完璧なヒーローなんていない――映画『スーパーガール』公開直前!コミック、アニメ、実写で辿る不屈のヒロイン史
2026年6月、新たなDCユニバース(DCU)の本格的な広がりを告げる大作映画『スーパーガール』がついにスクリーンに登場する。多くの映画ファンにとって記憶に新しいのが、2025年に公開されたジェームズ・ガン監督の映画『スーパーマン』だろう。ミリー・オールコック演じるカーラ・ゾー=エルの登場は、新時代の幕開けを予感させる重要な布石として大きな話題を呼んだ。
あの鮮烈なスクリーンデビューを経て満を持して公開される今回の単独映画『スーパーガール』は、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のクレイグ・ギレスピーがメガホンを取り、地球を飛び出した壮大なスペース・オペラとして描かれる。しかし、私たちが劇場で彼女の本格的な宇宙の旅を目撃する前に、知っておくべきことがある。それは、スーパーガールというヒーローが歩んできた、60年にも及ぶ「自立と不屈の歴史」だ。コミック、アニメ、あるいは歴代の実写作品――それぞれの世界で彼女がどう描かれ、なぜ最新作のようなタフなヒーローへと行き着いたのか。その歩みを媒体ごとに紐解いていく。
▶コミック:1959年の誕生から、世界を震撼させた悲劇の死
スーパーガールことカーラ・ゾー=エルがDCコミックスの歴史に姿を現したのは、1959年5月刊行の『Action Comics #252』に掲載された「The Supergirl from Krypton」だった。ライターのオットー・バインダーとアーティストのアル・プラスティーノによって創造された彼女は、スーパーマン(カル=エル)の従姉妹であり、滅びゆくクリプトン星から生き延びたもう一人の生存者という衝撃的なキャラクターとしてデビューを飾る。1972年には初の個人誌『Supergirl vol.1』が創刊されるが、誕生当初の彼女はどこか従兄の影に隠れた引き立て役のような扱いを受けることも少なくなかった。明るく純粋なブロンドの少女という記号的なキャラクターだった彼女の運命を大きく変えたのが、1985年の歴史的コミックイベント『クライシス・オン・インフィニット・アース』だ。マルチバースの崩壊という未曾有の危機において、カーラは最愛の従兄の身代わりとなって激しい戦闘の末に命を落とす。この悲劇的な死によって、彼女は自らの意志で世界を救う一人の独立したヒーローとして広く認知されることとなった。その後、90年代にはクリプトン星人ではない「マトリックス」や「リンダ・ダンバース」を主人公としたシリーズなど、度重なるリブート(再構築)を経たが、2004年の『Superman/Batman #8』にて正統なカーラ・ゾー=エルが本格的に復活。時代を追うごとに、彼女の物語はより深く、より現代的なテーマを内包するようになっていったのである。
▶アニメ:ティーンの葛藤を等身大で描き、ジャスティス・リーグの主軸へ
コミックで培われた彼女のキャラクターは、アニメーションの世界でさらに活き活きと、そして親しみやすい形で描かれることになる。特に大きな足跡を残したのが、1990年代の傑作『スーパーマン(アニメシリーズ)』や、それに続く『ジャスティス・リーグ・アンリミテッド』だ。ここでは、地球の文化に戸惑いながらも、ティーンエージャーらしい等身大の葛藤と、一歩も引かない勝気な性格が魅力的に描かれた。最初はクラークに守られる側だった彼女が、次第にジャスティス・リーグの一員として一人前に成長していく姿は、多くの視聴者の胸を打った。さらに近年の『DCスーパーヒーロー・ガールズ』では、活動的でパワフルな少女として描かれるなど、アニメの世界は常に「その時代の少女たちが憧れる、等身大でカッコいいヒーロー」としてのスーパーガールを提示し続けてきた。アニメ作品を通じて、彼女はスーパーマンの家族という枠を超え、次世代を引っ張る頼れる先輩ヒーローとしてのポジションを確固たるものにした。
▶実写:スクリーンを彩った歴代のアイコンたち
