MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

【プロが見たこの映画】ファッションのプロが語る「4度、映画館で観たくなる映画」

私は同じ作品を4回映画館で鑑賞したことがある。その作品というのが、グザヴィエ・ドラン監督の『Mommy/マミー』だ。ストーリー構成を含め撮影技法、音楽、衣装、どれをとってもドランのセンスの良さが光る作品に当時20代前半だった私はこんな映画を撮れる人間がこの世に存在するんだ…と圧倒されて、気がつけば4回も映画館に足を運んでしまった。

この作品の主人公、スティーヴの衣装をドランが直々に担当しており、そのスタイリングたるや、あぁドランは顔もカッコよければ服のセンスもあり監督としても才能があるなんて天は二物を与えず、どころか3つも4つも与えられる人もいるんだ…とちょっと落ち込んだりもした。

2021年にはプラダの代表的バッグ“プラダ ガレリア”のキャンペーンムービーの監督も行い、世界を代表するラグジュアリーブランドがドランを放っておかないのにも納得だ。

スティーヴは16歳のティーンでスケボーに乗ったりするので服装もラフでカジュアル。ドランが作るカジュアルの絶妙なバランスが可愛くてかっこよくて、センスが爆発している。

特に印象に残っているのがボーダーのTシャツと3本ラインのジャージにJEREMY SCOTT ADIDASの羽モチーフのスニーカーを合わせたスタイル。ジャージとスニーカーの合わせなんてどカジュアルにもほどがあるのだが、スティーヴを演じたアントワン=オリヴィエ・ピロンの綺麗なブロンドとの相性が良くてどこか上品さを感じるのは日本人には真似できないところだと思う。

現に、スティーヴに触発されてアディダスの3本ラインジャージを購入したが、何と合わせてもゴミ出し部屋着スタイルになってしまい、そのまま本当に部屋着へと降格した。

それからスーパーで買い物カートを振り回すシーンで着ているパステルカラーのストライプシャツ。ペンキを塗りたくったような真っ青な空とのコントラストにハッとさせられるワンシーンだ。

同じようなシャツが欲しくて一時期古着屋を練り歩いてみたものの、生地がぶ厚かったり色味が濃かったりで結局手に入れられなかったが、未だに頭の片隅にずっといる、いつか欲しい服の1つである。(一度、世田谷線に乗っている時におじ様がそっくりのシャツを着ていてどこで買ったのか聞きそうになったことがある)

今現在、8本の映画を手掛け自身も俳優として活躍するドラン。スタイリングだけでなく一貫して独特のセンスで映す彼の映画そのものが“グザヴィエ・ドラン”というブランドのようなものと言えるのではないだろうか。映画に映る人物たちの顔に当たる自然光であったり、揺れるカーテンの影であったり、そういう日常にあって毎日何気なく目に入っているものを芸術品のように切り取れるのはグザヴィエ・ドランにしか出来ないのではないかと思う。

今のことろ、次作の情報は出ていないが、また彼にしか撮ることのできない映画を映画館で観ることが出来る日を心待ちにしている。

映画ファッションマニア つみき

 

『Mommy/マミー』(2015)
監督:グザビエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルバル、スザンヌ・クレバン、アントワン=オリビエ・ピロンほか
配給:ピクチャーズ・デプト
Photo credit : Shayne Laverdiere / © 2014 une filiale de Metafilms inc.

公式サイト:http://mommy-xdolan.jp/

 

【このプロの記事を読む】
ファッションのプロが語る「映画は映像でみるファッション誌」

【ほかのプロの記事も読む】
SNS担当者が語る「巻き込む力の大切さを実感させられた“私の物語”」
宣伝ディレクターが語る「なぜ、自分は命を削ってまで映画の宣伝をしているのか?『ハケンアニメ!』を見て考えた。」
オンライン番組ディレクターが語る「全てにおいて「庵野秀明」が反映された『シン・ウルトラマン』」