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【FRONTIER】「世間知らず、だから出来たこと。」藤井道人 監督×石山成人 宣伝P スペシャル対談 ~後編~

『ヴィレッジ』公開記念!!
藤井道人 監督×石山成人 宣伝プロデューサー スペシャル対談

映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。

前回に引き続き、『ヴィレッジ』の公開を記念し、藤井道人監督と、同作の宣伝プロデューサーを務める石山成人さん(映画宣伝プロデュース集団KICCORIT所属)とのスペシャル対談の内容をご紹介。

後編では、お2人が信頼関係を築くようになった衝撃的なエピソードに加え、現在の日本の映画宣伝について感じていることをありのままに語ってもらった。

 

★前編:【FRONTIER】「宣伝をこだわり尽くす」藤井道人 監督×石山成人 宣伝P スペシャル対談

 

この人なら、何があっても作品を売ってくれると思った。

藤井監督と石山さんの出会いは、今から5年前に遡るという。インタビュー中、藤井監督が自身の作品を預ける相手として、石山さんにとても強い信頼を置いている様子が伺えた。そのきっかけとなった、ある衝撃的なエピソードとは?


『ヴィレッジ』藤井道人監督

KIQ:お二人は、今回で4作品目のご一緒ということですが、最初の出会いはどういうきっかけだったんですか?

石山:『新聞記者』の宣伝に携わった時に、スターサンズの河村光庸さんに紹介してもらったのが最初ですかね。当時は、『新聞記者』はまだ脚本の段階で、なかなか企画が進まないという状況だった時です。そしたら、河村さんが「藤井くんっていう、新しい子が見つかったよ!」って紹介してくださったんです。『新聞記者』は政治的な題材のために難しい作品だったんですけど、藤井さんが脚本に携わり始めてからすごく画が浮かぶようになったんですよね。僕は今でもその時のことを鮮烈に覚えています!

藤井:確かに出会いは河村さんの紹介でしたね。実は僕的に今後も宣伝は石山さんに頼もうと思ったエピソードが1個あって…。『新聞記者』の宣伝の時に、「何かNGなことはあるか?」と聞かれたので「映像メディアは出たくない。そういうのは僕ら制作スタッフの仕事じゃないと思うし、その分WEBや紙メディアの取材は頑張るので」と答えたんです。そうしたら、「わかりました」って言ってくれたにも関わらず、その直後に生配信番組への出演をセッティングされたんです!!その時に、この人、ちょっと頭おかしい!と思って(笑)しかも、その番組が知識人の方々と政治について語るというハードルの高い内容で…。結果的に番組の視聴数が良かったらしくて、それにすごく喜んでいる石山さんの姿を見た時に、そのちょっとクレイジーな感じがなんか信頼できるなーと思ったんですよね(笑) あれだけは、忘れないですね…。

石山:すみません…。

藤井:いやー、すごい戸惑ったんですよ(笑)

石山:映画って、観た後にいろんな人がいろんなことを言うじゃないですか。でも、それは例えば「感動しました」とか割と一辺倒になりがちだと思うんですけど、スターサンズの映画は、人それぞれ本当にいろんなことを言う作品が多いから、それを集約して盛り上げていくというのは宣伝としてやらなければいけないなと思っていたんです。だから、こちらとしては見た人の声を発信していく内容のあのオンライントーク番組は楽しかったです(笑)

KIQ:お二人の信頼関係はすごく強そうですね。

藤井:そうですね。ああいう衝撃的なことがあると(笑) この人は、多分何があっても作品を売ってくれるんだろうなと思いましたね。

KIQ:(笑)石山さんは、他の監督の作品ももちろん宣伝されることもあるかと思いますが、藤井監督の作品ならではの魅力や、仕事を一緒にしていて面白いと感じる部分はどんなところですか。

石山:藤井監督は、企画の最初の段階の情報とか、脚本とかをすごく共有してくれるんです。しかも、それについてこちらが意見を言うと、耳を傾けてくれるんですよね。僕ら映画宣伝の役目は、みなさんが手掛けた映画を引き継ぎ、ゴールまで持っていくことだと思っているので、事前にいろいろ共有してくれるとゴールが見えやすいというのはありますね。あと、撮影してしばらくすると、面白そうなフッテージを作ってくれたりもするんですけど、あれがすごくいいんですよね。

KIQ:それは監督も作品のことを伝えたいとか、理解しておいてほしいという思いで?

