【レコメン広場】あなたの好きな映画館は？エピソード募集中！／④スリラー映画を見た後に実際に起こったスリリング（?）体験。沖縄県北谷町にあるシネコン、ミハマ7プレックスにて。

2023.05.18

読者投稿コーナー「レコメン広場」。今回のテーマは「マイベスト映画館」！

映画館にまつわる思い出、おススメの映画館、映画館で体験した珍エピソードなどを大募集！今はもう無くなってしまった、懐かしの映画館に思いを馳せるのもOK！あなたの体験談を聞かせて下さい！

■屋我平一朗さんの投稿

タイトル：スリラー映画を見た後に実際に起こったスリリング（?）体験。沖縄県北谷町にあるシネコン、ミハマ7プレックスにて。

まず、沖縄にはTOHOシネマズがありません。MOVIXとかティ・ジョイなどもありません。4年前にやっとユナイテッド・シネマが入ってきましたが、それまで沖縄でシネコンと言えば「スターシアターズ」系列のものしかありませんでした。今回の企画で思い出したのは北谷（ちゃたん）町美浜（みはま）にある海のそばのシネコン、ミハマ7プレックスでの出来事です。

あれは2017年7月某日。ホラー・スリラー系映画が大好きな僕は、B級スリラー『ラプチャー -破裂-』を見るために劇場に駆けつけました。B級とは言っても、主演は『ミレニアム』シリーズや『プロメテウス』のノオミ・ラパスですよ。ノオミ・ラパスが謎のカルト集団に拉致されて、なぜか一番嫌いな物（クモ）を与えられ続ける人体実験の被験者にされるんですよ。うーんB級。もちろん、すでに予告編を見てそれは分かった状態で鑑賞に臨んだんですが、まあある程度は楽しめるだろうと高をくくっていました。間違っていました。本当の被験者はノオミ・ラパスではない。観客だったのです。

ニコラス・ケイジ版『ウィッカーマン』のハチ拷問シーンみたいに笑えるなら良かったのに、残念ながら作風はシリアスで、『ハリー・ポッター』シリーズのロンほどではないにせよクモ嫌いの僕は終始悶絶。ガラガラの劇場で、“光の芸術”だけに光の速さで観客を置き去りにしたまま映画は終わりました。監督は、スティーブン・スピルバーグ、スティーブン・ソダーバーグとともにバーグ三銃士が組めそうな名前のスティーブン・シャインバーグ。彼はSM系ラブストーリーの『セクレタリー』で知られていますが、まさかそれを超えてここまでSM（とSF）要素しかない映画を作ってしまうとは。うなだれる僕が劇場を出ようとした時に事件は起こりました。

怒ってか困惑してか、僕と一緒に拷問を受けていた名も知らぬおじさんが、ロビーを掃除中のアルバイトの青年に「おい！　あの映画は何なんだ！」と食ってかかったのです。気まずい。「いや、それは青年に聞いても仕方ないし観客自身が考えるべきだろ」と僕の中の悪魔が呟きました。しかし嘘のつけない僕の中の天使は、おじさんの心からの叫びにヘッドバンギング。すると、しつこいおじさんにうんざりした青年はこう答えました。「主人公が拷問されるだけの映画です！」と。ああ、やっぱりそうだったのか。目に見える物だけがこの世の全てではないはずだと思っていたのに。僕とおじさんはがっくり肩を落としたまま、目を合わすこともなく劇場を後にしました。拷問仲間同士話しかけて、被害者の会でも結成すれば違った未来もあったんでしょうか。

あの時かいた汗は夏の日差しのせいだったのか、悪寒のする体験のせいだったのか、今となってはもう思い出せません。おじさん、アルバイトの青年、お元気ですか。僕は元気です。でもあの映画の意味は未だに分かりません。