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戦後80年の「戦争犯罪」 第三回:GHQではない、日本人は自ら本当の戦争犯罪を裁かなければならない。「不毛地帯」~瀬島隆三の罪

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

ムービーマービーは毎年夏シーズンの終戦記念日周辺で戦争映画特集をやってきました。終戦の日から80年目を迎える今年は、ちょっと真面目に今回は「戦争犯罪」に焦点を当てたいと思います。

私は「戦争は犯罪だ」という極論には与しません。

戦争と犯罪は違います。現実にあれほどの人間が死んだ第二次世界大戦を経てもなお、世界中から戦争はなくならないし、一方で不幸な人権弾圧もなくならない。人権弾圧に対抗する手段は何か?民主主義国家ならデモが成り立つでしょう。でもそういう国は民主主義じゃない場合が多い。そうなると難民としてどこかへ逃げるか、武器を取るか?人間は自分と家族の生存を守るために戦う権利を有しています。それは犯罪とは違うものです。

ただ、この一見正しい「正義の戦い」は一方のものの見方で、相手にも相手の事情がある、そして理想の裏で悪いこと考えてる奴も世界には多い。

人間に競争と生存権という言葉ある限り、戦争はなくならない。戦争は人間の一部だというのが、二本足で直立してから何万年も武器を取って戦い続けている人類のリアルです。

戦争を肯定するわけではない、でも人類自らの恥部として認めなければならないのです。

だから「戦争反対」ばかりを叫んでいる人は、無自覚なお花畑か、きれいごとを並べて、影で悪いことを企んでいる共産主義者かどちらかです。

ただ、そんな愚かな戦争にも守るべきルールはある。これは少しだけど重要な人類の進化です。お互い正義や利益が違うのだから戦うのは仕方ないけど、「これはダメだ」というのが、近代に至りジュネーブ条約、ハーグ陸戦条約をはじめとする国際法に規定されています。そうでなくても、人間の心の問題、倫理の問題、宗教の問題としてダメなこともある。

ただそれでも、「ダメなことが分からなくなる」「ダメだと分かっててもやってしまう」戦争にはそういう部分もある。そこに振り返るべき人類の業がある。

今回は戦後80周年の終戦記念日特集として、そのような「戦争犯罪」映画について特集したいと思います。特に今まで日の当てられていない角度からの犯罪に焦点を当てたいと思います。

 

<第三回>
GHQではない、日本人は自ら本当の戦争犯罪を裁かなければならない。
「不毛地帯」~ 瀬島隆三の罪

瀬島隆三という男がいたのをご存じでしょうか?

伊藤忠商事の元会長で同社を5大商社の一角に押し上げた有能なビジネスマンとして有名ですが、この人は元陸軍の軍人です。しかも軍部の頭脳と言える大本営作戦課の参謀でした。太平洋戦争では、ガダルカナル以降の陸軍の作戦を全部立案していました。でも、これがことごとく失敗。日本が敗色濃厚になっていくのは作戦のせいとも言えませんが、いよいよ日本が負けるとなった時、瀬島は単身モスクワに行きます。当時はまだ日ソ中立条約がありますから、行っても問題はないのですが、何しに行ったのか?

そして終戦時。
その時、満州にいた瀬島は、中立条約を破って進軍してくるソ連軍と満州にいた日本軍(関東軍)との間に立って、ソ連との和平交渉にあたりました。そして、満州はソ連に明け渡す、ばかりか日本の開拓民もソ連に「労働力として明け渡す」という交渉をやります。政治家でもないのに何の権利があってこんなことができるのか、謎ですが、一方で鈴木貫太郎内閣がこれを承認しているところをみると、何か話が通ってた可能性が高いです。

日本人を60万人も敵に差し出して、シベリアの強制労働に従事させる。そのうち10%が死んだんですよ。さらに瀬島以外の司令官クラスの日本軍人は収容所に入れられて「ソ連万歳」を叫ぶようになってしまいます。この施設は日本人捕虜を洗脳するための施設でした。

