『ナポレオン』観る前に、リドスコ映画満喫術(1)「雪は舞うか?」元祖“映像の鬼才“の世界『グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』
監督リドリー・スコットこそ、現代のハリウッドが抱える最高のクリエーターであり、映画界がもっと評価しなければならない最高の英知でしょう。と、いきなりほめまくりましたが、リドリー・スコットはブレイクした『エイリアン』(1979)から、多くのクリエーターにとって、もはや宗教ともいえる映画『ブレードランナー』(1982)、アカデミー賞を獲得した『グラディエーター』(2000)、ゴールデングローブ賞を獲得した『オデッセイ』(2015)、近年の『ハウス・オブ・グッチ』(2021)まで、70年代後半のデビューから現在まで、半世紀に渡り非常に高いレベルの、しかも話題の大作をほぼ毎年提供し続けています。
そんな監督は他にはいません。85歳でこれだけ精力的にクリエイションし続けるスーパーお爺ちゃん。
そんなリドリー・スコットの最新作が『ナポレオン』。この話題作を観る前にリドスコ映画満喫術ということで、リドリー・スコット映画に特徴的なポイントから最新作のみどころを想像してみようという企画お届けします。
(1)「雪は舞うか?」元祖“映像の鬼才“の世界
『グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』
デビッド・フィンチャーや、ウエス・アンダーソン、ギレルモ・デル・トロなど、80年代以降「映像の鬼才」的に語られる監督がいますが、その元祖がリドリー・スコットでしょう。
こういう監督の特徴としてCMやMVから入ってくる場合が多く、リドリー・スコットもそうで、元々BBC(英国放送協会)でドラマ・ドキュメンタリーの制作をした後、CM会社を設立し1900本ものCMを手掛けた、たたき上げの職人です。職人だけど単に仕事をこなしているだけじゃなく、創造性も凄く、CMディレクター時代から多くの賞を獲得していましたので、長編映画『エイリアン』、『ブレードランナー』で彼が作り出した映像と世界観で、やっとハリウッドがこの強烈な才能に気が付いたという感じです。
ちなみに、リドリー・スコットの名を高めた事件としては、84年スーパーボウルのテレビ中継でかかった、アップルコンピュータのマッキントッシュのCMがあります。映画「1984」モチーフの映像のインパクトが凄くて、それ以降のアップルの広告表現スタイルの基準となりました。彼が広告畑出身というのもポイントですね。
彼の映像の凄さは決してSFだけのものではなく、『グラディエーター』や『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)などの歴史劇でも、深みのある青みがかった映像や、泥はねなど“部分の描写“を折りませた凄味のあるアクション映像表現など際立っています。
中でもリドスコ映画の特徴といえるのが「舞う雪」ですね。雪なのか綿なのか、胞子なのか、ま、なんでもいいんですが、これがリドスコ映画世界観を代表する画面作りと言えるでしょう。夢のような、うすら寒いような独特の世界観、ファンなら待ってました!の光景です。『グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』だけでなくトム・クルーズ主演の『レジェンド/光と闇の伝説』(1985)でも生命を感じさせるファンタジクな効果を出しています。
ヨーロッパに覇権を唱えたナポレオンが向かった極寒のロシア平原。今度公開される映画『ナポレオン』でも「舞う雪」は見れそうですね。「降る雪」だと多すぎですので、そこだけ心配です(笑)。
次回:(2)闘いの果ての「赦しと癒し」『デュエリスト/決闘者』『ブラック・レイン』
『グラディエーター』(2000)
【キャスト】
ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリバー・リード、デレク・ジャコビ、ジャイモン・フンスー、リチャード・ハリス ほか
【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
音楽:ハンス・ジマー
脚本:デヴィッド・フランゾーニ、ジョン・ローガン、ウィリアム・ニコルソン
製作:デヴィッド・H・フランゾーニ、ブランコ・ラスティグ、ダグラス・ウィック
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『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)
【キャスト】
オーランド・ブルーム、エバ・グリーン、ジェレミー・アイアンズ、リーアム・ニーソン、エドワード・ノートン、デビッド・シューリス、ブレンダン・グリーソン、マートン・ソーカス、ハッサン・マスード ほか
【スタッフ】
監督・製作:リドリー・スコット
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
脚本:ウィリアム・モナハン
製作総指揮:ブランコ・ラスティグ、リサ・エルジー、テリー・ニーダム
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1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく――。彼を駆り立てたものは、一体何だったのか?
【キャスト】
ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット
【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ
公式サイト:https://www.napoleon-movie.jp
12月1日(金)全国の映画館で公開
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