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【海外ニュース】ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作の主演女優、名脇役のジョン・C・ライリーから太鼓判

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

名脇役俳優として知られるジョン・C・ライリーが、米Interviewのインタビューでポール・トーマス・アンダーソン監督最新作『Licorice Pizza』主演のアラナ・ハイムの演技を激賞した。『Licorice Pizza』はポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)の9作目の長編作品で、1973年のカリフォルニア州サンフェルナンド・バレーを舞台に、若きアラナとゲイリーの一筋縄ではいかない初恋を描いた青春映画だ。

今作で主人公を演じたのは、サンフェルナンド・バレー出身で、3姉妹ポップ・ロックバンド、HAIM(ハイム)のボーカル・キーボードを担当しているアラナ・ハイム。映画出演は初めてで、演技の経験は学生時代に二度務めた、『オズの魔法使い』の“西の悪い魔女”役のみ。PTAは世界の映画祭の常連、大監督であり、レオナルド・ディカプリオも尊敬している名優中の名優ダニエル・デイ=ルイスとも『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と『ファントム・スレッド』でタッグを組んでいる。なぜこんな異例なキャスティングが実現したのか。

アラナはインタビューで、PTAは小学校の美術教師である母親の教え子だったと明かし、「私の全人生で『ブギーナイツ』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を観る度に、母親は『私が彼を教えたのよ。私のおかげで彼は芸術的になったの』と言っていました」とのこと。PTAはミュージックビデオも手掛けているが、2017年以降はHAIMのビデオも複数監督しており、その流れで出演を打診されたようだ。

PTAは自身の映画作品でよくミュージシャンをフィーチャーする。『マグノリア』はエイミー・マンの曲にインスパイアされているし、『インヒアレント・ヴァイス』にはジョアンナ・ニューサムが不思議な役どころで出演している。そしてどちらも、作品公開の前後にビデオを撮っている。PTAとアラナの関係には非常に面白い偶然が絡んでいるが、出演はある意味必然でもあったわけだ。

▼予告編はこちら

ジョンは今作のアラナの演技を暖炉や赤ちゃんに例え、「目が離せないものだった」と表現している(この世には、暖炉で火が燃えているだけの映像を延々流し続けるTV番組が存在する)。さらに、「そんな気持ちにさせてくれるのは、他にはホアキン・フェニックス(『ザ・マスター』『インヒアレント・ヴァイス』)だけです」とも。この言葉だけで今作への期待が高まる!

さらに気になるのは、アラナの相手役だ。何とこちらも映画初出演、初々しい18歳のクーパー・ホフマンが務める。「ホフマン」と聞いてピンときた方はきっとPTAファンだろう。そう、『パンチドランク・ラブ』をはじめPTA作品のほとんどの作品に出ていたが、2014年に惜しまれながらも亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンの息子なのだ。アラナは「お互い演技をしたことがなかったので、全てに不安がありました。毎日のようにクーパーと電話しては、『私たちは最悪だよ、何やってるんだろう』って。彼と今回の経験ができたことは最大の贈り物です」とインタビューで語っている。

またジョンも、アラナとクーパーの2人の絆の深まりを実感したそう。そして最後にPTAとの思い出としてコンプレックスである自身の曲がった歯に関するエピソードを打ち明けている。「ポールに一度『歯を治したい』って言ったことがあるんですが、そうしたら彼は『一体全体どうしてそんなことをするんだ? どうかしちゃったのか? まさにそれが君を君たらしめているのに』って。ポールは人々の美しい欠点に注目しているようですね。それは彼の作品で繰り返されるテーマのようです」と。同様に、バレエの練習中の事故で、曲がった歯を持っているアラナもジョンに同意している。奇しくも、この話はアラナが過去に唯一演じた“西の悪い魔女”にも繋がってくる。『オズの魔法使い』ではこの魔女は、単なる悪役として描かれているが、劇団四季のミュージカルにもなっている前日譚『ウィキッド』では違う。魔女こと少女エルファバは、人と違う緑色の肌を持って生まれたために孤独に生きている。しかし、最初は反目しているが後に親友となる同級生のグリンダなど、ありのままを受け入れてくれる人物たちと出会い、人生が開けていくのだ。PTA作品では、(特に内面に)非常に問題のあるキャラクターばかりが登場するが、奇妙なことにその誰からも「目が離せない」。アラナとクーパーはいわゆる美男美女ではないけれど、きっとそれを補って余りある演技を見せてくれるだろう。

アメリカでは今年の11月26日公開予定だが、日本での公開予定は未定。しかし、PTA作品はデビュー作の『ハードエイト』を除く全作が劇場公開されているので、時間の問題かと思われる。

 

参照:

https://www.interviewmagazine.com/film/alana-haim-talks-to-john-c-reilly-about-her-life-changing-acting-debut