カンヌ、ヴェネツィア、ベルリン・・・世界にたくさんある映画祭、どれが何?分かりやすく解説します! PART1
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いよいよ1ヶ月後に迫った第94回アカデミー賞。日本映画『ドライブ・マイ・カー』が日本映画史上初めて作品賞に候補入りするなど、例年よりも注目度が高くなっている。
映画賞・映画祭の中でも特に歴史が古く、最も権威があるとされているアメリカのアカデミー賞。しかしアカデミー賞には「アカデミー賞の前哨戦」、「アカデミー賞を占う重要な賞」などという賞が存在したりする。もちろん煌びやかな衣装を身に纏ったスターが練り歩くレッドカーペットや華やかなパフォーマンスが披露される授賞式だけを見ても面白いのだが、実はアカデミー賞はそこに至るまでの前哨戦が面白かったりするのだ。
そして言わずもがな、世界はもちろん、日本にはたくさんの映画賞・映画祭がある。そこでMOVIE MARBIEでは4回に渡り世界の映画賞・映画祭を紹介していく。
第1回は世界の映画賞・映画祭を紹介。
世界各国の“アカデミー賞”
アメリカのアカデミー賞が最も有名であることは変わりないが、アカデミー賞はあくまでもアメリカ映画への賞だ。その規模や歴史、また近年は多様性を求める声ゆえにアメリカ映画以外の作品も多く候補入りすることが増えたが、基本的にはアメリカ映画の賞である。なので、一昨年の『パラサイト』が特にそうだが、そういった一国の映画賞で、その国以外の映画が認められるということは、やはり素晴らしいことなのだ。この辺の、アカデミー賞付近の賞については第4回で紹介する。
アカデミー賞はアメリカの映画賞だが、当然、世界各国の映画業界、それぞれにそれぞれの国の映画を表彰する映画賞がある。よく「〇〇のアカデミー賞」と言われたりする映画賞があるが、その一例を紹介しようと思う。
日本→日本アカデミー賞
韓国→大鐘賞
イギリス→英国アカデミー賞
フランス→セザール賞
スペイン→ゴヤ賞
ドイツ→ドイツ映画賞
イタリア→ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞
日本ではアメリカのアカデミー賞以外あまりニュースになることはないが、こういった映画賞を受賞した作品も日本で公開される。映画が好きであっても中々聞かない賞もあるかもしれないが、ぜひ注目して頂きたい。
世界の映画祭と日本の関わり
映画祭は映画賞とは異なる。映画祭は映画の上映をメインとし、映画祭によっては賞の授与や講演会などのイベントが行われることが多い。特に国際映画製作者連盟が公認する国際映画祭はそれぞれ歴史や規模も大きく、世界各国の著名人(俳優・監督)が審査員を務めることも多い。
その中でも特に「世界三大映画祭」と呼ばれるカンヌ、ヴェネツィア、ベルリンはニュースでも聞く人が多いだろう。この三つの映画祭について、日本映画の主な受賞作品も見ながら、簡単に紹介しようと思う。
カンヌ国際映画祭(1946年〜)
毎年5月頃開催。三大映画祭の中でも特に注目度の高い映画祭。大規模な映画のマーケットも開かれることもあり、産業的にも重要。最高賞はグランプリではなく「パルム・ドール」で、グランプリは「グランプリ」で賞がある。
主な日本の受賞作は以下の作品
パルム・ドール:『地獄門』(衣笠貞之助監督)、『影武者』(黒澤明監督)、『万引き家族』(是枝裕和監督)
グランプリ:『死の棘』(小栗康平監督)、『殯の森』(河瀬直美監督)
監督賞:大島渚『愛の亡霊』
男優賞:柳楽優弥『誰も知らない』
ヴェネツィア国際映画祭(1932年〜)
毎年8月〜9月頃開催。三大映画祭の中では最も歴史の長い映画祭。最高賞は「金獅子賞」。近年は『ノマドランド』、『ジョーカー』、『シェイプ・オブ・ウォーター』など、アカデミー賞に絡む作品が受賞することが多く、アカデミー賞の前哨戦としても注目されている。
主な日本の受賞作は以下の作品
金獅子賞:『羅生門』(黒澤明監督)、『HANA-BI』(北野武監督)
監督賞:溝口健二『西鶴一代女』、北野武『座頭市』、黒沢清『スパイの妻』
男優賞:三船敏郎『用心棒』『赤ひげ』
ベルリン国際映画祭(1951年〜)
