【特集】リピート鑑賞必至!映画『Michael/マイケル』を何度も観たくなるトリビア集
文:武内三穂(株式会社TSトーキョー)
全世界でレコードは10億枚以上売れ、13のグラミー賞を受賞、30を超えるギネス記録を持つ “キング・オブ・ポップ”、マイケル・ジャクソンの半生を描く『Michael/マイケル』が絶賛公開中である。ジャクソン5の時代から、ソロ活動を始めスターダムにのし上がるまでを中心に描いた本作では、ライブやミュージックビデオの撮影現場にいるような臨場感を味わえると同時に、さまざまな葛藤を乗り越えた一人の青年マイケルの日常を知ることができる。
リピート鑑賞必至の本作は、とにかく見どころが多い。
そこで今回は、映画公式資料を基に、知れば知るほど何度も観たくなる、マイケル・ジャクソン自身にまつわるトリビアや、本作の制作秘話を紹介する。
▶DNAよりも高い次元でマイケルを蘇らせたジャファー・ジャクソン
マイケルは、甥のジャファーが演じている。ジャファーは、ジャクソン5の一員としても活躍したマイケルの兄ジャーメインとアレハンドラ・ジェネヴィーヴ・オアシアザの息子である。ジャファーはマイケルに似ていると言われていたものの、演技経験がなく、プロのダンサーでもなかったため、マイケル役の起用が最初から決まっていたわけではない。だが、ジャファーに初めて会った瞬間、誰もがジャファーこそマイケルを演じるにふさわしい人物だと悟ったことが以下の証言から伝わってくる。
プロデューサーを務めたグレアム・キングは、ジャファーについて、見た目によるものではなく「これだという感覚があまりにも強く、無視できなかった。(中略)ジャファーには言葉にしがたいスピリチュアルな魅力があって、彼とマイケルについて話しているだけで胸が熱くなった」と語っており、「ジャファーにはマイケルのDNAが刻まれているのかもしれないが、彼はそれを、私たち誰もが想像もしなかったほど高い次元へと引き上げ、より感動的なものにした」と絶賛している。
アントワン・フークア監督も「初めて会った時、ジャファーは演技しているのではないかと思った。あのやわらかな魂のようなものまで含めて、まるでマイケルそのものだったからだ。でも、すぐにそれが彼の素の姿なのだと気づいた。(中略)役のまま彼に質問すると、返ってくる答えもまた、マイケルを思わせる美しさと詩情を帯びていた」と振り返っている。エグゼクティブプロデューサーのリディア・シルバーマンもジャファーに初めて会った時、チーム全員が彼に特別なものを感じたといい、「ジャファーほど懸命に取り組む人を、私は見たことがない」と、資質だけではなく、それを高める献身ぶりを称賛している。
▶鏡の中の自分を本当にマイケルとして信じられるようになるまで
文句なしの起用となったジャファーは、映画の企画があがった当時、自分がマイケルを演じるとは思っていなかったようだ。一方で、ジャファーは子どもの頃からマイケルに夢中で、マイケルがかつて座っていたリビングルームでマイケルの映像をひたすら観ることで、当時は本当の意味はわかっていなかったものの「畏敬の念を抱かせるようなエネルギーに浸っていたいと思っていた」と振り返っている。そんなジャファーは「鏡の中の自分を本当にマイケルとして信じられるようになるまで、2年にわたって毎日何時間も、一切手を抜かずにリハーサルを続けた」そうである。
ジャファーは、もともとマイケルの振付師でもあったリッチ・タラウエガとトーン・タラウエガから厳しいレッスンを受けた。間近でマイケルを見てきたリッチとトーンは最初、「あまりにも唯一無二」のマイケルの動きができるレベルにジャファーを引き上げる自信がないと言っていたそうだ。またリッチは、「叔父のマイケルがどれほどの努力家だったかということ」をジャファーに1番強く伝えたという。そんななかジャファーは、「並外れた規律をもって、心身ともに自分を極限まで鍛え上げて」いき、周囲の期待に異次元レベルで応えた。トーンも「映画で目にする動きを完成させるまでに2年かかったが、彼は、誰にもできるとは思えなかったことを本当にやってのけた」と認めている。
▶マイケル・ジャクソンの息子プリンス・ジャクソンも製作に参加
本作には、実の息子プリンス・ジャクソンがエグゼクティブプロデューサーとして参加している。プリンスは毎日撮影現場に顔を出していたという。日本公開直前の来日時にも、プリンスはファンからの声援に笑顔で丁寧に応えていた。ファンを大切にし、何事にも懸命に取り組む姿勢は、父マイケル・ジャクソンから受け継いだものだろう。
▶マイケルに愛情を注いだ母キャサリンのお墨付き
マイケルの母キャサリンは、ジャファーのスクリーンテストを見せられた時、グレアム・キングに「これがマイケルよ」とだけ言ったという。キングは「私のキャリアの中でも、あれほど心を揺さぶられた瞬間はなかった」と振り返っている。劇中では、キャサリンとマイケルが2人で仲睦まじく映画を観るシーンが印象的に描かれている。そして、マイケルと父ジョセフ(ジョー)の間の確執が続くなか、マイケルを支えていたのはキャサリンである。母キャサリンからのお墨付きが得られたという事実ほど、本作のクオリティを証明するものはない。キャサリンが、孫ジャファーの姿に息子マイケルをみた心境はいかほどだったのかを想像するだけでも涙腺が刺激される。
▶ジャクソンファミリーの象徴、ヘイヴンハーストの家
ジャファーは、より本物に近づくため、ヘイヴンハーストの家で練習することを選んだという。「あの頃マイケルが身を置いていたのと同じ空気の中にいることが、どうしても必要だと感じた。僕もあの家で育ったし、そこにはマイケルとの個人的な思い出もある。だから、いろいろな感情が込み上げてきた」と振り返る。
