍太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ

【スタッフ】
監督・脚本:藤井道人
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸

配給:スターサンズ/KADOKAWA
製作:2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

公式HP:yakuzatokazoku.com