映画ファンがおススメするバットマン作品は！？「ベスト・オブ・バットマン」／④『ニンジャバットマン』バットマン史に新たな風を吹かせた日本産アニメ作品！

2022.03.12

読者投稿コーナー「レコメン広場」がスタート！記念すべき第1回は、『ザ・バットマン』公開記念「ベスト・オブ・バットマン」！これまでに映像化された全てのバットマン作品で、1番思い入れのあるタイトルを大募集しました！バットマンへの情熱やこだわり、切ない思い出など、バットマンへの熱い想いを綴って頂きました！

⬛︎投稿者：孔明 さん

『ニンジャバットマン』（2018）

バットマン作品からベストを選ぶというのは映画シリーズからベストを選ぶ類いの中でも結構難しい部類に入ると考えている。そんな私が選んだベスト・オブ・バットマンは「ニンジャバットマン」である。

まず前提として私はDCコミックスのヒーローにはそれ程詳しいわけではない。子供の頃にアニメ版「バットマン」は少しだけ見ておりなんやかんやで「バットマンビギンズ」以降のバットマンの映画はある程度追っているものの、原作も含めた知識はそこそこ。バットマンの映画の中で人気が高いのは恐らくティム・バートン監督の「バットマン」や「ダークナイト」「ジョーカー」あたりだろうと思うのだが、これらはもっと詳しい方が私以上に素晴らしいレビューを書いてくださると思うので有識者の方々にお任せしたい。

また、昔アニメ制作会社でCG制作進行をしていたこともあり、業界人目線や制作現場的な目線で作品を見てしまう部分もあり一個人の好き嫌い以外の部分で作品の感想を語りがちなのでその点もご了承いただきたい。

私が「ニンジャバットマン」を評価している大きなポイントとして「イメージの脱却」がある。

近年コンテンツ産業の課題のひとつに「長寿IPの生き残り方」がある(IP=知的財産のこと、要するに作品やそのシリーズ)。バットマンが誕生したのは1939年5月。80年以上の歴史があり、キャプテン・アメリカよりも先輩である。スーパーマンを光とするならバットマンは闇夜に紛れて悪を打つダークヒーロー、いわば闇として生まれた。コミックの枠を超えてテレビドラマや映画など多くのメディアミックスを成功させ、近年のアメコミ映画ブームの中でその道標となったのは間違いない。しかし「ダークナイト」や「ジョーカー」など近年の映画は映画評論家からの評価が高いこともあり、よりダークかつリアル志向、そして娯楽作品というよりは小難しそうなイメージが強くなった。新作映画の制作がテンポ良く進んでいないところを見るにDCやワーナーが自身の作品のハードルをどんどん上げてしまい、自分で自分の首を絞め続けている気もした。新作を作り続けなければ勢いが消えて人々の記憶からは忘れ去られてしまう。とはいえ作風を守りつつ新鮮味のある続編を作り続けるのは難しいこと。これはバットマンに限らずスター・ウォーズやガンダムなど殆どのIPが直面する問題である。そんな中登場したのが「ニンジャバットマン」だった。

バットマンとジョーカー達が戦国時代にタイムスリップし、和風にアレンジされた姿で戦いを繰り広げる。最初はあまりにぶっ飛んだタイトルとビジュアルに目と耳を疑った。しかも制作には自らクソアニメを自称するも大ヒットを飛ばした「ポプテピピック」の神風動画が関わっているという。観るまでは一体どんな作品になるのか想像出来ず、正直DCとワーナーの正気を疑った。

アニメーション制作は神風動画とYAMATOWORKS。日本が得意とする手描きアニメーションの質感や雰囲気を維持しつつ3DCGによる実写顔負けのアクションシーンや表情豊かなキャラクターの芝居、ハイディテールなメカ描写に成功している。更にバットサイクルがバットマンに変形合体してアーマードバットマンになるなどのロボットアニメ的な楽しみもあり、和風な見た目以外の部分でも日本アニメーションらしさが盛り込まれている。もちろんこういったアレンジはされているものの、原作設定などはしっかり踏襲しているので、バットマン作品として楽しむことが出来る。比較的エンタメ志向が強く、尺も85分と近年の映画作品に比べて約1時間短い上にバットマン関連のキャラクターが多く登場するので初心者にバットマン入門として薦めやすい。　

バットマンの長い歴史の中でも革命的な本作は後に2.5次元として舞台化もされており、結果的にDCに新たな風を吹かせることに成功したと言える。今後どこでどんな活躍をするのか楽しみだ。