藤井:そうですね、宣伝部のためだけではなくて、制作部さんとか現場のスタッフさんも、撮影現場でモニターを見られる人ってほんの一握りなので、そういう方々のために、今どういうものを作っているのかということや、こんなにおもしろいものができているよ!というのをみんなで共有して、少しでも景気づけることができたらいいなと思っています。

日本の映画宣伝は、型にはまっている。

クリエイターとして、常に新しいものを生みだすことを心掛けているという藤井監督は、宣伝に対しても同様に熱い思いを持っていた。その思いに、これまで答えてきたのが石山さんだ。常に前人未踏を目指す2人が、現在の映画宣伝について思うこととは―。


『ヴィレッジ』宣伝プロデューサー・石山成人さん

KIQ:ここ数年で、映画宣伝について変わってきているなと思うことはありますか。

石山:僕よりも藤井さんに答えて頂いた方が…。僕はもう宣伝が近くにありすぎて、よくわからなくて(笑)

藤井:そうですね、TikTokやInstagramなど宣伝のツールは増えてきていますが、それを純粋に楽しんでやってくれている人が宣伝業界ではあまり多くないのではないかと思っていて…。もちろん、石山さんのように企画の段階から作戦を練って、こういうことをやりたい!こういうことをやるべきです!といろいろ提案してくれる方もいますが、一方で、型にはまったような業務的な宣伝をされたときには、少し不安になる部分はありますね。そういう場合って、役者の熱量があまり宣伝部には伝わっていなかったりもして…。

KIQ:なるほど…。

藤井:こちらとしては、今回はどんな見たことがない宣伝をしてくれるのだろう!と、毎回すごく楽しみにしているんです。役者ともよく話しますが、僕らクリエイター側は、やっぱり誰もやったことがないことにチャレンジするために映画を作っているんですよね。それに対して、宣伝は割と型にはまっているというか、正直いつも同じな気がしています。例えば、海外のA24の戦略とかをみていると、グッズが即完していたりして、すごくカルチャーとしてのムーブメントを感じるんですけど、日本ではあまりそこまでのことを感じないですかね…。

KIQ:確かに、宣伝のテンプレートみたいなものがある感じはしますね。

藤井:そこまで我々がこだわるのには理由があって、やっぱり1本ダメだったらダメなんですよね、もう次がないかもしれないという思いで毎回作品を作っているんです。だから、宣伝って本当に重要なんですよ。

石山:やっぱり宣伝業界って今まで経験したことのない、実績のないことってしたくないんですよね。失敗したくない、間違いたくないという。だから恐らくですが、僕ら(KICCORIT)は割とチャレンジングなタイトルを預からせて頂くことが多い気がします(笑)

藤井:なるほどね!

石山:そうなんですよ、だから何かもう既成概念にとらわれず、映画のためになる事をとにかくチャレンジしよう!っていうところから毎回始まりますね。

KIQ:お二人は映画の企画を考えたり、宣伝戦略を立てたりする時にマーケティング調査など、データは結構意識されますか。

藤井:無視はしないです。ただ、1作目のデータが2作目にも当てはまるとは限らないですし、時代は今すごく速い流れで変わっていっているので、調査データに頼りすぎるのは僕としては得策ではないと思っています。例えば、漫画が原作の作品をやる時は、原作が何部売れましたという指標がありますが、その数字だけが映画を観る動機になるわけじゃないと思うんですよね。だから、マーケティング調査の結果を確認はしても、バイブルにはしないという思いでいますね。

石山:すごくよくわかります。そこが多分スターサンズの、他の会社との作品作りの根本的な違いだと思うんですよね。普通は「この原作が何万部売れました」「この役者で過去に興行収入がいくらでした」という数字に頼って映画が作られる場合が多いんです。だけど、スターサンズは「これとこれを組み合わせたら面白いよね」とか、「この企画をこの役者でやったら面白いよね」という企画自体のおもしろさが最初にあるんですよね。

藤井:そうですね。

石山:あと、どの作品の根本にも「このテーマは今ウケそうだよね」というのがある気がしていて。僕は『ヤクザと家族 The Family』の綾野剛さんと舘ひろしさんが2人で一つの画に収まっているあの異常な空気感とかが、企画の強さだと思うんです。

藤井世間知らずだからできたんでしょうね。そこを掛け合わせちゃ駄目なんて知らない!という…(笑)

石山:その2人が一緒か!しかもタイトルが『ヤクザと家族 The Family』か!というだけで、すごく想像力が湧くじゃないですか(笑) そうやって、マーケティング調査や数字に頼りすぎないところが、藤井さんが素晴らしい作品を生み出す理由の一つだと思いますね。まあそれも、ある意味ではマーケティングなんですけどね。

 

★前編:「宣伝をこだわり尽くす」藤井道人 監督×石山成人 宣伝P スペシャル対談

 

 

【Information】

『ヴィレッジ』4月21日(金)全国公開

閉ざされた世界。閉ざされた心。やがて、一炊の夢から醒める。
夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。幼い頃より霞門村に住む片山優は、美しい村にとって異彩を放つこの施設で働いているが、母親が抱えた借金の支払いに追われ希望のない日々を送っている。かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに物語は大きく動き出す――。

出演:横浜流星、黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗 ほか
監督・脚本:藤井道人 音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
配給:KADOKAWA/スターサンズ ©️2023「ヴィレッジ」製作委員会
village-movie.jp @village_moviejp #ヴィレッジ

 

【Back number(ENDROLL)】
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