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SABU監督最新作『記憶ゼロ』東京国際映画祭で日本初上映!堤真一が語る盟友タッグの絆と20年越しの企画実現の舞台裏とは【第39回東京国際映画祭】

第83回ヴェネツィア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門でのワールドプレミアを皮切りに、第51回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で観客賞(第2席)を受賞、さらに“中国語圏のアカデミー賞”と称される第63回金馬奨にて日本人映画監督として史上最多となる11部門ノミネートを果たしたSABU監督の記念すべき長編劇映画20作目『記憶ゼロ』(原題:Arrested Memory/2027年初夏公開)。第39回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に選出された本作の日本初上映が10月27日、丸の内ピカデリー2にて行われ、上映後の舞台挨拶にSABU監督をはじめ、出演の堤真一、霧島れいか、そして台湾から来日したアキラ・ホァン(黃冠智)が登壇した。なお、司会は本作のプロデューサーでもあり、映画祭プログラミング・ディレクターを務める市山尚三が担当した。

上映後の熱気冷めやらぬ劇場の壇上に現れたゲスト陣。SABU監督は「日本でやるのはすごく緊張します。海外はすごく盛り上がるんですけど、日本はなかなかじっくり反応してくるんで。でも、皆さん喜んでいただけたようでよかったです」と笑顔を見せ、安堵の表情を浮かべた。1996年のSABU監督デビュー作『弾丸ランナー』で映画初主演を務めて以降、5作連続で主演を務めてきた盟友・堤真一は「ほんのわずかしか出ていないんですけど、久しぶりのSABUとの仕事でした。出来上がりを見て、本当に監督としても成長を遂げ、素晴らしい映像でした。最高の作品です。ぜひ1人でも多くの方に見ていただきたいです」と惜しみない賛辞を送った。台湾プレミアが行われた高雄映画祭にも参加した霧島れいかも「日本の皆様に見ていただける日を本当に楽しみにしておりました。どうだったでしょうか?」と客席に笑顔を向け、金馬奨で最優秀助演男優賞にノミネートされているアキラ・ホァンは「東京国際映画祭に参加させていただけて、とても光栄です。劇中では薬中の役を演じました。今日見に来てくださってありがとうございます。気に入っていただけたら嬉しいです」と流暢な日本語を交えて挨拶した。

トークではまず、本作がおよそ20年もの歳月をかけて実現した念願の企画であることが語られた。SABU監督は「2007年に文化庁の研修でドイツに滞在した時、この脚本を持って行って現地のプロデューサーと『ぜひやりたい』と始めたんですが、半年経ってもなかなか進まないので一度引き上げました。その後、ソウルでも『ぜひやりたい』と1年以上頑張ったけれど進まず断念し、ニューヨークでもダメになり……。結果的に台湾でやることになって、そこで一番いい形にできたと思ってます」と、世界各都市を巡ってようやく辿り着いた結実のドラマを明かした。さらに会場には、本作を手掛けた台湾のプロデューサーであるジャスティン・ウォン(Justin Ou)氏や、台湾在住のフランス人編集技師マチュー・ラクロワ(Mathieu Laclau)氏も来場しており、客席に向かって紹介する場面もあった。

記憶障害と闘いながら誘拐事件の犯人を追う主人公・刑事役を務めた台湾のトップスター、イーサン・ルアン(阮經天)の起用について、SABU監督は「シリアスな演技ができる人という印象があって、『モンガに散る』なども見ていてアクションがすごくできる。その分、コメディに転がればすごく幅があって面白いなと。年齢的にも警部としてすごく動けるので、いい出会いでした」とコメント。劇中で主人公が柔道の達人という設定になっている理由については、「20年前に一番最初に書いた脚本はただの暴力刑事だったんです。でも今回は、記憶を取り戻していく流れで、体を動かす表現がいいなと。“いろいろ物事を忘れているけれど、身体は覚えている”という表現がすごく分かりやすいのでそうしました。彼には3ヶ月間訓練してもらいました」と、作品の核となる演出意図を明かした。

続いて、息子を誘拐された日本人ビジネスマン夫婦役を演じた堤と霧島へ、台湾ロケの思い出について質問が及ぶと、わずか4〜5日間の滞在だったという堤が現地で驚いたエピソードを披露。「一番びっくりしたのは、マネージャーと定食屋みたいなところに行きたいなとなった時、メニューが(漢字ばかりで)全く分からないんです。英語のほうがまだ『これは鶏肉かな』と分かるんですけど。でもアプリがあって、黒板に書いてあるメニューをペッと(カメラで)やったら結構日本語になって、あれにはびっくりしました。豚肉料理を食べたんですけど、本当に美味しかったんですよ」と笑いを交えて語ると、SABU監督から「映画の話をしろよ(笑)」と即座にツッコミが入り、会場は大爆笑。

