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【今夜何見る?】実は「怖いサム・ニール」こそが最高に輝いていたトラウマ級傑作4選

名優サム・ニールの訃報に接し、世界中の映画ファンが深い悲しみに包まれています。誰もが思い浮かべるのは、『ジュラシック・パーク』で恐竜に立ち向かった誠実なアラン・グラント博士の姿や、『ピアノ・レッスン』で内に情念を秘めた寡黙な入植者を演じた姿でしょう。しかし、彼の真の恐ろしさと底知れない魅力を知る者なら、口を揃えてこう言うはずです。「狂気と恐怖の淵にいる時こそ、彼の暗黒の輝きが最も際立っていた」と。

上品で理知的な佇まいだからこそ、その裏に潜む闇が剥き出しになった瞬間の凄みは、他の誰にも真似できません。

今回の「今夜何見る?」では、あえて名作の親しみやすいイメージは横に置き、私たちの背筋を凍らせてきたトラウマ級の傑作4選をお届けします。

 

『オーメン/最後の闘争』(1981年)
仕立ての良いスーツに身を包み政界へ君臨。冷徹な美貌に悪魔を宿した「静の狂気」の原点

前2作で不気味な子供、不敵な青年へと成長した「悪魔の子ダミアン」が、ついに大人の社交界に君臨するシリーズ完結編です。ここで30代前半のサム・ニールが演じたのが、政界を裏から操り、大統領顧問にまで上り詰めた大人のダミアン。仕立ての良いスーツを完璧に着こなし、冷徹で気品に満ちた瞳の奥に絶対的な悪を宿らせる姿は、まさにハマり役と言えます。神を嘲笑い、自らの野望のために周囲を冷酷に破滅させていく佇まいは、彼のキャリアにおける「悪役・狂気役」としてのポテンシャルの高さを世に知らしめた記念碑的一作です。

【ストーリー】
政財界の要人を味方につけ、イギリス大使に任命されたダミアン・ソーン。彼は世界を支配するための準備を着々と進めていたが、同時にキリストの再臨が近づいていることを察知する。ダミアンは自身の覇権を守るため、その日に生まれたすべての赤ん坊を抹殺するよう配下に命じるが……。

【作品情報】
監督:グラハム・ベイカー
脚本:アンドリュー・バーキン
製作:ハーヴェイ・バーンハート
出演:サム・ニール、ロッサノ・ブラッツィ、ドン・ゴードン、リサ・ハロウ

主な配信先:Disney+(見放題配信中)、Amazon Prime Video(レンタル配信中)

 

『ポゼッション』(1981年)
愛と嫉妬の果てに精神が摩耗していく。イザベル・アジャーニの狂気に真っ向から応じた熱演

イザベル・アジャーニによる地下鉄ホームでの壮絶な怪演ばかりが語られがちな本作ですが、彼女の奇行に翻弄され、常軌を逸した狂気に引きずり込まれていく夫マルクを演じたサム・ニールの演技もまた、凄まじい緊迫感に満ちています。妻の不貞を疑う哀れな男から、家庭が崩壊していく過程で精神が破壊され、やがて自らもねじ切れたような狂気を見せるまでのグラデーション。アジャーニの圧倒的なエネルギーに真っ向からぶつかり、同じ温度の狂気で応えてみせた彼の「動の狂気」に圧倒されるサイコ・サスペンスです。

【ストーリー】
秘密任務を終えて西ベルリンの自宅に戻ったマルクは、妻のアンナから突然の別れを切り出される。アンナの様子がおかしいことを察したマルクは私立探偵を雇って彼女を素行調査させるが、やがて探偵からの連絡が途絶えてしまう。不審に思ったマルクがアンナの隠れ家へ踏み込むと、そこにはおぞましい「何か」が潜んでいた。

【作品情報】
監督・脚本:アンジェイ・ズラウスキー
製作:マリー=ローレ・レイル
出演:イザベル・アジャーニ、サム・ニール、ハインツ・ベネント、マルギット・カルステンセン