ヘイヴンハーストの家は、本作で重要な舞台の一つとなっている。撮影では、マイケルが家族と住んでいた実際の家を使っている。ヘイヴンハーストの家は、1971年にジャクソン一家が購入し、1980年代にマイケルが改装した。約2エーカー(約8100㎡)の敷地には、キリンやラマ、チンパンジーのバブルスもいた。幼い頃から表舞台で活躍し、子どもらしい時間を過ごすことが難しかったマイケルの心情を表す上で、この家、マイケルの部屋、動物達の存在は、とても効果的に使われている。
▶マイケルが使っていたホームスタジオを細部まで再現
ヘイヴンハーストの家には、マイケルが「オフ・ザ・ウォール」や「スリラー」のデモ音源を録ったホームスタジオが残されていた。ただ、狭すぎて撮影には使えなかったため、再現することになった。アカデミー賞受賞歴を持つプロダクションデザイナーのバーバラ・リングは、「マイケルはトーマス・エジソンとジョン・レノンの言葉を壁に飾っていて、きっとそれが彼にインスピレーションを与えていたのだ」と考え、観客がマイケルがどんな思いでいたのかを感じ取れるよう、細部まで再現した。
他にもマイケルの実際の持ち物として、グラミー賞のトロフィーが劇中に登場する。そして、本作は、実物のグラミー賞トロフィーを劇中で使用した最初の作品にもなった。リピート鑑賞の際には、小道具にもぜひ注目して欲しい。
▶将来は大物になる!ジュリアーノ・クルー・ヴァルディの才能
幼少期のマイケル役を演じられる俳優を見つけることも容易ではなかった。だが、制作陣は当時9歳だったジュリアーノ・クルー・ヴァルディに、マイケルがもっていた「将来性と繊細さ、そして愛らしい無邪気さ」という資質を見いだし大いに沸き立ったという。キングはオーディションで見たジュリアーノについて、「頭上に星が輝いているようだった」と表現し、フークア監督は「本当に愛らしい子で、並外れた才能を持っている。(中略)俳優として、生の感情に触れられる稀有な力がある。ジュリアーノが部屋に入ってくると、小さな大人みたいなんだ。9歳の頃のマイケルも、まさにそうだった」と語っている。
▶カットがかかった後でもエキストラの熱狂が収まらなかったウェンブリー・スタジアムでのシーン
劇中では終盤で出てくるウェンブリー・スタジアムのライブシーンは、実は撮影初日に撮られたものである。1988年、このスタジアムでマイケルは「Bad」を披露した。フークア監督は「その日はみんな、『ジャファーは本当にやれるのか?』と思いながら現場に入っていた。でも、音楽が鳴って最初の数ステップを決めた瞬間、彼は完全に自分のものにしていた。本当に圧倒したんだ。私が『カット』と叫んだあとも、エキストラの観客はまだ彼に向かって叫び続けていた」と振り返る。
本作を観ると、エキストラの観客の熱狂は演技ではなく、自然に湧き出てきているものだと実感できる。撮影初日でこうした熱狂を生み出したジャファーは、やはりただ者ではない。
▶マイケルが撮影した同じ場所で撮った『スリラー』のシーン
『スリラー』のミュージックビデオは、マイケル・ジャクソンを語る上で外せない。狼男やゾンビに化けたマイケルの姿は、一度観たら脳裏に焼き付く。伝説のミュージックビデオとなった『スリラー』は、実はマイケルの自費で作られた。当時、レコード会社は「スリラー」をシングルで発売するつもりもミュージックビデオを作るつもりもなかったそうだ。そんななかでも、自費でショートフィルムを製作し、社会現象を起こしたマイケルのセンスにはやはり驚かされる。
『Michael/マイケル』の劇中で出てくる『スリラー』の撮影シーンも、マイケルが実際に撮影したのと同じストリートで撮られた。撮影した二晩とも満月だったそうで、先日来日したジャファーも「間違いなくマイケルがあの場所にいた」と話していた。
マイケル・ジャクソンに伝説が多く残されているのと同じように、彼を語り継ぐ本作でも伝説が多く生まれた。本作は間違いなく、音楽伝記映画の金字塔といえる。伝説のスーパースター、マイケル・ジャクソンが蘇る貴重な瞬間をぜひ映画館で味わって欲しい。
『Michael/マイケル』大ヒット上映中!
<あらすじ>
圧倒的な歌唱力と革新的なダンスパフォーマンスで、アーティストの枠を超え、全世界的なアイコンとなった“キング・オブ・ポップ”=マイケル・ジャクソン。野心家の父のもと厳しいレッスンを経て、兄弟グループ、ジャクソン5で幼少の頃から大成功を収めた彼は、やがて青年となり、ソロアーティストとして歴史的名曲の数々を生み出し、全世界の寵児となっていく。しかし、その栄光の裏には、早熟の天才ゆえの孤独感、強権的な父親の呪縛、家族への愛と自分の中に溢れるビジョンとの間で葛藤する一人の人間の姿があった―。
出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・クルー・ヴァルディ、コールマン・ドミンゴ、ニア・ロング、ケンドリック・サンプソン、マイルズ・テラー、ローラ・ハリアー他
監督:アントワーン・フークア(『イコライザー』シリーズ、『トレーニング デイ』)
脚本:ジョン・ローガン(『アビエイター』『グラディエーター』)
製作:グレアム・キング(『ボヘミアン・ラプソディ』)、ジョン・ブランカ、ジョン・マクレイン(マイケル・ジャクソン財団)
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
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