第38回東京国際映画祭ラインナップ発表!瀧内公美がナビゲーター就任、坂下雄一郎監督『金髪』・中川龍太郎監督『恒星の向こう側』がコンペ入り
10月27日(月)から11月5日(水)まで開催される第38回東京国際映画祭(TIFF)のラインナップ発表記者会見が、10月1日(水)に東京ミッドタウン日比谷BASE Q HALLで行われた。会見には、映画祭ナビゲーターに就任した俳優の瀧内公美、『金髪』で「コンペティション」部門に参加する坂下雄一郎監督、『恒星の向こう側』で同部門に出品する中川龍太郎監督が登壇した。
今年の映画祭は、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区を舞台に10日間にわたり開催される。オープニングには日比谷仲通りでのレッドカーペットを予定し、併設するコンテンツマーケット「TIFFCOM」は10月29日から31日にかけて同時期開催される。東京国際映画祭チェアマンの安藤裕康は「映画を通じた対話と調和」を今年のテーマに掲げ、交流ラウンジの拡充、ジェンダー問題への取り組み、未来を担う人材育成の3つを柱に据えた。
今年の「コンペティション」部門の審査委員長は、ロカルノ国際映画祭やベルリン国際映画祭でアーティスティック・ディレクターを務めたカルロ・シャトリアンが担当。審査委員には俳優のグイ・ルンメイ、編集者のマチュー・ラクロー、俳優の齊藤工、映画監督のヴィヴィアン・チュウが名を連ねる。
フェスティバル・ナビゲーターを務める瀧内公美は「青天の霹靂です。緊張しています」と就任の驚きを語り、「アジアの最高峰の映画祭と認識しています。国内で上映されない作品や新しい才能に出会える、原石を探す場所です」と期待を寄せた。
プログラミング・ディレクターの市山尚三は「コンペティション」部門の15作品を紹介し、日本からは坂下雄一郎監督『金髪』と中川龍太郎監督『恒星の向こう側』が選出された。坂下監督は「過去に応募して落ちた経験もあり、観客としても通った映画祭。今回選ばれたことは感慨深い」と語り、中川監督は「12年前に初めて選ばれて以来の縁ある映画祭。コンペ入りは光栄です」とコメントした。
このほか、石坂健治シニア・プログラマーによる「アジアの未来」部門、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチによる「ウィメンズ・エンパワーメント」部門、藤津亮太による「アニメーション」部門の紹介が行われた。今年新設された「アジア学生映画コンファレンス」では、アジア各国の映画学校推薦による60分未満の実写・アニメ作品が競う。カンヌをはじめとする国際映画祭で既に評価を得ている作品も並び、将来の巨匠の登場に期待が寄せられている。
また「ガラ・セレクション」「ワールドフォーカス」「Nippon Cinema Now」といった部門の上映作品も発表。さらに「黒澤明賞」「エシカル・フィルム賞」などの授賞企画、交流ラウンジや関連イベントも紹介され、例年以上の盛り上がりが見込まれている。
今年は総計183本が上映される予定。オープニング作品は阪本順治監督の『てっぺんの向こうにあなたがいる』、センターピース作品には山田洋次監督『TOKYOタクシー』、クロージング作品はクロエ・ジャオ監督の『ハムネット』が選ばれた。
会見では最後に質疑応答も行われ、映画祭の方向性や東南アジア映画の勢いについて議論が交わされた。市山プログラミング・ディレクターは「今回多くの東南アジア作品が入ったのは、単に面白い作品が多かったから。今は特に映画祭を目指した作品作りが盛んになっている」と現状を説明した。
第38回東京国際映画祭は10月27日から11月5日まで開催される。
【瀧内公美 Q&A】
Q.東京国際映画祭のイメージ
アジア最高峰の映画祭だと認識しています。アジアから世界へというイメージがある中での先駆者であり、とても歴史の深い映画祭です。
Q.ナビゲーターに選ばれた感想
青天の霹靂でした。まさか自分が、という気持ちです。ナビ―ゲーターとして何ができるかを皆さんと一緒に話し合いながら活動していきますので、多くの方に足を運んでいただきたいです。
Q.東京国際映画祭で記憶に残っている作品
『百円の恋』です。印象的で凄く好きな作品でした。
Q.今年の映画祭で注目している作品
『雌鶏』、『恒星の向こう側』、『パレスチナ36』、『遥か東の中心で』です。多くの作品から絞り込みました。この4本は必ず見たいです。
Q.東京国際映画祭とはどんな存在ですか
国内で上映することが難しい作品が映画祭で観られる醍醐味を感じますし、新しい作家との出会いの場所です。映画祭に通って、この監督素敵だなという作品を見つけて、劇場公開されたらまた見に行きたいです。原石を探す場所という認識です。