戦争指導的な立場にいながら瀬島はマッカーサーには裁かれなかった。ソ連の捕虜になったからです。ある種守られた立場で東京裁判には被告ではなく、ソ連側の証人として出廷しています。戦後彼は、そのソ連との人脈を生かしてビジネスで大成功します。伊藤忠商事はソ連とか中国とかの共産党が支配する国とのビジネスで急激にのし上がったのです。

彼こそ、「戦争犯罪人」として追求すべきではないでしょうか?
山崎豊子原作の企業サスペンス映画「不毛地帯」のモデルこそ瀬島隆三で、彼は主演・仲代達矢に負けないほどかっこよかったのですが、事実はもっとダークです。

瀬島隆三は、日本人10万人をソ連様に差し出して自分の保身を図った。いや、きっと話はもっと深く広く悪質で、敗色濃厚な日本は、日ソ中立条約があるからソ連に対英米戦の調停をお願いするため、瀬島をモスクワに向かわせたのでしょう。その際条件として、日本人、日本の国土(例えば北海道ですね)を差し出すということをこれは政府の一部とは話したんだと思います。
※これには明確な証拠がいくつも発見されています。

ところが、モスクワ滞在中に、「スターリンは日ソ中立条約を破って、日本に宣戦布告する予定である」と、どこかから聞き、ここから瀬島独自の旋回がはじまった。「アメリカに負けるのか?ソ連に負けるのか?」彼はソ連を選びます。ソ連政府に対してに便宜を図り、日本を共産主義化することに協力すると約束したのだと思います。そのかわり、自分の身はマッカーサーから守ってほしいと。

もちろん日本の軍部や政権内部にも「アカ(共産主義者)」は浸透していましたから、瀬島の協力者はいたでしょう。現に、日本の情報士官、つまりスパイである小野寺信が、戦争末期に「ソ連が中立条約を破って参戦する予定だ」という情報を日本政府にもたらそうとしますが、途中で握りつぶされています。途中というのは大本営です。
「鯛は頭から腐る。」
こんな奴らがいる日本が戦争に勝てるはずはありません。現場がどれほどがんばって、死を賭して戦おうとも日本は負けたでしょう。戦時のどさくさに紛れて、国民を危機に陥れたり、利益を掠めたり、人を陥れることで自分の保身を図った人物は糾弾されなければならないのに、全く触れらないどころか敗戦利得者になっている。

何より思うのは、日本人は外国人に裁かれるだけで、自らあの戦争を振り返っていないのが問題でしょう。ここまで日本人は反省一辺倒の思考停止で、生々しい中味、苦々しい現実に触れようとせず、そういうことに触れざるを得ない安全保障はアメリカまかせだったわけですから。自ら日本人を裁く覚悟が必要です。

今、世界はグローバリズムの名を借りた経済侵略、文化破壊、情報支配の時代になっています。この激動の中で、どのように日本は自身の足で立っていくのか?瀬島が追求されない日本、当然現在でも多くの悪い奴が跋扈しています。彼らがあぶりだされるような国にならなければ日本は早晩滅びると思いますね。

 

映画『不毛地帯』(1976)
山崎豊子原作の企業サスペンスを映画化。大本営の作戦立案参謀であった旧大日本帝国陸軍中佐が、シベリア抑留からの帰還後に総合商社に入社し、経済戦争を戦い抜いていく姿を描く。連載中に、ロッキード事件、ダグラス・グラマン事件があり、偶然似た題材を扱った本作が話題になったが、実在するどの事件の概要とも異なるフィクション作品である。主人公の壱岐正元帝国陸軍中佐は伊藤忠商事の元会長瀬島龍三がモデルといわれる。仲代達矢を筆頭に、田宮二郎、八千草薫、丹波哲郎ら豪華キャストが集結した3時間を超える重厚な群像劇。

監督:山本薩夫
原作:山崎豊子
脚本:山田信夫
出演:仲代達矢、田宮二郎、八千草薫、丹波哲郎、山形勲
制作:芸苑社
配給:東宝
製作年:1976年公開
上映時間:181分

 

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