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日本の映画祭・映画賞ってどうなの!?・・・世界にたくさんある映画祭、どれが何?分かりやすく解説します! PART2

文:大西D(ヒカセン兼業ライター)

いよいよ1ヶ月後に迫った第94回アカデミー賞。日本映画『ドライブ・マイ・カー』が日本映画史上初めて作品賞に候補入りするなど、例年よりも注目度が高くなっている。

映画賞・映画祭の中でも特に歴史が古く、最も権威があるとされているアメリカのアカデミー賞。しかしアカデミー賞には「アカデミー賞の前哨戦」、「アカデミー賞を占う重要な賞」などという賞が存在したりする。もちろん煌びやかな衣装を身に纏ったスターが練り歩くレッドカーペットや華やかなパフォーマンスが披露される授賞式だけを見ても面白いのだが、実はアカデミー賞はそこに至るまでの前哨戦が面白かったりするのだ。

そして言わずもがな、世界はもちろん、日本にはたくさんの映画賞・映画祭がある。そこでMOVIE MARBIEでは4回に渡り世界の映画賞・映画祭を紹介していく。

第2回は日本の映画賞・映画祭を紹介。

日本の映画祭、行ったことある?

日本には「映画祭」と名が付くイベントがたくさん存在する。例えば「東京国際映画祭」である。毎年10月末から11月上旬にかけて開催される映画祭で、日本で開催される映画祭の中では最大規模である。近年はコロナ禍の煽りを受けて、上映される作品数がかなり減ってしまったが、それでも国際映画製作者連盟が公認する映画祭として、世界的にも知名度のある映画祭だ。他にも「ぴあフィルムフェスティバル」、「東京フィルメックス」、「沖縄国際映画祭」、「広島国際アニメーションフェスティバル」、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」などなど、大小様々な映画祭が日本では開催されている。


よく映画祭や映画賞の違いが分からないという声をよく聞くが、平たく言ってしまうと、下記のような違いがある。

映画祭:映画の上映の他に、講演会などのイベント、さらにはマーケットなどが併設されることが多い。
映画賞:授賞式や表彰することがメイン。

もちろん全てが当てはまるわけではないが、平たくいうとこんな感じだ。ただ、映画祭に賞がないかと言われると、そうではなく、例えばカンヌやベルリン、ヴェネツィア、そして東京国際映画祭は映画祭のプログラムの中に「コンペティション」が存在し、審査員数名が最高賞や監督賞などを決めている。
例えば東京国際映画祭には監督や演技部門のほかに「東京グランプリ」と「観客賞」が存在し、観客賞は映画を観た人であれば、誰でも投票できるようになっている。

ちなみに筆者は東京国際映画祭に通うようになって10年近くが経つ。近年は上映される作品数が減ってしまうなど、色々と批判を浴びがちな映画祭ではあるが、それでも映画祭ならではのお祭り感は味わえるし、地味かもしれないがアジアの若き映画作家が作り出す物語は非常に見応えがあるので、もし参加したことがない人がいれば2022年は是非とも映画祭に足を運んで頂きたい。

意外と知らない日本の「映画賞」

では皆さんは日本の「映画賞」はどれくらい知っているだろうか。アメリカのアカデミー賞と違い、日本アカデミー賞の予想は映画ファンの間であってもそこまで活発に行われているわけではなく、豪華絢爛な授賞式が行われるわけでもないのでなかなか知らない人も多いかもしれないが、日本の映画賞をいくつかご紹介しよう。


★日本アカデミー賞

1978年から始まる。毎年3月に授賞式が開催される。基本的な考え方はアメリカのアカデミー賞と同じ。会員は東宝、東映、松竹の人間が占める割合が多く、その会社が製作・配給する作品が有利な傾向にあり、映画ファンから批判を浴びることが多い。なお候補者は全員「優秀賞受賞」でその中から「最優秀賞受賞者」が決まるという形を取っている。


★キネマ旬報ベスト・テン

世界最古クラスの映画賞で、アカデミー賞よりも前の1924年から賞が始まっている。映画評論家、新聞記者、映画雑誌編集者、120名前後で決まる賞となっている。日本アカデミー賞などと違い、興行的にヒットした作品と言うよりかは、純粋に作品の質が結果に繋がることが多いため、単館・ミニシアターで上映された作品が頂点に輝くことも多い。

★ブルーリボン賞

東京のスポーツ7紙の映画担当者で構成された賞。毎年2月ごろに授賞式が行われる。1950年から始まっており、日本アカデミー賞よりも歴史は長いが、立ち位置的には日本アカデミー賞の前哨戦という感じで見られることも。受賞者も日本アカデミー賞の優秀賞受賞者と被ることが多い。

★報知映画賞

報知新聞社が主催する映画賞。スポーツ紙が単独で主催する映画賞で、毎年12月に開催される。日本アカデミー賞より1年早く始まっている。各部門とも読者による投票の上位作品からノミネートが選ばれている、読者参加型である。日本の賞レースの中でも先陣を切って発表されるため、その年の映画賞を占う意味での注目度は高い。

★毎日映画コンクール

毎日新聞社やスポーツニッポン新聞社などが主催。1946年より始まり、毎年2月ごろに授賞式が行われる。通常の部門の他にTSUTAYAプレミアム映画ファン賞といった部門の存在する。

