【レコメン広場】読者が考える「秋に見たくなる映画」とは? ②『ブレードランナー 2049』(2017)
気温も涼しくなり、夜も長くなってきた今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
灼熱の夏が終わり、気が付けば季節はもう“秋”です。
秋と言えば、食欲の秋、芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、行楽の秋…など、
私たちの感性をビシビシと刺激してくるシーズンですね。
そこで、今回のレコメン広場では、読者の皆さんが思わず秋の季節に見たくなる映画を大募集!
秋がテーマの作品、別に季節は関係ないけど、何故か秋に見たくなる作品など、
これぞというタイトルを選んで、その作品にまつわる思い出や、この映画のここが好き!など、思いのたけを綴って下さい!
⬛︎投稿者:rand さん
『ブレードランナー 2049』(2017)
35年の時を経て蘇るサイバーパンクSFの金字塔『ブレードランナー 2049』
秋と言えば、急速に肌寒くなり、冬の到来を意識する季節。そういう時、この映画のラストシーンを思い出します。
荒廃した近未来の都市を描く『ブレードランナー』の続編『ブレードランナー 2049』です。
今作では、『メッセージ』『DUNE/デューン 砂の惑星』のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を務め、前作の監督リドリー・スコットは製作総指揮に回っています。主演はライアン・ゴズリング。抑制した演技を披露します。また、前作の主人公を演じたハリソン・フォードが続投しています。
舞台となるのは、2049年のカリフォルニア。天候は常に曇りか雨です。全ての土地は文明が作ったものか、その残骸で埋め尽くされています。生態系は崩壊し、「合成農業」という手法で人々は飢餓を回避しています。その世界にはレプリカントと呼ばれる人造人間がいます。旧型レプリカントたちは奴隷労働力として使われ、かつて反乱を起こしたものの、結果的に追い詰められ “解任”されました。
従順であるよう設計された新型レプリカントの1人、捜査官「K」の任務は、残党の旧型レプリカントを“解任”することです。Kは周りの人間たちから「人間もどき」とののしられますが、無表情でやり過ごして仕事を進めます。この映画は、アイデンティティをめぐるKの苦闘の物語です。
今作は、前作へのオマージュやリスペクトにあふれています。声で操作する写真解析装置、折り紙、などなど。折り紙が羊であるところは、前作の原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』から取ったのだろうと思うと、さらに奥深いです。
リスペクトにとどまらず、前作を超えてきている部分も、特筆すべきでしょう。映像面では、前作がロサンゼルスの都市の中に閉じていたのに対し、舞台をカリフォルニア全域に広げることで、荒涼とした砂漠が弱い太陽光に照らされる光景などを実現できています。物語においても、前作の、自分の記憶は本物なのか偽物なのか? というテーマに加えて、自分は他の誰とも違う特別な存在なのか? という疑問が生じることで、本物・偽物の二択だけではない、より重厚な作品になっていると感じます。
なお、前作を見ていない状態で今作を見た人が置いてけぼりにならないかどうかについては、おそらく根本的なところでは問題ないと思います。前作の人物や出来事は、今作の世界では、謎につつまれた過去です。Kが捜査を進めるにつれて浮かび上がってくるので、終始、Kの目線で発見していくことができます。とはいえ、前作を見ておくとより楽しめるのは、間違いありません。
ちなみに今作には、劇場公開に先立ちウェブ配信された、前日譚となる短編3部作『ブレードランナー ブラックアウト2022』『2036:ネクサス・ドーン』『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』があります。『ブレードランナー 2049』につながる、重要なターニングポイントを描きます。興味を持たれた方は、まず前日譚を見てみるのも良いかもしれません。
- 【レコメン広場】読者が考える「秋に見たくなる映画」とは? ①『 ウォーターシップダウンのうさぎたち』(1978)
- 【レコメン広場】読者が考える「秋に見たくなる映画」とは? ③ピーター・ウィアー監督『いまを生きる』(1989)