主な配信先:JAIHO(見放題配信中)、Amazon Prime Video(レンタル配信中)

 

『イベント・ホライゾン』(1997年)
地獄のビジョンに魅せられ、端正な顔立ちが崩壊していく。SFの歴史に刻まれた天才科学者の変貌

カルト的人気を誇る本作で、サム・ニールは失踪した宇宙船「イベント・ホライゾン号」の設計者ウェアー博士を演じています。救助隊とともに自ら作った船へと乗り込みますが、その船が異次元、すなわち「地獄」へと繋がっていたことを知った時、彼の理知的な精神は急速に汚染されていきます。最初は冷静な科学者だった男が、徐々に地獄の美しさに魅せられ、顔を血で染めながら不敵な笑みを浮かべる怪物へと変貌していくプロセスは秀逸。彼の端正なビジュアルが崩壊していくカタルシスを堪能できます。

【ストーリー】
西暦2047年、7年前に海王星付近で消息を絶った宇宙船「イベント・ホライゾン号」から謎の救出信号が届く。宇宙船の設計者であるウェアー博士は、救助船ルイス&クラーク号のクルーたちとともに現地へ向かう。しかし、無人となった船内に足を踏み入れた一同は、そこで想像を絶する凄惨な光景を目撃することになる。

【作品情報】
監督:ポール・W・S・アンダーソン
脚本:フィリップ・アイズナー
製作:ローレンス・ゴードン、ロイド・レヴィン、ジェレミー・ボルト
出演:ローレンス・フィッシュバーン、サム・ニール、キャスリーン・クインラン、ジョリー・リチャードソン

主な配信先:U-NEXT(レンタル配信中)、Amazon Prime Video(レンタル配信中)

 

『マウス・オブ・マッドネス』(1994年)
現実と虚構が融解した悪夢の街へ。誰もいない映画館で響き渡る、あまりにも美しく絶望的な笑い声

ジョン・カーペンター監督が放った『遊星からの物体X』『パラダイム』に並ぶ「黙示録3部作」の1本です。失踪したベストセラー作家の行方を追う保険調査員ジョン・トレントを演じたサム・ニールは、現実と虚構の境界線が完全に融解した奇妙な街に迷い込みます。最初はどこまでも現実主義で、冷ややかに事態を分析していたエリートビジネスマンが、世界の崩壊を目の当たりにして「自分は作家の小説に書かれたキャラクターに過ぎない」と悟った瞬間の絶望。ラストシーン、誰もいなくなった映画館でスクリーンに映る自分自身を見つめながら、すべてを諦めたように笑い声をあげる彼の姿は、屈指のエンディングです。

【ストーリー】
空前の大ベストセラーを連発する流行作家サター・カインが、新作の原稿を遺して突如失踪した。彼の作風は読者を狂気に陥れるという噂があり、世界中で暴動が発生しつつあった。カインの捜責を依頼された凄腕の保険調査員ジョン・トレントは、カインの小説のカバーデザインに隠された地図を頼りに、存在しないはずの街「ホブズ・エンド」へと向かうが……。

【作品情報】
監督:ジョン・カーペンター
脚本:マイケル・デ・ルカ
製作:サンディ・キング
出演:サム・ニール、ジュリー・カーメン、ユルゲン・プロフノウ、チャールトン・ヘストン

主な配信先:Amazon Prime Video(レンタル配信中)

 

いかがでしたか?

冷酷な悪魔から、地獄に魅入られた科学者、そして現実を失った男まで。彼がこれらの怪作で見せた狂気の足跡は、単なる名作の登場人物としてだけではなく、映画史に刻まれる偉大な怪優であったことを証明しています。今夜は恐竜たちの島や美しいピアノの調べを飛び出して、彼が遺した最高の「恐怖」に浸ってみませんか。