実写の世界において、スーパーガールはその時代ごとの「強い女性像」や「理想のヒロイン像」を体現し、ミリー・オールコックへと繋がるレガシーを築いてきた。最初の一歩となったのは、1984年の映画『スーパーガール』で主演を務めたヘレン・スレーターだ。明るく健康的な魅力で“希望のヒロイン”というイメージの礎を築いた彼女のビジュアルは、今なおアイコニックな存在として愛されている。2000年代に入ると、若き日のクラーク・ケントを描いたTVシリーズ『SMALLVILLE/ヤング・スーパーマン』のシーズン7にローラ・ヴァンダーヴォートが登場。クールでミステリアスな新たなスーパーガール像を提示し、いとこ関係のドラマに焦点を当てた。長年キャラクターの人気を世界的に牽引したのが、2015年から6シーズンにわたり放送されたTVシリーズのメリッサ・ブノワだ。等身大の働く女性としての悩みと力強さを実写イメージとして完全に確立し、シェアード・ワールドの中心人物として君臨した。さらに2023年の映画『ザ・フラッシュ』では、サッシャ・カジェが初のラテン系スーパーガールとして登場。黒髪のショートカットで、ワイルドかつ孤高のヒーロー像を熱演したことも記憶に新しい。歴代の女優たちは、時代が求めるヒーロー像を鋭く捉えながら、バトンを繋いできたのだ。
▶最新作が描く、誰も見たことのないスーパーガール
そして2026年、実写化の歴史はミリー・オールコックという新たな才能によって、全く新しい次元へと突入する。実写5代目となる今回の単独映画『スーパーガール』がこれまでのどの作品とも決定的に異なるのは、彼女が抱える「圧倒的な孤独と、不条理への怒り」に深く焦点を当てている点だ。映画のベースとなった傑作コミック『スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー』(日本ではフェーズシックス出版より翻訳版がタイムリーに刊行中)が示す通り、彼女の背景は過酷だ。「地球で愛されて温広く育ったクラーク(スーパーマン)」とは異なり、故郷クリプトン星の崩壊ですべてを失った彼女は、唯一の心の拠り所である愛犬クリプトと過酷な環境を生き抜いてきた。そんななか、突如現れたクレム(マティアス・スーナールツ)によってクリプトが毒に侵されてしまう。残された解毒剤探しのタイムリミットはわずか3日。カーラは、同じくクレムに家族を奪われ復讐を誓った少女ルーシー(イヴ・リドリー)とともに、宇宙をまたにかける危険な戦いへと身を投じることになる。予告編などで垣間見えるカーラは、これまでの「正しさ」を象徴するヒーローとは一線を画す。やさぐれ、時に酒を煽り、泥臭い戦いをも厭わないその姿は、痛々しいほどの人間味に溢れている。ギレスピー監督の手腕によって、銀河を舞台にした冷徹な復讐劇でありながら、どこかエモーショナルで生々しいドラマとして構築されているのだ。
かつてスーパーマンの従姉妹として始まったカーラの旅路は、傷つき、立ち上がり、自らのアイデンティティを勝ち取る闘いの歴史そのものだった。明るい希望の象徴から、宇宙の不条理に牙を剥く孤高の戦士へ。前作『スーパーマン』から日本語吹替を続投する永瀬アンナの声響くスクリーンで、ミリー・オールコックが魅せる新たなスーパーガールの姿は、これまでのイメージを鮮やかに塗り替え、私たちに「真の強さとは何か」を突きつけてくれるはずだ。映画館の暗闇で彼女の新たな伝説が始まるその前に、この深遠なる歴史の1ページに想いを馳せてみてはいかがだろうか。
『スーパーガール』
6月26日(金)日米同時公開
■ストーリー
スーパーマンが地球を救った、その後の世界。故郷クリプトン星を失った壮絶な過去をもつカーラ・ゾー=エル(スーパーガール)は、唯一の心の拠り所である愛犬クリプトと静かに暮らしていた。そんなとき、突如現れた謎の敵・クレムの攻撃によってクリプトが毒に侵されてしまう。解毒剤を求めるカーラは、同じくクレムに家族を奪われた少女・ルーシー、そして宇宙最凶の賞金稼ぎ・ロボとともに、宇宙をまたにかけた壮大な冒険へと乗り出していく。残された時間はわずか《3日間》。果たして、カーラはクリプトを救えるのか。そして、銀河を揺るがす戦いの行く末とは――
監督:クレイグ・ギレスピー(『クルエラ』、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』)
出演:ミリー・オールコック、イヴ・リドリー、ジェイソン・モモア 他
製作:ジェームズ・ガン、ピーター・サフラン
全米公開:2026年6月26日
原題:Supergirl
配給:東和ピクチャーズ・東宝
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