毎年2月頃開催。三大映画祭の中では最も後発。開催時期がアカデミー賞と近いこともあり、映画祭の中でもあまり目立たない。また近年受賞作品がアカデミー賞に絡むカンヌ、ヴェネツィアとは異なり、アート系作品が毎年受賞する独自の色がある。最高賞は「金熊賞」。
主な日本の受賞作は以下の作品
金熊賞:『武士道残酷物語』(今井正監督)、『千と千尋の神隠し』(宮崎駿)
監督賞:今井正『純愛物語』、黒澤明『隠し砦の三悪人』
女優賞:左幸子『にっぽん昆虫記』『彼女と彼』、田中絹代『サンダカン八番娼館 望郷』
寺島しのぶ『キャタピラー』、黒木華『小さいおうち』
※現在は男優賞、女優賞は廃止され主演俳優賞、助演俳優賞になっています
続いては各映画祭の記録やトリビアを見てみよう。
★最高賞受賞記録
パルム・ドール、金獅子賞、金熊賞の最多受賞はそれぞれ2回が最多記録。パルム・ドールを2回受賞した監督は8人、金熊賞を2回受賞した監督は4人だが、金獅子賞を2回受賞したのは長い歴史の中でもアン・リーただ一人。
★最高賞は嬉しいけど・・・
カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞すると他の部門は受賞できない決まりになっている。伝統的に一つの映画に複数の賞を与えないようにしてきたカンヌだが、第44回でコーエン兄弟の『バートン・フィンク』がパルム・ドールに加えて監督賞と男優賞を受賞する事態に。これ以降パルム・ドールを受賞した作品は複数部門受賞できないということが明文化された。しかし、その後の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『エレファント』は例外的にパルム・ドールを含む複数部門を受賞している。
★三大映画祭を制覇した映画人
カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの全てで個人賞を受賞した映画人も少なからず存在する。ジュリアン・ムーア、ジュリエット・ビノシュ、ショーン・ペン、ジャック・レモンなどがその代表格で、加えて彼らはアカデミー賞も受賞している。監督ではポール・トーマス・アンダーソンが三大映画祭全てで監督賞を受賞。しかも彼の場合は監督6本目でその偉業を成し遂げた。
★映画祭に好かれる監督
映画祭によっては同じ監督の作品が何本もコンペティション部門に入ったり、賞を受賞したりすることもある。その最たる例がデンマーク映画の巨匠ラース・フォン・トリアー。彼の作品はこれまで9本、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出されており、パルム・ドール1回、グランプリ1回、女優賞3回を受賞している。ちなみにその後カンヌで「ヒトラーに共感する」発言で第バッシング浴び、『メランコリア』を最後に彼の作品はカンヌのコンペティション部門には選ばれていない。
華やかなレッドカーペットでも大きな注目を集める映画祭だが、こういった記録にも注目してみると面白いことが色々と分かるところが、また面白いところだ。
三大映画祭に次いで規模が大きな国際映画祭としてはロカルノ、ワルシャワ、モスクワ、東京などがあげられる。他にも数多くの映画祭が世界各国で開催され、その受賞作品も多種多様だ。また、アカデミー賞の前哨戦という意味で重要視されている映画祭としてはトロント国際映画祭、サンダンス映画祭がある。東京については次回、サンダンス映画祭については第3回で触れようと思う。
世界各国の映画賞・映画祭はそれぞれの歴史や受賞作がかなり独特で1回の記事で紹介するのは中々難しいが、上映・受賞する作品はそれぞれの映画賞・映画祭で実に多種多様だ。こういった違いに注目して、映画賞・映画祭を比較してみるのも面白いかもしれない。
次回は日本の映画賞・映画祭を紹介する。
(C)2007 HAISHANG FILMS/WISEPOLICY
(C)ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, TRUST FILM SVENSKA, LIBERATOR PRODUCTIONS, PAIN UNLIMITED, FRANCE 3 CINÉMA & ARTE FRANCE CINEMA
(C)2011 Zentropa Entertainments ApS27
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