現地の撮影現場の空気感について、堤は「日本と違って、役者もスタッフもみんな友達みたいな、すごくフレンドリーな感じで。上下関係というよりすごく建設的な感じがして、こういう現場はいいなと思いました」と印象を述べた。これにはSABU監督も「みんなちゃんと自分の意見を持って言ってくれるのがいいですね。現場スタッフの9割が女性で、若い人も多かったです。お弁当も俺も一番最後の列に並ぶし、そういう気取らないところがすごく良かった」と台湾チームの活気を絶賛。さらに撮影中の苦労を問われた堤は「台風が来ていたこと」を挙げ、「室内のお家のシーンを撮っていたんですけど、外が映っているところがどう考えても台風で(笑)。外の風で揺れているシーンだったんで、(そのまま本編に)使いましたよね。台湾の台風は日本よりも強い時期に来るから大変だったんですけど、うまくかわせましたし、帰国が遅くなったりもしなかったので良かったです」と、ハプニングすらも作品の力に変えた裏話を笑顔で振り返った。

また、本作で誘拐事件の捜査に巻き込まれる薬物中毒者を熱演し、金馬奨助演男優賞にノミネートされたアキラ・ホァンは、役作りについて「監督とお話しした時、この役は元々賢い人間だったけれど、環境のせいで最終的に薬中になってしまったと伺いました。元々聡明な人だったということは、後で手錠をかけられるシーンとの対比でも分かるようになっています。役作りのために、かなりげっそりした感じを出さなければいけなかったので、ストイックに準備しました」と徹底したアプローチを明かした。

観客とのQ&Aでは、「撮影中に一番ワクワクしたこと」という質問が登壇者に投げかけられた。アキラ・ホァンが「すごい先輩俳優さんたちと一緒に出演できたこと、そしてSABU監督と一緒に仕事ができたことが本当に楽しかったです」と語り、霧島は「普段はおとなしい役や、いいお母さん、ちょっと病んでいる役が多いんですけど、銃を持った瞬間が一番ワクワクしました(笑)」と告白。一方の堤は、「僕は海外での撮影は初めてだったんですけど、SABUと一緒なのでどこに行っても同じなんですよ。演出はほぼ擬音でしか言わなくて、『ドーンと行け! ドーンと行くんや!』っていう感じが本当に変わらなくて(笑)。新しい違う環境でやっているという感じはあまりなく、台湾料理も美味しかったし、ずっと楽しいまんま終わって帰ってきた感じです」と語り、長年の絆を感じさせるエピソードで場内を沸かせた。

 

さらに、観客から作品のスピード感やテンポの良さについて問われると、SABU監督は「編集の力がすごく強いと思います。編集のマチューやジャスティンが意見をいっぱい言ってくれて、今年の1月から8月までで58バージョンも作りました。公開ギリギリまで編集をブラッシュアップしていったので、すごく強い編集になったと思います」と驚きの制作プロセスを公開。「どの国でも面白いと言ってもらえた脚本ですが、20年前の内容なので、ビデオテープの巻き戻しを今の時代に合わせたり、携帯電話や監視カメラなど設定をアップデートしました。台湾はノスタルジックな場所と近代的な場所がマッチする街で、この場所だからこそ一番いい形の映画にできたと思います」と確かな手応えを語り、温かい拍手に包まれながら舞台挨拶は幕を閉じた。

『記憶ゼロ』(原題:Arrested Memory)
2027年初夏、テアトル新宿ほか全国公開

【ストーリー】
ある事件で受けたショックにより記憶障害を発症した敏腕刑事が、3億円誘拐事件を捜査する。記憶が次第に薄れていく中、直観だけを頼りに犯人を追って走り続ける――。

監督・脚本:SABU
出演:イーサン・ルアン(阮經天)、ムーン・リー(李沐)、シェ・インシュエン(謝盈萱)、堤真一、霧島れいか、アキラ・ホァン(黃冠智) ほか
配給:東京テアトル
©2026 LHB FILMS & FOURIER FILMS

映画祭出品・受賞歴:
第83回ヴェネツィア国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門
第51回トロント国際映画祭 ミッドナイト・マッドネス部門 観客賞(第2席)受賞
第9回ブリュッセル国際映画祭 コンペティション部門
第32回ジュネーブ国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門(クロージング上映)
第39回東京国際映画祭 ガラ・セレクション部門
第63回金馬奨 日本人監督史上最多11部門ノミネート(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、美術賞、衣装賞、アクション監督賞、編集賞、音響効果賞、オリジナル主題歌賞)