明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選/#3 ヨーロッパ企画の戯曲を映画化した『サマータイムマシン・ブルース』
映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。全20回に渡って「生きる原動力になるコメディ映画」をテーマに1本ずつ映画を紹介させていただきます!私がコメディ映画を観たいと思うのは、心が沈んでいるときや現実逃避をしたいとき。だからこそ、爆笑までしなくとも、観ている間だけでも楽しい気分にさせてくれる作品をテーマにピックアップしていこうと思います。
今回選んだのは、ヨーロッパ企画の戯曲を映画化した『サマータイムマシン・ブルース』
第3回となる今回選んだのは映画『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)です。最近は本格的な猛暑となってきましたね…。今回はそんな暑さを吹っ飛ばすような、夏らしい青春コメディを紹介します。
『サマータイムマシン・ブルース』を作り出したのは、今年6月に公開した映画『リバー、流れないでよ』を手掛けた劇団“ヨーロッパ企画”の上田誠。ヨーロッパ企画とは、SFやファンタジー、非日常的な設定における群像コメディを得意としている京都を拠点に活動している劇団です。
そんなヨーロッパ企画が作り出した舞台『サマータイムマシン・ブルース』は2001年に初演され、2003年には再演もされた人気作。ヨーロッパ企画20周年記念として再度上演され、2018年には続編『サマータイムマシン・ワンスモア』として15年後を描いた作品も作られました。
その映画化となった本作の舞台は、とある大学の夏休み。野球に打ち込み、部室で涼み、銭湯に行くようなSF研究会の男たちの前に突然タイムマシンが現れます。最初は誰かのいたずらかと思い、面白半分で乗ってみると本当に作動することが判明。そして、タイムマシンに乗って、昨日壊れてしまったエアコンのリモコンを取り戻すためにタイムトラベルを決行することになります。上田誠は自身が大学時代に作った作品であるとしており、学生らしい純粋なばかばかしさも滲み出る、どこか懐かしい作品です。
監督は本広克行で、主演には永山瑛太、そのほかのSF研究会のメンバーを与座よしあき、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典、そして部室を共有しているカメラ研究部員を上野樹里、真木よう子、未来のSF研究会部員を本多力が演じています。
特に注目すべきはムロツヨシ! 今や『勇者ヨシヒコ』シリーズで大ブレイクし、福田雄一監督作品の常連でコメディ俳優というイメージが強いですが、本作が映画初出演作品です。自らを監督に売り込み、その熱が伝わってチャンスをつかんだと後に語っていました。作品の中でも、ガラクタのペンギンを持ち帰るなど少し変わった動きをするキャラクターであり、現在のムロツヨシのキャラクターが完全に確立される前でありながら、その片鱗を感じ取ることができる貴重な作品でもあるのでは…?と思います。
■ところどころに散りばめられた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』?
タイムリープ/タイムスリップものの映画はいくつもあります。その中でも、今までずっと愛されてきた作品、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを完全に意識した場面が映り込みます。まず、現在時刻を示す時計台。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも、メインの広場として出てきて、マーティが現代に戻るときにも大きな役割を果たす存在です。
また、甲本(永山瑛太)が柴田(上野樹里)をデートに誘う口実としてチケットを買いに名画座を訪れますが、その際に名画座のいたる所にポスターが貼られています。そして何より、相対性理論を専門としながらも研究に挫折した大学の万年助手・保積光太郎(佐々木蔵之介)が、まさにドクのような身なりで、最後には将来タイムマシンを作り出すことを示唆している重要人物として登場するのです。
■タイムスリップものの醍醐味“2周目が面白い”
タイムスリップものの醍醐味は壮大な伏線回収。「あ~、あそこと繋がるのね!」といったスッキリ感を求めて観る人も多いのではないでしょうか? 本作でも冒頭からおかしな事象が多く散りばめられています。実際に変な動きをカメラが捉えているというよりも、背景でぼんやりと何かが映っている。最初に気が付く人は少ないかもしれないし、舞台では表現しにくい、映画ならではの伏線でもあります。何度か観てみても面白いかもしれません!
先週に引き続き、やんちゃな男子学生のくだらない絡みに笑わずにはいられない作品を紹介しました。ねっとりとした暑さを感じる今年の夏、ちょっと頭を使う、一日だけのタイムスリップを観れば、クーラーのありがたみが身に染みるかも?
伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
関連記事:【ENDROLL】「ライターとして生きる。」ライター 伊藤万弥乃 さん(前編)
『サマータイムマシン・ブルース』(2005)
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【ストーリー】
うだるような暑さの夏休み。ある大学のSF研究会の男子学生たちが、グラウンドで下手な野球に興じている。一方、SF研部室の奥にある暗室では、カメラ部の女子部員がグループ展に向けての作業に没頭していた。やがてSF研メンバーが部室に戻ってくるのだが…。
【キャスト】
瑛太、上野樹里、与座嘉秋、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典、本多力、真木よう子、佐々木蔵之介
【スタッフ】
監督:本広克行
脚本:上田誠
プロデュース:安藤親広
音楽:HALFBY
主題歌:Tommy heavenly6「LCDD」
製作プロダクション:ROBOT
配給:東芝エンタテインメント
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