明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選/#2 “ただしゃべるだけ”なのに笑って泣ける『セトウツミ』
映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。全20回に渡って「生きる原動力になるコメディ映画」をテーマに1本ずつ映画を紹介させていただきます!私がコメディ映画を観たいと思うのは、心が沈んでいるときや現実逃避をしたいとき。だからこそ、爆笑までしなくとも、観ている間だけでも楽しい気分にさせてくれる作品をテーマにピックアップしていこうと思います。
今回選んだのは、
菅田将暉×池松壮亮『セトウツミ』
第2回となる今回選んだのは菅田将暉と池松壮亮が出演した映画『セトウツミ』(2016年)です。原作は「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)にて連載された此元和津也作のコミック。「“セトウツミ”ってなんだ?」と考えすぎてしまいそうですが、単純に登場人物である“瀬戸”と“内海”のことです。
放課後、高校生の瀬戸(菅田将暉)と内海(池松壮亮)が川辺でしゃべるだけというシンプルなストーリー。マックのポテトを食べながら「このポテト長ない?」、急に「神妙な面持ちやってみて」など男子高校生らしい意味もない会話がずーっと続きます。
私はムビチケをいただいたことでこの作品の存在を知り、映画館で「こんなにシュールな映画があるのか!」と驚きました。以前、カフェで隣の席に座った小学生男子たちの「女子はこういうカフェに来ているのか!すごいな!」という会話がほほえましく、思わず笑いそうになってしまったことがあるのですが、それに近いような感覚で…。そこから原作漫画にもハマっていきました。
部活なんてしなくても、こういう何気ない会話が思い出になる。時間を効率的に使おうなんて考えず、純粋に余っている時間で今を楽しもうとする学生だからこそできる会話なんだな、と社会人になった今しんみりと実感しています。
面白キャラたちのちょっと意外な現実
そんなクスッと笑ってしまう会話の裏にあるのは、どうして優等生の内海は放課後にわざわざ川辺で時間をつぶしているのか、チャラい瀬戸とはどうして仲良くなったのか、瀬戸はなぜ部活を辞めたのかということ。高校生ならではの葛藤が明らかになっていくところにも親近感が湧いてしまうはず。「なんで人と人っていうまくいけへんのやろな」「一人で生きたなってきたわ」という唐突な言葉が胸に刺さる瞬間や、大人への階段を少しずつ上って現実を見つめる瞬間まで描かれています。
そして何よりセトウツミを取り巻く、サブキャラたちの存在も大きいのです。なぜかピエロが出てきたり、セトウツミとマドンナ・樫村(中条あやみ)との三角関係(?)が発覚したり。漫画にもまだまだたくさんのキャラクターが出てくるのですが、映画に登場しているキャラクターたちの“味”がさらに物語を彩ります。
個人的には第3話の「節がある選手権」お気に入り。お互いに「〇〇な節がある」と言い合うのですが、あまり多用しないフレーズなのに、選手権にしてまでやりたがる瀬戸の発想力に脱帽です。こんな会話、聞こえてきてしまったら笑わずにはいられないですね。
ドラマ版も面白い!今観ると豪華なキャストたち
2017年に放送されたドラマ版では、瀬戸を葉山奨之、内海を高杉真宙が演じています。映画版から入った私としては「あれ、ちょっとイメージと違う…?」と思ったのですが、観ていくとこれもまた違った雰囲気を感じることができました。
特に漫画で描かれている内容がそっくり実写化されていて、映画版では登場しなかったキャラクターたちも登場。セトウツミの家族関係などしんみりする要素まで描かれています。
そして、実は映画版もドラマ版も大ブレイクする前の俳優たちが集まっており、今観るととても豪華。主演の2人はもちろん、映画には岡山天音、ドラマにはヒロインとして清原果耶、同級生・田中真二役に森永悠希が登場します。
今年の5月には舞台化もされ、まだまだ人気が衰えない『セトウツミ』。こういった日常的な温かい会話劇は、いつ観ても笑えるし、飽きることなく愛され続けるんだろうなと思います。私も定期的に観たくなってしまう作品です。
伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
関連記事:【ENDROLL】「ライターとして生きる。」ライター 伊藤万弥乃 さん(前編)
『セトウツミ』(2016)
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【ストーリー】
放課後、川べりでだらだらと話をする2人の男子高校生・瀬戸と内海。その会話は無秩序に、さまざまな話題をめぐる。季節は移ろうも2人の間の空気は変わらず。他愛のない無駄話は続いていく。
【キャスト】
池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ ほか
【スタッフ】
監督:大森立嗣
脚本:宮崎大、大森立嗣
撮影:高木風太
音楽:平本正宏
エグゼクティブプロデューサー:泉英次
プロデューサー:宮崎大、近藤貴彦
配給:ブロードメディア・スタジオ
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