宣伝のプロが語る「映画の最強スパイスは鑑賞タイミング!?」
元々ドキュメンタリー映画が好きなのですが、最近革命的に面白い作品を観たので感想をお伝えしたいと思います。最近と言っても去年の話です。
「宇宙へのカウントダウン:ミッション・インスピレーション4」というNetflixのオリジナルドキュメンタリー作品です。
イーロン・マスクさんがやっている宇宙プロジェクト「スペースX」の「クルードラゴン」の話。そう皆さんご存知の民間人が宇宙に行くってやつですね。
宇宙がテーマなので、なんとなく科学ドキュメンタリーっぽいイメージをしちゃうところなんですが、全然違います。これは民間人が宇宙に行くまでのチャレンジと人生の話なのです。
ある実業家の一人がリーダーとなり、宇宙に行く意義として「どう地球に貢献するか?」ということを考えた結果、寄付を集めることと、4つのキーワードで乗組員を募集することになりました。
そのキーワードは、「統率力」「寛大さ」「繁栄」そして「希望」です。
そのキーワードに合った人選をしていくのですが、注目するべきは「希望」で選ばれた女の子。
宇宙になんて全く興味のない普通の女の子が選ばれたのです。でも紹介が進んでいくと全然普通じゃない人生を歩んでいて、幼少期に骨肉腫を患っていてほとんど病院で過ごしており、足には金属が埋め込まれている。当然過度なスポーツなどには縁のない生活をしていて、今では小児科の医師助手として働いている方なのです。
宇宙に行くには虫歯ひとつあってはいけない、とにかく健康状態が大事になるのですが、彼女はがんサバイバーであり、かつ足には金属が入っている状態で、果たして地球の何倍にもなる重力に耐えられるのかさえ、誰もわからない。そんな普通だったら絶対に選ばれない女の子に白羽の矢が立つのです。そして、オファーを受けた本人は、「やってみたい!」と命の危険も考えず即答でOK。その日から別世界の人生が始まっていくのです。
訓練は普通でも辛いのに、当然一つも容赦がない。9時間かけて登る冬山の訓練など、観ているこちらがビビってしまうくらい。確か標高は富士山級の3000メートルを超えてた気がします。そんな健康体でも辛いと思う状況を乗り越え、宇宙へ飛び出す四人が固い絆で結ばれていく様は本当に感動的であり、人類全体にまさに「希望」を与えてくれる存在になっていきます。宇宙に行く前でこんなに感動できちゃうって、この先どうなるのだろう?というところで「最終話を残して」終わります。なぜなら、彼らはまだ出発してないからです。
そして、打ち上げは2021年9月15日、最終回の配信は9月末なのです。
心がざわつきませんか?もし失敗したらこのドキュメンタリーはどうなる?ここまで感情移入させておいて万が一の時どうするんだ?と本当に心から心配になりました。当然、クルードラゴンの発射と地球帰還の日はニュースに釘付けでした。だって乗組員のことはもちろん、ご家族から友人まで全てを事前に知っているから、見ているこちらも家族同然の気持ちで見守っているわけです。
無事を一緒に祈りながら最終話を待つ。こんなドキュメンタリーありました?
今観ても、もちろん素晴らしいドキュメンタリー作品ですが、あのタイミングで観た者だけが味わえる臨場感があったのは間違いないと思います。
ところで、観たい映画っていつ観ますか?
観るタイミングって大事ですよね。観るタイミングによって気持ちが変わるんじゃないかなって思います。ヒットするかわからないものを観るのと、面白いってわかって観るのとやっぱり気持ちは違いますよね。できれば大ヒットして面白いってわかった映画を観たいですよね?でも、予告編を見て、インタビューを見て、本当に面白いのかな?って確認しにいく気持ちが作品の一部になり、映画館を出た時に「あー、面白かった!」と思えた時の爽快感は、そこにチャレンジした者だけが味わえる満足感なのかもしれません。
「泣ける泣ける」と言われて観に行ったら、とっても面白いのに「泣けるかな、泣けるかな」が頭を巡り、感情移入できなかったなんて経験はありませんか?
僕も宣伝マンとして、「ちょっと冒険したくなる」「その先を確認したくなる」そして「応援したくなる」そんな宣伝ができたらなって思います。
今回記事を書いていて一つだけ残念なのは、この記事を書く「タイミングが遅すぎた」ってことです。だいぶタイミングを逸してます。
がんサバイバー ヘイリー・アルセノーさんTwitterより
宣伝プロデューサーちくん
『宇宙へのカウントダウン: ミッション・インスピレーション4』
Netflixで配信中
https://www.netflix.com/title/81441273
【関連記事】
★編集長が語る「静かに、でも、けたたましく心揺さぶられるドキュメンタリー映画」
★一番観ている層は…? ドキュメンタリー作品の視聴状況
【このプロの記事をもっと読む】
★宣伝のプロが語る「嫌いじゃないも、好きのうち」
★宣伝のプロが語る「鬼滅の刃のヒットがテレビCMの価値を下げた?」
★宣伝のプロが語る「映画を観る習慣を変える提案」
【ほかのプロの記事も読む】
★オンライン番組ディレクターが語る「映画タイトルで観る映画」
★WEBパブリシストが語る「あらゆる意味で“涙なし”では見られない映画」
★ガチな「バイオハザード」ゲーマーが語る『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』
- 伊坂幸太郎の人気小説をブラッド・ピット主演で映画化!『ブレット・トレイン』2022年公開決定&予告映像解禁!
- 『TBSドキュメンタリー映画祭 2022』今の「日本」の現状に目を向けたドキュメンタリー作品2本の場面写真解禁&監督コメントが到着!