【坂下雄一郎監督、中川龍太郎監督 Q&A】
Q.コンペティションに選ばれたことについて
坂下:東京国際映画祭は、学生時代に作品を応募して落ちたり、観客として通ったり思い出がある映画祭です。過去に落ちた経験もあるので、コンペティションに選ばれたのは感慨深く、ありがたいです。
中川:大学生時代に作った映画を上映していただけたり、2年前はガラ・セレクションで選んでいただいたり、縁深い映画祭です。初めてコンペティションに選出いただき光栄です。
Q.映画祭で期待していること
坂下:これだけ特定の期間でまとめて色んな映画が観られる機会はないので、映画を観る人がこれを機に増えるといいなと思います。
中川:映画祭は、プログラマーの選ぶ世界の地図がそこにあると思います。市山さんの映画の選定は素晴らしいので、新しい東京国際映画祭の素晴らしさを感じてもらえたら嬉しいですし、今回は時間があるので沢山映画を観たいと思います。
Q.特に興味のある映画
坂下:『雌鶏』です。監督の過去作を見ていて、変わっていたことが印象的だったので今作も気になります。
中川:『虚空への説教』です。映画祭でしか見られないような作品なので、観たいです。ドキュメンタリーは自分が挑戦したい分野ではありますし、コンペティションにドキュメンタリーがあるのは意義深いと思います。
【瀧内公美、坂下雄一郎監督、中川龍太郎監督 質疑応答】
Q.なぜパレスチナの映画『パレスチナ36』に期待しているのか?
瀧内:現在問題とされている源流は何なのかということを知りたいですし、世界情勢などが絡み合って映画祭でしか公開されない作品もあると思うので、一個人として今見ておかなければならない作品と思ったので観たいです。
Q.映画の見どころ
坂下:ポスターにもあるように、中学生がある日、学校の校則に抗議するため全員で金髪にする作品です。おかしい、と思ったことに声を上げる作品は、当事者に主軸があるものが多いが、あえて教師側に軸を置くことで対処しなければと右往左往する姿をコメディ的に見せることができた。基本はエンタメ映画なので、なるべく笑っていただきたい。それに付随して、社会にある問題についても色々と考えていただければと思います。
Q.河瀬直美監督を起用したことについて
中川:たくさんの素晴らしい俳優さんにアプローチいただいたのですが、自分の中では河瀬監督一択でした。彼女への色々なイメージがあると思いますが、やっぱり一筋縄ではいかない方です。ある種の厳しさもあります。その厳しさが作品に与えるパワーというものが凄くあります。俳優って感受性が資源で、上辺のことではなく、人が持っているややこしく攻撃的な部分を含めてその人間が持っているパワーが強くないと面白くならないんです。河瀬さんはそのパワーの塊で、彼女がいるだけで俳優さんもいい意味でビビります。そういう力をお借りしたく河瀬監督にお願いしました。
【安藤裕康チェアマン、市山尚三プログラミング・ディレクターへの質疑応答】
Q.昨年Amazonのテイクワン賞がなくなりましたが、今年それに代わって新設されたのはアジア学生映画コンファレンスですか
市山:まさにその通りです。東京国際映画祭では、第1回目の受賞者に対して、次回作の支援をしたのですが、うまくいったりいかなかったりで、2回目からは賞金を渡しています。今後どうしていくかは検討課題です。
Q.齊藤工を審査委員に選んだ理由
市山:齊藤さんは、前から知っていて、東京国際映画祭には時間があると観客として来てくださいます。去年はエシカル・フィルム賞の審査委員長で、素晴らしい議論を展開してくださいました。それらを踏まえて、今年はぜひ、メインの審査委員をやってほしいとお願いしました。
Q.グランプリ受賞作品が、映画祭の色となることについてどう考えているか
市山:グランプリについては逆に言うと、審査委員の判断になると思います。割とばらばらな作品群なので、何が受賞するかは審査委員次第です。どれがとってもいいと思っています。
Q.東南アジアの映画の勢いについてどう思うか
かなり映画産業が進行していると思います。東南アジアの共同製作などが盛んになっていて、今特に映画祭に出すような映画を作ろうと言う気が高まっています。今回東南アジア作品が多いのは、面白い作品が多くて偶然です
<第38回東京国際映画祭 開催概要>
開催期間:2025年10月27日(月)~11月5日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
公式サイト:www.tiff-jp.net
<TIFFCOM2025開催概要>
開催期間:2025年10月29日(水)~10月31日(金)
公式サイト:www.tiffcom.jp
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