大義のためか、注目のためかーメディアの暴走特集①『ニュースの天才』
誰しもが情報の発信者になり得るこの時代、メディアが発信する情報は全て正確なのだろうか。答えは否だ。メディアを構成するのは、間違いを犯す人間であることを忘れてはいけない。そして時として、メディアは大きく暴走する。真実を追求するため、注目を集めるために。「今夜何観る?」今日と明日は“メディアの暴走”に注目して、作品を紹介していく。
『ニュースの天才』(2003)
野心が招いた、若きジャーナリストの暴走
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メディアの暴走には大きく分けて2つの側面がある。過剰な取材によって相手を精神的に追い込んでしまう暴走。そしてもう1つは注目を集めるために虚偽のニュースをでっち上げるという暴走だ。本作『ニュースの天才』は実在のジャーナリスト、スティーブン・グラスが起こした記事の捏造事件を基にしている。
記事の捏造という暴走を描いているが、その裏には色んなテーマが描かれている。注目を集める、面白い記事を書かなければいけない、栄光を必死で追いかける若きジャーナリストの焦り。捏造記事が出た時、企業としてどうするのか。真のジャーナリストとして何をするべきなのか。そういったテーマが複雑に絡み合い、本作を構成している。それに捏造されたニュース記事を鵜呑みにして盛り上がる大衆の姿は、現代の私たちに通ずる部分がある。特に現代はSNSというメディアの出現によって、誰しもが容易に情報の発信者になれる時代だ。スティーブン・グラスが大衆の注目を集めるために記事を書く姿は、いいね!を多く集めるためにSNSに向かう私たちの姿と同じだ。
誰からも愛され、野心に満ち溢れたジャーナリストは道を踏み外してしまった。興味深いことに、この役を演じたのは『スター・ウォーズ』でアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセンだ。アナキンもまた、一人前のジェダイを志しながらも、自らの心の弱さに負けてダークサイドに堕ちてしまう。そんな楽しみ方も出来る映画だ。
【ストーリー】
“THE NEW REPUBLIC”誌編集部で最年少のスティーブン(ヘイデン・クリステンセン)は次々と特ダネを発表。だがある日編集長のチャック(ピーター・サースガード)は彼の書いた記事に疑問を感じ始める。
【.キャスト】
ヘイデン・クリステンセン、ピーター・サースガード、クロエ・セヴィニー ほか
【スタッフ】
監督:ビリー・レイ