上記は一部だが、日本映画を代表する賞である。その中で最高権威として位置づけられている日本アカデミー賞が最も後発というのが面白いポイントだ。
続いてトリビアや記録を見てみよう。


★日本アカデミー賞最多最優秀賞受賞者
主演のみでは高倉健、吉永小百合の4回が最多。主演と助演の合計では佐藤浩市、役所広司、樹木希林が4回。助演のみでは竹中直人、余貴美子、黒木華の3回が最多。
監督賞は山田洋次、深作欣二、今村昌平、是枝裕和の3回が最多となっている。

★アカデミー賞主要部門制覇
作品賞、監督賞、演技部門の6部門全てを制覇した作品は『Shall we ダンス?』のみ。なお『Shall we ダンス?』は同年の外国語映画賞以外、全ての最優秀賞を受賞、最多13冠を獲得している。


★演技部門W受賞

同じ年に日本アカデミー賞の主演と助演部門の両方で最優秀賞を受賞したのは以下の俳優。
・大竹しのぶ 第2回 主演:『事件』 助演:『聖職の碑』
・真木よう子 第37回 主演:『さよなら渓谷』 助演:『そして父になる』
・岡田准一  第38回 主演:『永遠の0』   助演:『蜩ノ記』

★キネマ旬報ベスト・テン、個人部門制覇作品
キネマ旬報ベスト・テンで個人章が設けられたのは1955年から。そこから日本映画ベスト・テン1位と監督、演技部門を受賞したのは以下の作品のみ。演技部門に助演が加わってからは1作品もない。
・『浮雲』 第29回:監督賞(成瀬巳喜男)、主演男優賞(森雅之)、主演女優賞(高峰秀子)
・『家族』 第44回:監督賞(山田洋次)、 主演男優賞(井川比佐志)、主演女優賞(倍賞千恵子)


★ベスト・テン、読者選出ベスト・テン1位W受賞作品
ベスト・テンと、1972年度に加わった読者選出日ベスト・テンの両方で1位を受賞したのは以下の作品。

日本映画
・『忍ぶ川』(熊井啓監督) 第46回
・『幸福の黄色いハンカチ』(山田洋次監督) 第51回
・『蒲田行進曲』(深作欣二監督) 第56回
・『となりのトトロ』(宮崎駿監督) 第62回 ※アニメ作品として初の日本映画ベスト・テン1位
・『シコふんじゃった。』(周防正行監督) 第66回
・『Shall we ダンス?』(周防正行監督) 第70回
・『HANA-BI』(北野武監督) 第72回
・『顔』(阪本順治監督) 第74回
・『たそがれ清兵衛』(山田洋次監督) 第76回
・『誰も知らない』(是枝裕和監督) 第78回
・『フラガール』(李相日監督) 第80回
・『それでも僕はやってない』(周防正行監督) 第81回
・『おくりびと』(滝口洋二郎監督) 第82回
・『ディア・ドクター』(西川美和監督) 第83回
・『そこのみにて光輝く』(呉美保監督) 第88回
・『この世界の片隅に』(片渕須直監督) 第90回
・『万引き家族』(是枝裕和監督) 第92回
・『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督) 第95回

外国語映画
・『ロッキー』(ジョン・G・アビルドセン監督) 第51回
・『クレイマー、クレイマー』(ロバート・ベントン監督) 第54回
・『E.T.』(スティーブン・スピルバーグ監督) 第56回
・『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(ケビン・コスナー監督) 第65回
・『ショーシャンクの空に』(フランク・ダラボン監督) 第69回
・『秘密と嘘』(マイク・リー監督) 第71回
・『L.A.コンフィデンシャル』(カーティス・ハンソン監督) 第72回
・『恋に落ちたシェイクスピア』(ジョン・マッデン監督) 第73回
・『ロード・トゥ・パーディション』(サム・メンデス監督) 第76回
・『戦場のピアニスト』(ロマン・ポランスキー監督) 第77回
・『ミスティック・リバー』(クリント・イーストウッド監督) 第78回
・『ミリオンダラー・ベイビー』(クリント・イーストウッド監督) 第79回
・『ノーカントリー』(ジョエル&イーサン・コーエン監督) 第82回
・『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド監督) 第83回
・『息もできない』(ヤン・イクチュン監督) 第84回
・『ジャージー・ボーイズ』(クリント・イーストウッド監督) 第88回
・『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド監督) 第90回
・『スリー・ビルボード』(マーティン・マクドナー監督) 第92回
・『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督) 第93回
・『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督) 第94回
・『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督) 第95回

こうしてデータで見ると色々と面白いことが分かる日本の映画賞。特に日本アカデミー賞と、世界でもトップクラスの歴史を持つキネマ旬報ベスト・テンでは、同じような作品が高評価を得ているのかと思えば、意外と違ったりする部分もあって、そこの違いはかなり面白いところだ。

近年は特に韓国映画・ドラマの勢いが世界的にすごく、何かと批判の的になりがちな日本の映画祭や映画賞ではあるが、それでも映画ファンであれば当然結果は気になるところではあるし、だからこそいろんな意見が出てくるのだろう。

色んな意味で注目を集める日本の映画賞や映画祭。想いはそれぞれあるだろうが、調べると色んなことが分かって面白いかもしれない。

次回はファンタ系映画祭について特集する。


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